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289、したい事とは

 方針でもいいよ? ってなんだよ! バカ! わからないよ!

 言葉が足りないんだよ! 俺もだわ! 何も言えない! くそう!

 言質とか取られないための警戒心で言葉数がそんなに増やせないんだよ!


 別にわざわざ言葉足らずにしたいんじゃない!

 下手なことが言えないし、敵対したいわけじゃないからなんだよ!

 これは俺の事情でしかないわ。なんかつらい。


 会話の基本として話している相手と同じくらいの分量で返すというのがある。

 それが出来ていない場合、勢いで相手をまくし立てる事になるからな。

 対等に近い関係である程、相手に面倒って思われるリスクがある。


「方針?」


 というかダラダラ話したところで人は興味のある事以外の話を聞かないんだよ。

 校長先生のARIGATAI話とかどこの誰が聞いているというんだ。

 俺は確か高い場所の窓とか出入口を見てた気がする。逃げたかったんだろうか?


 まぁ、いいんだよ。とりあえずなんか長い事話せよ。

 考えているそばから単語で済ませやがって。このバカ。

 俺ははいかいいえしか言えないRPGの主人公か? それともグレランか? そのRPGちゃうわ。


 とりあえず頭の中のツッコミとボケの十分の一でいいから口に出せよ。

 自分一人に向けた発言だからいくらでも遠慮なく言えるって? あぁそうだね! ちくせう!

 思考が読み取られて、外聞も何もなくなったら、何でも言えるね! バカ!


「出来るだけ叶えてあげたいって思ってね」


 なぜ? どうして俺に対しそこまでの事をしようと思える? わからない。

 むしろ俺は憎まれて当然の立ち位置だろう。変な環境を作り上げて普通から外させたんだ。

 普通と呼ばれる生き方というのはある意味で理想形なんだ。俺が得たいと思うくらいに。


 そもそも大学まで行って会社に勤めるみたいなのが大半の人はできないと思う。

 家庭の経済問題や環境にも左右されるし、篩にかけられ落ちる人の方が多い。

 高校を出て働くというのもままあるだろう。それもまだ普通か。

 でもそこで何か問題が起きればまたレールから外れ、どんどんと特殊な道に進んでいく。

 俺はそもそも人間性に問題があったから、普通の人のレールをまともに歩めなかったんだが。


 リク君はエリートコースにも行けたはずだ。今もエリートかもしれないが、特殊ルートだろう。

 普通の恋愛とかも経験しづらいと思う。近寄る人は審査に通った人だけとかもありそう。

 他の人とあるあるを話したりも出来ないと思う。バカなこともしづらいだろう。

 普通の人が出来ないことをたくさん出来るかもしれないが、普通の人と同じことは出来ない。

 それは集団に属すことが当然の人間にとってつらい事だろう。


「ありがと」


 目を見た。とても優しそうな目だ。ニコニコとしている。でもどこか悲しさを感じる。

 想像かもしれない。たぶん想像だろう。でもそれが俺のせいでそうなったと思える。

 もしかしたらリク君にとっての同族として、俺は見られているのかもしれない。


 同族。そう同族だ。自分の群れとも言える。気が許せる相手だろうか。

 今まで距離を取らなければいけないとか、自分の事を理解してくれないだろうとか思う相手としか接していないと、この考え方がしみついてしまう。俺みたいに。

 他所の群れの相手には、とりあえず敬語などでにこやかに対応し、気安く見せているがどこか緊張を続ける。そういう歪つな状態。不健全。たぶん不健全。


 いや、群れが大きければまだそこまで不健全じゃない。

 拠り所が多ければ多い程、1人にかかる負担が減り、人間的な付き合いになる。

 人間的なの基準は拠り所にできる人の数なのではないだろうか?

 まぁ、どの道そういう相手が作れない俺はヒトデナシなので仕様がないのだけど。


「うん」


 あぁ、うん。ほんと嬉しそうに微笑むなぁ……。いい顔をしてる。

 俺個人的には仲間でいて欲しいけど、リク君の人生を考えるなら俺の事は忘れてほしい。

 こんなヒトデナシを同族扱いしないで欲しい。もっと人生を謳歌してほしい。


 しかし突き放すとそれはそれでダメな事になるだろう。自暴自棄になるかもしれない。

 それこそ長年望んでいた自分の同族を相手にするのだ。否定されたら根底を揺るがすだろう。

 まぁ、あくまでもそれは俺がそういう相手だったとしての話だ。何もわからないが。


 そういう相手だと仮定したうえで、諸々の想像をするべきなのではないだろうか?

