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270、リク君の待つお部屋に到着

「あ、お帰り。きれいきれい出来た?」


 微笑みが眩しい。なんでこんなキラキラしているの? 意味が分からない。

 この人は現実に存在する人なのだろうか? なんでこんなに明るく微笑む事が出来るんだ?

 なんかすごく心が折れそう。犬だったら耳がへにゃりそうだ。


 とりあえずはするべき事をする。それを意識しよう。

 自分の陰に引きずられるな。過去がどうであれ、今は関係ないのだ。

 この陰はただの幻想にすぎない。地を這う虫けらである事をやめろ。


 自分の陰湿さは良く分かっている。

 だがだからこそ、それを克服しない事には快活さは得られない。

 むしろ快活さに対して苦手意識、嫌悪感や忌避感すら覚えてしまう。


「きれいになったよ。それでこれは?」


 広間には机。4人か5人くらいで食事するならちょうどいいくらいの大きさだろうか。

 その机には色とりどりのご飯が置かれていた。内装も幼稚園のお誕生日会みたいな雰囲気がある。

 なんかすごくファンタジー。いや、この幼稚園のお誕生日会のイメージも実際には見た事ないか。


 照り焼きチキン。ハンバーグ。チョコフォンデセットのマウンテン。今おかしいモノあったな。

 サラダや果物もたくさん並んでいる。基本的には少な目だが種類の量がおかしい。

 これはカピってマズくなる前に食べ終える事が出来るのだろうか? どこからつっこめばいいんだ。


 照り焼きチキン。1羽まるごとだよね? これ、もしかして中にハーブとか入っているヤツかな?

 白い湯気が見えて、表面の乾燥などの劣化が見えない辺り、出来立てなのだろう。

 あの時間稼ぎ、もしかしてこれのためだったのか? どんだけだよ!


「お祝いかな。シロとようやく再会出来たんだもん」


 むっちゃニッコリ笑うなぁぁぁ!


 こんな陰のない顔を俺は出来るだろうか? いや、できない。

 俺の心の病みは根治できるかどうかも怪しいのだ。

 俺の作った仮面にその色を残さずにいられるとは思えない。


 という事はリク君はリク君なのだ。俺が作り出した仮面ではないのだろう。

 リク君が歪なる俺の一部である必要などない。あってはならない。

 俺自身の性格など未来に何かを遺す価値がない。


 はい、自己嫌悪はやめよう。嫌悪するから狂っているんだ。

 自分が嫌いなのはいいが、それで行動を狂わせ過ぎだ。

 合理性に欠ける判断を下しても何の意味もない。


「そっか、そうなんだ」


 返答に困るんだよ! いやだって俺を祝っても何もないぞ!

 俺は何が出来たわけでもなく、何か行動できたわけでもない。

 あー、うん。後ろ向きな事を考えるな。それをしても意味がない。


 目の前の光景にちょっと圧倒されて、色々思考が巡ってない。

 祝われるかな? とか一瞬ぼんやり考えてはいたんだ。ほんの一瞬くらいだけど!

 時間稼ぎみたいな移動時間もあったしな! 本当に時間稼ぎだとは思ってなかったけどさ!


 とりあえず俺は自分に正の感情を向けられるのが怖いんだろうな。

 それに対して返せるモノがないから。どう対応すればいいかよくわからないから。

 負の感情なら邪魔なモノはぶっ壊せ! って短絡的な解決手段の行使でいけるから楽なのだろう。


「あ、そこ座って!」


 相手を傷つける事が嫌だし、せっかくの味方を失くしたくないというのも大きい。

 それが自分にとって迷惑なモノだったとしても、向けられた感情自体は好ましいというのが大変。

 甘受するだけが正解ではないし、それの受け取り方は相手だけではなく他人も見ているのだ。

 

 その場では見ていないかもしれない。だがどういう対応をする人なのかの噂は流れるもんだ。

 あまり関わらない人の場合小さな挙動1つで。たくさん関わる人の場合は奇妙に感じた挙動に関して。

 俺? あまり関わらない人の枠に入るだろうさ。挙動の1つ1つをつぶさに見られていると思った方がいいだろう。


 無難は考えるな。何事もない様にというのを繰り返した結果が今だろう。

 自衛ばかり考えて、台風が通り過ぎるのを待つだけでは来年の種もみも残せない。

 稲穂が折れない様に水を張れ。事前にある予兆で対策をたてたモノだけが生き残れるんだ。


「ありがと。祝ってもらえて嬉しいよ」


 祝う感情でいっぱいの相手に対して、先の話をするのは無粋極まりないだろう。感謝を返す

 食べ終わってから話を切り出すのが正解だろうか? しかし何を切り出せばいいだろう?

