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301、倉庫の中にて

 結局は抜けているのが俺という事だ。残念な事に。

 何の成果も! 得られませんでした! じゃいけないんだよ。バカ。

 それくらいならもっと抵抗して犯人をそこに留めておくくらいの事をしろ。


 化け物性云々、結局は人を傷つける度胸がないだけの話だろう。

 後先を考えたら暴力はふるうべきではないのは間違いない。治安がいい場所なら。

 そもそも魔法がある世界で、ただの怪力程度で化け物と呼ばれるだろうか?


 いや、言われるかもしれない。何なら魔法に当たって無傷までさらす可能性がある。

 神様だよとでも偽ればいいだろうか? そもそも神様が何かも分からない。

 地球の聖書や聖典の神様ならその地で生きるための道理の辻褄合わせとか強弁できる。

 強弁の通り、無理に言い張っているだけだがね。


 実際に信じている人からしてみれば、そんな言葉はただの雑音だろうし、こちらは信じている人の神様の存在を否定する必要がない。

 問題はこちらの世界の神様が実在し、何なら会った事すらある事なのだ。

 魔法無効の俺を何十キロ? も投げ飛ばした事などを考えれば、あれを神様と呼称される程の能力があると見ていいだろう。

 この体で同じことができるだろうか? どうなんだろう?


 出来ない気がする。もしかしたら出来るかもしれない。わからない。どうだろう?

 この体でやったクマをもふる時の動き、あれは別にがんばってやったモノじゃない。

 限界値の動きをした事がないんだ。俺はこの体で何ができるかをあまりにも知らない。


 空飛ぶ化け物に対しても、殴ったりはしていない。

 噛んで吐きだして、肉を腕でかき泳いだ程度。泣きながらハイドロポンプ。

 あれは辛かったけど、筋力の限界とかには達していない。感覚が限界だったけど。


 感覚が限界? 本当にそうだろうか? 人間基準の動きができればいいと制限していないか?

 見る聞くにしても今の状態が限度だとは思えない。限界を勝手に定めている気がする。

 一先ず辺りを見て色々考えてみよう。俺がこの体を使い切れていないのは確定だろうが。


 物置の様なスペースだ。部屋は薄暗く、棚があり、工具の様なモノがそこかしこに置かれている。

 俺の座っている場所はパイプか何かを束ねたモノ。その辺にあったロープを使って縛られている。

 埃は積もっていない。日頃利用されているのだろう。ここは駅の施設の流用だ。


 とりあえず施設に自分の組織の専用空間を作れる様な組織ではないだろう。

 いや、作れるかもしれないが、それをする程のメリットを見込んでいないだけかもしれない。

 わざわざ専用の空間を作って組織力や証拠を誇示するのはバカがする事か。

 

「はい、嬢ちゃん。嬢ちゃんは何者?」


 声のした方に顔を向けるとなんかチャラそうな人がいた。

 いや、うん。最初からいたのに無視していた。情報整理が面倒で。

 人間ってほんと情報量が多い。判断に困る。疲れた。


 髪は白っぽい。脱色した感じの白? 髪質がそんなに良くない。

 ちょいちょい解れやくたびれが見えるが、使い込んだだけで、洗濯はちゃんとされている。

 不精ひげが見え隠れしているものの、ちょっと徹夜とか繰り返しただけのお兄さんレベル。


 さっきの誘拐犯とも違う人だ。共通項として流民を装っている感が強い事か?

 薄汚れていると流民を等号で結ぶのなら、流民と判断していいのだろうが、そう思うには品性面で素行が良さそうなのが気になる。

 いや、そもそも俺が見たあの流民の集落がイレギュラーな可能性は多々あるか。


「何者って? おじさんは自分が何者なのかを知っているの? すごいね」


 ……。お嬢は元気だなぁ……。元気に煽っているよ。

 俺、そんな陰険な言葉を人に向けて使えないと思うんだ。

 お嬢はほんとに俺の人格から分かたれたモノなのかな……。


 まぁ、いい。とりあえず俺が予想している都市のルールだと、点数制とかそんな感じで、都市に住めるかどうかが決まる。

 流民はそこで都市からあぶれたモノだ。都市から追い出されるとなればどの程度の危機感を覚えるだろう? 不満は多そうだ。

 諦観、足掻き、反発、面従腹背、もうなんだってありなんだろうな。目の前の一団なら面従腹背かな?


