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309、ついていく

 考える事が多すぎる。相手が何を想定しているのかも分からない。

 そもそも何狙いで誘拐したかも分からない。俺を何だと思って誘拐したかも分からない。

 最初の前提が間違っていた可能性と狙いがそれていった可能性。色々混ざった。


 何が起きているのか。何をしたいのか。何がしたいのか。

 結論が定まらない。仮定ばかりが乱立する。どれが正しいものかも分からない。

 確定させる方法はどこにあるのだろう? わからない。


「そうとは?」


 いや、そもそもリク君はなぜ俺にこの服を着せたのか、そこから考えるべきなのか?

 もしかしたらこの誘拐はリク君の狙いの1つだったかもしれない。

 時限爆弾よろしく、深部にまで勝手に進んだ結果爆発するのを狙っていたとか?


 転生者だと思わせる事で、関連組織を炙り出すのにわざわざ俺を利用するのは、それはそれでコスパ悪いのでは?

 人型のゴーレムが作りにくいとか、あれ以来ゴーレムが作れなかったとか、そういう事はあるのだろうか?

 まぁ、でも俺を疑似餌として扱うのは色々リスキーだろう。どこに向かって跳ねるか分からない凸凹の複雑なスーパーボールみたいな動きしかできないし。


 それを承知で、理由や方向性などを教えずに、暴走させる?

 そこに確実性はあるだろうか? いや、ほとんどないだろう。

 ただの爆弾を起こす意味とはなんだろうか? というか俺は爆弾と何が違うんだ?


「君は転生者でしょ?」


 これはカマかけなのだろうか? そう思った根拠とかあるのだろうか?

 それとも当初の狙いが転生者だったし、ついででそういう判断をした?

 異常な精神性とか行動の理由をそこに求めた? どうなんだろう?


 まぁ、でも肯定する意味がない。これは違うと言ってもいい案件だろう。

 そう思った理由はともかく、肯定していい事があるとは思えない。

 所属や属性に関し、相手が本当は知っていたとしても、知らない前提で立ち回った方が余計な情報を渡す必要がなくなり、結果的にいい事が多い。


 まぁ、どんなに用心しても、初心者が将棋の有段者に勝てない様に、徒労かもしれない。

 だとしても最初から諦めていては経験値は積めないな。投げやりでは勝てるモノも勝てなくなる。

 次があるかはわからないけれど、今を足掻かなければ次の役に立たない。


「違うよ」


 この体がゴーレムである以上、転生者というのはたぶんおかしい。

 屁理屈か。屁理屈だが事実。どこまでを転生者と呼ぶのか、それは個々人で違うだろうし。

 転生者じゃないという人達は自分という存在が無から生まれたとどうして思うのか。


 転生をするという事は輪廻転生の考えがこの世界では通用するという事だろう?

 それとも転生者はたまたま人格を保ったまま新しい生を受けたのか?

 どう巡って前世と違う世界に魂が辿りつくのか、考えたら面白そうだな。


 人間だけが特別にその意識を持って転生するとは思えない。

 そもそも前世は人間の力が強すぎたのだ。あの一強状態はなかなかないだろう。

 いや、それだけ人間は自分と同じ強さを持つものを恐れ、絶滅させてきたという事か。


「そっか。そういう事にしておくよ」


 何を見てそういう判断をしたのだろう?

 そもそもこのおじさんは何を見ているのだろうか?

 なんか色々変なモノを見ている気がする。


 この人もあの神様と同じで心を読む能力を持っているのだろうか?

 俺の心を読んだとしてもたぶん行動の予測はムリだ。

 思考と行動は担当が違うし、例えば歩こうと考えて歩く様な動き方をしていない。


 未来予知みたいな能力はありそう。少なくとも行動予測かな?

 動く軌跡が見えるみたいな感じの。筋肉とかの微細な動きの把握からの予測とか。

 微細な動きから色々読み取る類なら、大まかな感情も読み取れそう。


 いや、俺の感情は躁鬱激しすぎると思うけれど、これ読めるのか?


