28、中郭から内郭への道
何もない。人や魔物の襲撃で止まることもない。
本当にイレギュラーの何もない道のり。
乳母車の中で揺られながらつかまり立ちをマスターし、バランス感覚の強化にも磨きがかかった。
それしかできることがないからな。
あぁ、そうだ。魔力の循環自体は常に止めることなく行っている。
止めたら魔力はどんどん体外へ? と流れ出して目減りしてしまうからな。
もう寝ていても魔力を循環させられるくらいだ。
しかし問題なのは毛の中に魔力を通していくこと。
体表までなら循環でチキンレースできる。
けれど体毛は言ってしまえば管だ。それも外に突き出している。
だからその管に魔力を通すとなると自然と体外へと魔力を放出してしまいかねない。
この問題は非常に大きい。
俺が考える魔力という物はエネルギーの塊だ。
体外に放出されればエネルギーが拡散し爆発という状態で現実世界に顕現する。
ただのエネルギーの放出だからそこまでの威力はないかもしれない。
でも量が量だけに俺の場合だと下手したら街が吹き飛ぶらしいのだ。
魔力の扱い方を知り魔法の作用機序を覚えるまでは体外にこぼすわけにはいかない。
つまりだ。毛髪に魔力を通すのはまだ練習ができない。
悲しい現実である。
俺にとっての少量はどの程度の量なのかも判断しにくいのも難点だ。
髪から放出したら反動で空を飛ぶなんて笑ってしまいそうなことが起きかねない。
その場合怪我を覚悟しないといけないだろう。
まして赤子のやわっこい肌なんて破けてしまうに違いない。
とにかく内側へ内側へ押し込めて圧縮して魔力の量を増やしていくしかやれることは今ない。
……骨に魔力をおしこめたら硬くなるかな?
骨髄に詰めていけば血液が魔力を帯びて産出されたりしないかな?
試して損はあるだろうか?
危険性? うーん? まぁ、そこは自業自得ということで。
食べ物から吸収して集めた魔力。
動かす時はいつもお腹に意識させて反動をつけて、呼吸のテンポを利用して脈のリズムを調節し細かく動かしてみてる。
空気中では魔力はどうなっているのだろう?
拡散し希薄状態で漂っているのだろうか?
生物はある程度それを蓄えていくのだろうか?
思い描く謎は大きい。
しかし自分を再確認していくのは大事だけど、そればかりしていてはつまらない。
何かイレギュラーな事態は起きないかな?
早く身体が大きくなって、自由に動き回れるようになりたいな。
刺激的な体験が多い程、神経は開拓されできることが多くなる気がする。
必要なことは身につこうとするし、不要だと判断されたことは忘れられていく。
廃用症候群だったか。あれは寝たきり状態が長く続くと起きるものだっただろう。
しかし人間は必要じゃないと思ったら筋肉は萎縮し関節も縮まり骨も脆くなる。
歩くことも困難になってしまう。
この例は行き過ぎだが負荷のかからない生活を続ければその部分は脆くなって弱くなる。
適度な負荷は必要なのだ。
変化がない環境というのはある種病気を作る環境である。
刺激が欲しいな……。
そういえば昔からこういうな。
「刺激が欲しけりゃバカになれ」






