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283、おじいさんと別れる

 微笑みと共に謙遜を口にする。まぁ、実際に大したモノではないので、謙遜でも何でもない。

 自己肯定感が欲しい。突き抜けて自己皇帝感でもいい。そこまでこれたら生きるの楽そう。

 自己更訂感はいらないのだ。訂正に訂正を重ねるのはもういい。もういいと思っているのにしてしまう。


 自分に向けての言葉遊びならいくらでも出来るけど、人に向けるモノは欠片も出てこない不思議。

 言葉遊びがいくら上手くなっても、コミュ力に直結できないというのはもうほんと何も言えない。

 この人格は全くもって役に立たないな。仮面達の方がよほど生き生きとしている。ほんとバカ。


 人間性に足を置きすぎると生きる事が出来るか不安になる。

 人間性とはワガママなモノなのだろうか? かもしれない。

 自分の精神を守るために、できるできないを決めて、したい事をしようというんだ。


「ふむふむ。ふむ、そろそろお兄さんの目が怖いから老骨はここらで失礼しようかの」


 それはきっとワガママだろう。幼い自我の様な儚いモノだ。

 折ろうと思えば簡単に折れる。しかし折ってしまえばいい方向に育つ可能性も手折る事になる。

 ワガママを言えない子がいい子だと思うだろうか? いい人になるだろうか?


 俺はそれをいい子だとは思えないし、何ならそれを見て可哀想と思うだろう。

 対応の仕方もつまらないモノになると思う。思考も足らなくなりそう。規定の道から外れる事が怖くて、別の道を探る事をしなくなるだろうから。

 だが今の現状をやり過ごし、無難に生きるなら、人間性は少し置いとく必要がある。


 ちょっとスルーしてみたけれど、うん、やっぱりリク君ちょっと怒っているよね?

 微笑み状態で基本的に変化はないし、表情は分かりやすくはないけれど、雰囲気がヤバい。

 いや、これは照明が弱くて薄暗いからなのでは?


 水族館でデートすると青い光で表情に陰が出やすくなるから、あまり笑わない人だと不機嫌に見えてしまうとかそういう話聞いた事がある。それと同じ類かもしれない。

 怖いと言われた先入観で、リク君の感情を勝手に想像して、自分の思った様に捉えたとか。

 余計な事ばかり考える怖がりな俺の見方だ。間違っていてもおかしくないだろう。


「タグ翁様、ゆっくりしていっていいんですよ」


 圧っ! いや、圧っ! 微笑んでいて、優しく言っている様にみえるけど圧がヤバいわ!

 なんかズオオオって擬音が聞こえてきそうなんだわ! 気のせいかもしれないけど!

 気のせいだといいな! きっと気のせいだ! そうだ! そうに違いない!


 あぁ、うん。そうだよ、気のせいだよ。そんなに思われる理由はたぶんない。

 何なら恨まれて当然だ。俺はけっこう自分勝手に行動しているんだ。

 人を気にしても、それは自分に不利益が発生するのを避けるためだ。


 ひどいヤツだ。基本的にヒトデナシなのだ。そんなヤツに誰が心を寄せる?