「この先にあるの?」


 道はほぼほぼ一本道だった。分かれ道などは見かけなかった。

 途中にもしかしたら扉があったかもしれない。いや、きっとあるのだろう。

 飛行船の時みたいに、壁の一部が扉になる様な形だろうか? 隠しすぎなんだよ。


 ここまで隠すのには何かわけがありそうなんだよな。

 まぁ、結局は魔物を簡単には侵入させないになると思うけど。

 人に化けるタイプとか、とりつくとか、そういうタイプの魔物はいたのだろう。

 言葉が通じなければ扉の存在にすら気づかないし。


 ……。転生者対策かな? 言葉が分からない魔物として扱われてもおかしくないし。

 中途半端に人の言葉を覚えたら最後、欲求のままに動き回って、周囲を混乱に落とす。

 人から生まれる以上、普通の赤子と区別の仕様がない。


「そうだね。もうそろそろかな?」


 意外と近いのか。いや、たぶんこの通路が壁沿いに進んでいるのかもしれない。

 なんなら動く歩道みたいに通路自体が動いている可能性すらあるか。

 もしこれが円形になっている通路だとしたら迷い込んだ場合出られずに終わるかも?


 壁を壊せば外に出られるかもしれないが、自分がどこにいるか分からない仕様か。

 色々な意味でどうなっているか分からなくて大変だ。

 この体は血とかでないし、壁に跡をつけてどれくらいの速度で動いているのか判別できなくて面倒だな。


 お荷物の血を使う? いや、さすがに今この段階でやるのはちょっとダメか。

 それをすると道理が通じないヤツという扱いで、交渉の板をとられてしまいそう。

 まだ利用価値はあるし、そういう確かめ方は良くないな。


「そう」


 この組織はどういう理屈でこの施設のこの通路を使えているのだろうか?

 ここの運営組織と敵対しているとは思うのだけど、違うのだろうか? ここは政府組織じゃない?

 いや、政府側はここの組織を外にしておきたいかもしれない。政府寄りだけど、政府の組織ではないとか。


 民間とは言えない。半官半民くらいの組織なのだろうか?

 だとしたら反政府組織と少し癒着している可能性は全然あるのか。

 組織をあげてというよりも、一部が反感を抱いて隠しているみたいな感じがありそう。


 全体が協力しているなら全ての扉が開くみたいな事ありそう。

 でもきっと裏ルートみたいな、上は知らないイレギュラーな扉を作って対応しているんだろうな。

 こういう通路にはカメラとか設置されていないとは思えないけど、どう対応しているのだろう?


「疲れた? 到着だよ」


 疲れるわけがない。いや、お荷物が疲れているだろうな。手が湿ってる。汚い。

 手の位置を少し変えてみるとうめき声をあげていた。ちょっと可哀想な気がする。

 いや、大分可哀想なのは間違いない。巻き込まれただけなのだから。


 手の中の人がどういう立ち位置か分からないのが残念なところ。

 たぶん殺されても大して問題ない立ち位置のヤツだとは思う。

 おじさんが容赦なく冷たくしているし。


 いや、実は身分高いとかないだろうか? わからない。

 社長のバカ息子みたいな感じの、迷惑のかけられ方がウザいタイプかもしれない。

 殺したいって思うけど、理性で踏みとどまるタイプのやってられない感じ。ないと思うけど。


「どこ?」


 おじさんが手元で何か操作をした? わからない。指さした方向を見ると扉が開いていた。

 扉の向こうはカーテンで隠されていて、現状は何があるかは見えない。

 手招きされ、先におじさんが入っていった。遅れる意味もないしついていく。


 こうやって色々なところに行ってしまうから予測できない未来になっていくんだよなぁ。

 先の見えない人生は自業自得。地に足のついた生活には程遠い。

 なんでこうもバカな生き方しかできないんだろうね。ほんとバカだよ。




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[一言] カーテンの先には……
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