 安易な否定はドロドロの事態を招くかもしれない。いやきっとたぶんメイビーそうかも。

 だがしかし。だがしかしだ。可能性として想像するだけでもすごい否定したい。


「俺はとりあえず何か働いたりしたいかな」


 考えて思うのは俺だけじゃなくて、リク君にも交友関係などを増やす必要だろうか?

 これは頑張れば俺が橋渡しになって広げられるパティーン? 自分だけでもキツイのにか?

 いや、むしろリク君のコネを利用して関わるから、むしろ自然と増えるかもしれない。


 ただ仕事をするだけだと増えはしないだろうな。ちゃんと人間関係を築く事を意識しなければ。

 意識と言われてもまぁ難しいか。それが意識できるならもっとちゃんと人間関係を築けているはず。

 なんか難題が積み重なっていく気がする。どないすればいいねん。わからん。


 そもそもの問題として俺が飲食の必要がなかったりするのが色々きついな。

 ご飯を食べようとか誘うのがきつい。そこから生まれる何が好きとかが出来ない。

 他愛ない会話とか、同じ行動をするところから広げないとキツい。

 タダ飯なら乗りたいとか、そういう雑念で関わってくる人とは関われない。


「働きたいんだ?」


 まぁ、そちら側はあまりいい関係を築けないかも。そう考えたらどうでもいいかもしれない。

 そもそも三大欲求から始まる会話っていいものがあるのだろうか? 割かし臭そうだな。

 肉欲関係とかあれはほんと何も分からないし。分かるための努力をした結果の耳年増。


 働きたいか、働きたくないかは割かし論争があると思う。

 そもそも自分のためにしか動きたくないなら、働きたくない気持ちが強くなるだろう。

 自分が生きていくための糧を稼げればいいは別に何もおかしくない事だ。

 むしろ生きていくための糧が十分にあるからこそ、文化的な生き方ができると言える。

 そういう意味で言うなら「働きたくないでござる」は人間の特徴だろう。


 俺の働きたいは根本的に「人間的な生活を体験するため」という歪な目的があるのだ。

 自分の人間性のためにしている。つまり趣味に近い何かだと思うとなんか人間らしさを感じる。強引。

 趣味で仕事をしているというと、生きるために仕事をしている人とは相容れない気もするな。


「それが必要だと思うからな」


 なんか回答を間違えた気がする。しかしこれ以外の回答の仕方が分からない。

 何をして働きたいかとかは特にないし、働く事そのものが目的だから余計に困る。

 下手に深みに身を落としたら俺が望んでいる普通の生活が遠のきそうだ。


 あくまでも人間的な生活を営むための仕事だ。世界の謎の探求とかはしなくていい。

 世界の神秘は巻き込まれない内は楽しい。巻き込まれて世界を救うために自分を犠牲にしろとか言われるのはほんと勘弁してほしい。

 俺の目的はあくまでも普通に生きる事なのだ。人間的に過ごす事なのだ。

 そういう話は好きだが、関わり合いたくはない。ほんと関わり合いたくない。今の数倍悩ましい事態に陥る事になったらもうメンタルが死ぬ。


 ここで聞かれている内容にはどこで働かせようかの選定に使われる気がする。

 いや、そもそもの話として、働きたいという言葉自体がもうおかしいのかもしれない。

 その言葉の意図がわからなくて、聞き返しているかもしれない。


 お化けや妖怪の類が仕事しようと思うとか言い出したらおかしいだろ。

 世間一般でそういう事をしないと思う生き物が、そういう事をしようと言った場合、何か他に目的があると思うのは自然だ。実際にあるし。

 遊び関係のお花畑な事を言うと思っていたら、仕事とか言い出したらまぁ怖いだろうな。理解できなくて。


「わかったよ。探してみるね」





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