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30、車内

 いたずらを仕掛けるにはまず超えなくてはいけない壁がある。

 俺の身長ほどもあるこの乳母車の壁だ。

 この壁のせいで天井以外は見えないのだ。

 しかしだ。これを攻略する手はずは整っているのだ。


 以前より練習していたバランス強化。

 走り揺れているこの車の中でも俺は壁に手をかけながらであれば立っていられるようになった。

 そして足元にあるのは子供用の毛布。

 ふかふかしていてつるつるしていて大変だけれどもこれを折り重ねていけば踏み台にできる。

 ふかふかしていて立つのは本当に大変だけどな。

 毛布に足を沈み込ませながら両手で縁をつかんで懸垂をするかのように俺は上体を持ち上げた。


 乳母車から顔を出すとそれまで響いていた音が一気に大きくなり思わず耳を覆うために両手を離してしまった。

 乳母車の表面が柔らかく音を吸収してしまうため今までここまで音が大きいと思っていなかった。

 両手を離してしまったことで車の振動に耐えきれず乳母車の中をコロコロと転がってしまう。

 乳母車の中がふわふわでよかった……。


 気を取り直して今度は覚悟して顔を乳母車の外へと出してみた。

 大きな音に少し不快感を覚えながら車内を見渡した。


 和服の帯のように平たいひもを十字にして壁に茶色い荷物が括り付けられていた。

 そして荷物の前にはソファーのようなイスが置かれ中央には頑丈そうな黒い机が置かれていた。

 机の上には竹で作られたような籠が備え付けられていて固定されているのか車が揺れても微動だにしなかった。

 籠の中には色とりどりの食べ物が入っていて摘まむことができるようだった。

 壁に括り付けられている荷物の上には柵のようなものがつけられていて横には木の梯子がつけられていた。

 荷物の上には人が横たわっていて時折寝息が聞こえることからベットのように扱われているみたいだ。

 荷物の上の空間から少し外が覗けていることからそこは窓のようになっているんだと思う。

 

 荷物で壁を厚くすることで車内の温度の変動を減らし、外からの襲撃に対し物理的な緩衝材として作用する。

 安全な車中央の机で作戦会議や食事を行いしっかりと休息をとれるようにする。

 こんなところだろうか?

 今俺がいる場所は運転席の後ろの壁だと思う。


 ここはたぶん1番安全じゃないだろうか?

 比較的揺れも少ない場所だ。


 俺はしばらくの間車内を呆けたように見続けていた。

 こんな感じの内装になっていたのかと見つめていた。


 母さんと父さんの姿をソファーの上で見かけた。

 父さんが母さんの耳元で何かささやいているようだった。

 その声は小さくて、周囲の雑音は大きくて、何を言っているのかわからない。


 ニキさんとスイさんの姿は見当たらない。

 スイさんのことまだ声しか聞いたことがないんだよなぁ……。




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