273、食事は中略された
( ˙꒳˙ ).。o(食事全部書いてたらストーリーが進むまでに何十話かかるかわからん!)(あとシロちゃん途中でメンタル崩壊したとだけ←)
「美味しかったね」
長かった。いや、現実時間でみたらきっと1時間も経っていないのだろう。
だがたぶん頭の中で流れるツッコミを集めたらこの食事中だけで1冊話が書けるくらいになったのではないだろうか? 野菜1つ1つにツッコミしてたからヤバかった。
たぶんきっと談笑は出来ていただろう。頭の中でじったんばったんし過ぎて疲れた。
ほんと疲れた。
でもやっと終わるんだ。食べ方からお皿への盛り付け方にまで気を配る時間は。
何を話せばいいのか考えて考えて考え続けて、胃にモノが落ちた感覚までなくなる時間は。
しばらくご飯は1人で食べたい。ご飯だけに集中したい。話すのは難しい。
「もうお腹いっぱいかな」
相手はただもてなしたいだけなのに、こちらが意識しまくるところほんとコミュ障だよ。
無作法してもきっとリク君は許してくれただろう。でもそれが出来る俺じゃなかった。
妙な部分まで気にしているの、ほんと合コン初参加のコミュ障かな? 誰もそこまで気にしてないよ?
話していた間の記憶がけっこう薄くなっているのもダメだな。
意識がショートしている。緊張し過ぎてけっこうバカになっている。
どこまで何を考えていたのかも大分あいまいだ。
同席していた人にも会話を振っていたのだろうか?
余計に思考がパンクする様な状態に陥っていた気がする。
勝手に必要以上の事を考えて、余計な妄想をするからだ。
いつだって現実は俺の妄想を越えてくるんだ。
「嘘だー! まだ食べられるよね!」
ネネ。体的には入るだろうが、精神的にはもういっぱいいっぱいなんだよ!
分かれ! いや、分かるな! 分からなくていい。気取られる事なかれだ。
あなたとの会食はストレスですって端的に言ってしまう事になるし。
俺は別にケンカがしたいわけじゃない。気まずくなりたくないんだ。
無難に人間らしく文化的で、できれば充実した生活を送りたいんだ。
甘い汁だけをすすって生きる事は出来ない。そんな生活すぐ虫がたかる。
求める生活のためには多少苦痛があれど乗り越えなければならない。
それに適度なストレスは感覚を鋭敏にし、楽しみへと変えてくれるモノだ。
ゲームは手を動かし考えるから楽しいのだ。全てがお膳立てされ、ただAボタンを乱打しているだけで終わる様なモノはどんなにストーリーがよくてもつまらないんだ。
「食べられるけど、それは食べられるだけだからいいの。好きな味を適度に楽しむのがいいのさ」
別に大食い自体は否定しない。ただこの体だと特に意味がないというのもある。
食べてエネルギーになるのだろうか? 消化機構ちゃんとイメージした気がしない。魔力をエネルギーにしようというのはイメージしたけど、食事関係は微妙だった気がする。
いやしかし曖昧な想像でも形になっているのを考えると、どっかから設計図を引っ張ってきているんだろうな。そうとしか考えられない。
ともかく大食いは俺にはする必要がない。俺には必要ないが、人にとっては重要な場合もある。
例えば脂肪がないと筋肉をつけるのも大変だし、筋肉を養うためにもタンパク質やカロリーは大事。
胃下垂の人とかは食べても身にならないところがあるし……いや、あれも腹筋つければ治るんだっけ?
太る事も別に悪じゃない。50キロの多少鍛えてる人と100キロのあんまり鍛えてない人だと100キロの方が勝つ可能性が高いからね。
高耐久高火力になるから質量がある方が有利になってしまう。脂肪を支えるためにも筋肉はつくものだし、太る事も1つの才能だったりする。
たくさん食べる事が出来るというだけで、意外と身体的に有利になるモノだ。
俺の理想はプロレスラーの体形だとは思うが、それは動きやすさとかを意識しているからだろう。
適度に脂肪をつけつつも、筋肉をしっかりつけ、高い防御力と高い打撃力瞬発力を持つ。
適度な脂肪がある通り、長時間の活動も問題なく出来るのがとても良い。
「でも全部食べたよね」
ニッコリ。
いやね、俺はこう……モノを残すのが苦手でね? 残すのは悪い事だろう?
