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2、誕生

 感覚の強化に努めていた俺は体を包む液体が流れ減っていくことを知覚した。

 そろそろ出産が始まるのだろう。


 蠕動(ぜんどう)していく体を包む肉。

 体をしめつけながら回りながら絞りだされていく俺の体。

 痛みはあまりない。

 頭部が外に露出して冷えていく。

 胎内が温かいということがいまさらのように理解できた。

 体が冷えていく。

 臍帯から送られてくる酸素がなくなってくる。


 俺は酸素を求め口を開け、空気を体内に取り入れるべく最後のお仕事。

 気道に空気の通り道を作るべく勢いをつけて叫んだ。


「おんぎゃーっ!」


 悪いか?「ハレルヤッ!」とでも叫べと?

 ちなみに叫ばないとしりをたたかれるんだぞ?

 スパンキングされてしまうんだ。

 俺はMではないんだ。

 されて喜ぶ人じゃない。




 体を産湯で洗われ柔らかな布で体を拭かれ包まれた。

 最低でもある程度の設備は整っているようだ。

 この設備がどの程度の設備なのかはわからないが。

 野ざらしで出産しているなんていう可能性だって考えられたのだから。

 赤ん坊が生き残ることが困難な最悪の状況ではなさそうだ。


 まぶたを通して光が見える。

 なんで目を開けないのか?

 開けようとしたんだけど眩しすぎたんだ。

 暗い部屋から急に明るい部屋に出たのと同じだから。

 まだ光量の感受調節ができていないからだろうな。

 これが初めての認識する光の調整だ。

 スムーズにできないのはしょうがない。

 もうしばらくしたら明るさに慣れて目を開けることもできるようになるだろう。


 何度か聞いたことがある単語が母親以外の人の声で聞こえた。

 これでこの単語は赤ん坊か子供を意味するものだとわかったな。

 

 出産後すぐに俺は授乳された。

 いきなりされるとは思っておらず不意を打たれた。

 けれど不意を打たれたことがかえって良かった。

 赤ん坊の体は自然と対応し気づけば乳を吸っていた。

 覚悟を決めすぎていたらたぶん不自然な行動をとっていただろう。


 初めての授乳後あっという間に眠りに落ちた。

 そして起きる度に授乳。

 肩までつかる程度のお湯につかりガーゼのような柔らかな布で体を拭かれたり、……おむつを替えられたり、抱き上げられたりした。

 視力が安定しないのか、目を開けても物がぼやけて見えてしまう。


 授乳回数が30回を超えた時に手慣れた手つきで扱う人がいなくなり、俺の周りには母親だと思う人しかいなくなった。



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