 そもそもこの船の行く先は秘密にされて聞く事が出来ていないのだ。それもけっこう困ってる。


 行き先はなんとなく転生者たちの集落とかではないかな? とか思っているんだけどどうなんだろ?

 きっとこうだろうとは思うのだけど、それを切り出す間もないのがアレ。

 いや、リク君がサプライズにしたがっているのに、それを指摘するのもやはり無粋だよな。


 というかだ。無粋というか、相手を見透かした態度など取ってもいい事などない。

 分かっててもそういう事をぶちまけていくのはただただ心象が悪くなるだけだろう。そこに利はない。

 間違っていたら恥ずかしいし、それで合っていてもサプライズに出来なくてガッカリさせてしまう。


「喜んでくれて良かったよ」


 はい、微笑みマスター! 分かってたよ! でもクソゥ……! 眩しすぎるんや……!


 というかなんでリク君の微笑みは陽性の波動を感じるのだろう……。

 これって俺がリク君の事を好き過ぎるとか、そんな意味合いとかないだろうか?

 いや、元肉体として繋がりがあるから、特別な感情を抱いてしまうのだろうか?

 裏にヘンな感情がないだろうって、元肉体補正で考えている可能性もあるだろう。


 思考があまり冷静とは言えない。躁鬱が激しすぎる。いや、それはいつもの事か。

 落ち着け。もちつけ。ぺったんぺったん。きな粉餅。この世界って煎り豆あったし、大豆みたいなのありそうだな。

 ひとまずは先を考えろ。何がしたい? したい事を決めて、先を目指せ。


 組織というモノに対して憧れを抱いている気がする。組織のどこかに居たいって思ってるし。

 自分1人でもある程度なんでも出来るが、対人ではポンコツ極まりないから大変なのだけど。

 何がしたい組織というのも重要だろう。理念もない組織などどう人手を集めるというのか。


「びっくりした。まさかこんなパーティを開いてくれるなんて想像してなかったから」

 

 コングロマリットとか多角企業とかまぁなんか色々あるにはあるが、軸があっての成長だ。

 初めからなんでも出来たわけじゃない。自動車にソーラーパネルをつけたかったからとか、そんな理由で増えたりして、幹がしっかりしているから枝先にも金がいくのだ。

 軸となる企業に金があったから他社を枝葉により太く成長しようとするモノだ。組織と植物は近しい関係だ。


 そもそも1人で成立するモノではない。どんなにモノが作れたところで、消費者なくして金にはならない。

 技術者が営業すれば技術者の作る時間が減り、作れる商品が減るし回って得られる金も減る。

 消費者が商品に目を届かせる仕組みなどの営業がなければ金には繋がらないし、金がなければ材料どころか生活も成り立たない。

 認知されない商品は商品足りえないし、より多くの人に認知されないと売れるモノも売ることが出来ない。

 数の少ない普通の品は少し劣悪だろうと数の多い商品に負け、認知もされずにゴミになる。


 頭でっかちで口の上手くない俺は人を集めるのには向いてないだろう。

 そう考えるとどこかの組織に入るのが俺の望む状態への道になる。

 となるとだ。目の前の大きな組織のお偉いさんは渡りに船。


 やはりリク君。リク君が正義だ。


「シロがこうやって目の前に居てくれる事が僕にとってどんなに嬉しい事か、想像しても足りないと思うよ」


 ごめん。ちょっと厳しい。


 




リラ「2人だけの世界が出来ちゃった……」

ネネ「リクもシロに会いたかったからね! ご飯食べてもいいかなー!」

リラ「ステイ…… ステイ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] シロの口が勝手に! 口が勝手に!
[一言] リク君にドチャクソ甘やかされてドロドロに絆されて( ˘ω˘ )
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