 悪い事は不利益に繋がるからしないが、いい事も好んでしているわけじゃない。

 降りかかる火の粉を避けようと、気配を感じたら逃げているばかりのバカだ。


「なに元より見たいモノがあってここに来たのじゃ。気にせんでええ」


 ほら見ろ。何か裏があるかと思って見ていたおじいさんはずっと好々爺じゃないか。

 手まで振っているし、愛嬌だってあるんだ。俺が考え過ぎなんだよ。ばーか、ばーか。

 それに浅く関わる分には外面がいいなら内心がどうであれそこまで問題ないだろ。


 短期間の仕事なら一緒にいて楽なのは外面がいいヤツなんだよ。

 どんなに仕事が出来るヤツでも、周囲にギスギスを振りまく外面最悪は周囲の仕事の阻害でしかない。

 底意地が悪いとしても、外面が良く、それを短期間なら察させる事をしないなら問題はないんだ。


 長い付き合いになるなら、最初こそ外面が悪くても、内面が良くて、後々気が許せる方がいいだろう。

 だがそんな長い付き合いになるような相手はそんなに多くは出来ないもんだ。

 そんな深い付き合いをする様な相手を何人も抱えられる程、時間に余裕があるわけじゃない。

 それなら底意地が悪くても外面がいいヤツの方が付き合いやすくすらあるだろう。


「そうですか。ちなみに何を見に行くか聞いてもいいでしょうか?」


 どうせ深く付き合わないヤツなんだし、本心とは違うとしても、適当に愛想を良くして周囲を気持ちよく働かせれば、その恩恵で自分はサッサと物事を終えられるんだ。

 ずっと偽り続けるのは辛いだろうが、その一瞬をやるだけで楽に過ごせると思えば賢いだろう。

 気を許せて偽らなくてもいい相手を見つけられれば最高だろうな。

 そこまで行ければ生きるのはきっと楽なのだろう。出来ればなのだけど。


 いや、うん。リク君むっちゃ詰めるなっ! え、君そこまで詰める子なの?!

 思考が一瞬スルー決めかけたわ! いや、スルーしたかったんだわ! なんか怖いし!

 俺にはそんな間を詰める様な真似できないんだけど! 閉まるドアに靴先ねじ込む様なもんだし!


 俺が人との距離を気にしすぎなだけだろうか? かもしれない。

 そんな大げさじゃないよな。社交辞令とかそのレベルの反応とも言えるよな?

 いや、うん。とりあえず俺にはムリな行動だわ。ダメだ。疲れている。


「経過観察じゃよ。転生者の中に発明家気質のモノが居っての、今はまだこちらでも把握している事象くらいしか発見できていないようじゃが、その発見速度がよくての。もしかしたら新しい事象を見つけられるかもしれないんじゃ」


 考え方の違う存在はいい刺激になるよな。それを一方的に見られるという状況はきっと面白いだろう。

 飼っている動物を見るような感覚……いや、自由研究で作ったアリの巣観察キットかな。

 人扱いをしていないからこその光景なのだろう。一歩間違えたらそちら側になっていたかもしれない。


 ここにいる人の多くはその状態をたぶんきっと受け入れている。

 そして俺自身もここをムリに開放する事は不幸しか生まないと思っている。

 心情としては受け入れがたいモノがある。だが代案は出てこない。


 人として認めろと言うのは簡単だ。自身をヒトデナシだと思っているヤツが言うのはおかしいが。

 しかし人として認めたところで、人が人足りえるための常識が違うのだ。

 それをすり合わせて妥協できるところを見出していくのは時間がかかる。


 1人とすり合わせたところで、別の場所から来た転生者とはまた関係性を新しく築かないといけない。

 外国として扱うのもまた難しい。代表者を用意させるのも簡単じゃないし。

 結局は現状の様にとりあえず1か所に集めておく事が無難になってしまうのではないだろうか。

 内側に敵を作っていては魔物に対する戦力がなくなり、滅亡へのカウントダウンが始まるだろう。


「なるほど。それはいいですね。私も次回辺りに見に行きましょうか」


 リク君はここの空気に合わせてこの発言をしているのかもしれない。

 でももしここの考え方に同調して、本心から言っているとしたらと思うと怖い。

 いつか俺がここの様な施設に入れられるのではと思ってしまう。


 いや、それ以上にあえて何も言わないで見せる事で、俺の反応を見て楽しんでいる可能性が怖いか。

 さすがにそれは考えすぎだろうか? かもしれない。でもやっぱり分からない。

 信じたい気持ちもまだまだあるんだろうな。でも疑わしい行動も多くて悩む。


 何を思って俺をリク君は起こしたのだろう? 何かに利用したくて起こしたのでは?

 だがしかしその起こした理由の方がいつまで経っても分からない。

 この施設を見せている理由も分からない。脅しだろうか? 最有力はやはり脅しなのでは?



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― 新着の感想 ―
[一言] リク君コミュニケーションはよ
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