 流民の中にだって派閥はたくさんあるだろう。

 あの集落なら諦観勢が集まっている気がする。

 そう思えば目の前の青年が所属する組織が流民でないとは言い切れない。


「おじさんはすごいから知っているんだよ」


 ヤバい。ニコニコしながら言いやがった。メンタルが強すぎる。

 少しはひいて欲しかった。一般人のメンタルじゃなさそう。怖いな。

 いや、こういう類の反応に慣れているのだろうか? それはそれで怖いな。


 見た目だけなら5歳かそこらなのだ。異常性だけで面食らいそうなモノだ。 

 それをニコニコでかわしていくだと? あのトゲトゲ言葉を? 怖いわ。

 ガキンチョ対応をされていない……わけでもなさそう。難しい。


 言葉を覚えるのが遅かった転生者とか相手にしていて慣れている?

 いや、だとしたらガキンチョ対応はかえっておかしいのか?

 何をどうしてそういう対応ができるのか、それがもうわけがわからない。


「じゃあ、教えて」


 お嬢はガキンチョ。俺、覚えた。

 うん。マジでガキだわ。マセガキだわ。目の前にいたらどん引きするレベルでガキだわ。

 俺はムリ。この子とまともに話ができる気がしない。苦笑いばっかしちゃう。


 いや、うん。そういう演技なんだよな。それ自体は分かる。俺には出来ないけど。

 ツンケン系で相手の情報を抜き取りたいとか、自分の情報は渡したくないとかあるよね。

 相手に持て余させるというイメージを植え付けるのが目的かな。


 たぶん適度なところで絆されたフリして、手伝いに入るんだろ? これ。

 最初から味方面しても二重スパイをすぐ疑われるから、マセガキしたんだと思う。

 主人公側から見たら悪の組織から裏切ったツンデレ少女くらいの立ち位置を目指すのか。


「どうしよっかな?」


 ヤバ。純粋にウザいぞ。この兄さん。リアルでのジラシ系程コミュ障が嫌いなものはない。

 なにせ要件を聞いたらそれで終了できる会話が終わらないんだから。

 終わらないだけならまだいい。続けるべき言葉が出てこない。そんな言葉を持っていないから。


 ノベルゲームとかならまだいい。自分で言葉を選ばないでいいから流されるだけでいける。

 でもだ。現実は自分が言葉を紡がなければいけない。思い浮かばない言葉を使ってまで。

 自己完結している内は必要のない回路を切り拓かないといけないんだ。ツラい。


 相手の機嫌を損ねて、必要な情報を搾り取れない場合がミッションの失敗。

 全部ぶった切って、自分の欲しい情報を知らせて、誤情報をそうと知らずかまされてもダメだ。

 ミッションの失敗条件が色々厳しくてツラい。相手的に死の心配だけないのがマシか。


「分からないんでしょ。大人は嘘つきだから」


 お嬢の設定は散々大人に騙された子供かな?

 ツンケンしている理由もそれはそれで分かりやすい。

 相手が嘘つく事へのハードルを上げる役目もあるかな?


 だがそもそも嘘つく事に抵抗がない相手の場合は意味がないかもしれない。

 いや、だがそのわずかな良心に爪を立てるくらいは出来るか。

 それすらもない嘘つきはどうしようもない。


 というかお嬢。自分で設定をどんどん出していくのだけど、本当に俺の人格?

 でも意図が理解できるという事は俺の人格という事なのかもしれない。

 蓄えこんだムダ知識を適当に組み合わせているから出来るんだろうか? 怖いな。


「嬢ちゃんはなんて言って欲しいのかな?」


 うわぁ……。嫌な大人だ……。質問に質問で返すなよ。

 コミュ障にはつらいんだぞ、それ。話をややこしくするから。

 こうスパッと話を終わらせてくれ。憎いぞ。





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― 新着の感想 ―
[一言] 質問に質問で帰ってきたからとことん質問で返そう( ˘ω˘ )
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