食卓に届くまでどれ程の道があると思う? いきなりスーパーに現れるわけじゃないんだぞ。
それが自然界の生き物なら弱肉強食の果てだ。そこまで生き残れるのは最初の何十分の一か。
リク君のニッコリになんか圧を感じて言い訳が巡りだしてしまった。
どんだけこういうタイプの圧に弱いんだろう。内心の言い訳がひどすぎる。飛躍が過ぎる。
こういう時にメンタルの弱さが際立つな。実際問題弱いんだろうな。ほんとに。
そうだよ。全部食べたよ。
みんなが談笑メインになったから「もう食べない?」って聞いて全部食べたよ。
冷めてちょっと乾きだしたから最後はガッツリ食べたとも。
ストレスで胃が痛いとか色々言ったけど、残すのがイヤだから全部食べたさ。
俺は何も悪い事はしてない!!!
「別にいいじゃん」
そうしたいとは意識してないけれど、なんか口が突き出てしまう。
言いたい事は色々あるのだろう。まぁ、口に出して言う事は今後もないだろうが。
そんな子供みたいな事は出来ない。……出来ない? どうして?
恥ずかしいから? 実際ちょっとズレた事をしているのは分かっている。
自分のポリシーとはいえ、それが場面に合っていない仕草だと自覚していた癖に。
ストレスでテンパって話すよりも簡単な食べるという行動に逃げたのもそうだ。
ご飯を残さず食べる事で会食という場を早めに終わらせようと画策もした。
どれが子供っぽいか? 全部が全部、子供じみた恥ずかしい仕草じゃないか。
賢しらに振る舞おうとするところも含めて、何が恥ずかしくない仕草だと言えるだろうか?
「そうだね」
あぁ、リク君はまたそう優しく微笑む。大人な振る舞いとはこういう事なのだろう。
それを強要させているのは俺なのだ。それは前世含めて数十年生きているモノのする事だろうか?
間違いなく違うだろう。そういう人もいるだろうが、それはとても醜く感じる。
自分の中の人の基準が高い気がする。そんな出来た人などほとんどいないだろうに。
勝手に自分の中のハードルを上げて、自分で自分を人間と認められなくしてる。
人間は合理性のある行動を取るモノとは思っていない癖に、合理性の塊みたいな行動しかとらない謎の生き物を想定する。矛盾してる。
ふと思ったのだけど、自分の中の基準にしている「人間」って今リク君が体現してないか?
もしかして俺の立てていた指針がリク君に作用して、この人格になってしまったのだろうか?
この子が悪い事をしている姿を想像するのが難しい……わけではないな。演技臭いし。
いや、でも演技臭いけど、この子はきっと演技していないと思うんだよな……。
「そろそろ目的地みたい。リクさん準備しましょう!」
こんな長い事乗ってたけど、いったいどんな辺境に着いたんだろう。
いや、本当に長くなかった? 絶対長すぎると思った。飛行船だから自転車よりも早いはずなのに。
時速100キロくらいかな? だとしたら数時間も動けば北海道なら横断はできるのでは?
途中で魔物とか出るから最高速で動き続けるのはムリだとしてもそれでも数百キロは移動できそう。
どんな場所に連れてこられたのだろう? というかもはや「え、当初の目的地に到着できるの?!」って思うレベルだよ。
俺は途中でまた事故って変な場所を彷徨う気がしてた。犬が道端でちょうどいい棒を見つけたら拾うくらいの確率で。
そういえばなんかリク君も肩の荷が下りたような顔をしている気がする。異常事態乱発していたからなぁ。






