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268、リク君のところへ行こう

 服を被る。首の穴から頭を出すから被るが正確だと思う。

 下着は……さすがにあれは穿きたくない。精神衛生的にちょっとムリ。

 いやホントは穿いた方がいい事は分かっている。分かっているが穿きたくない。


「穿かないんですか?」


 黙れ。これはあるかないか分からないおっさんの最後の砦だ。


 普通のおっさんならこの姿になった時点で色々モノを思うだろうとは思う。

 断固として男の姿を求めたり、むしろ幼女になりきったり、性的対象として自分の姿を使うモノもいるかもしれない。いや、表では出さないだろうが、いる事は間違いないだろう。

 少なくとも俺はそういったおっさんに該当する事は出来なかったが。


 だがしかしおっさんがこの下着を穿くというイメージだけは絶対に避けたい。

 もはや前世の自分の姿など煙がかったレベルでしか思い出せなくてもだ。

 簡単にイメージ出来るおっさんの姿と前世の自分の姿は全然違うが、おっさんが穿くというイメージの際に出てくるのはバーコード禿げのサラリーマンとかビール腹のそれなのだ。

 断固としてそんなおっさんにこの様な下着を穿かせる様な最低な状態を想像したくない。

 変態は変態の世界にいればいい。迷惑をかけなければいても構わない。だが俺の視界には入るな。


「これは穿きたくない」


 今の見た目の子供なら穿いても問題ないというか、別に穿く事に抵抗がある方がおかしいのか。

 子供にしてみたら大人な方のデザインといえばそうだろう。おっさんにはきついが。

 質感はふわふわ。生地はちゃんとしている。なのにシルクみたいな質感。高級なモノだろう。


 シルクって繊維が細くて強いし、透けるくらいの薄さで使うのが普通だと思っている。

 子供って汗とか下が緩かったりするから水分を吸いやすかったり、そもそも成長して体格的に穿けなくなったりで、1年経たずに捨てる前提の素材の下着しかないイメージがある。

 子供のサイズでオトナなパンツを着せるのは被服担当が拒否した可能性が高い。だから厚手か。

 この体は大きくならないし、排泄物もない以上、長期で使う想定もされているだろう。

 そう考えていくと目の前の代物は特注品だと予想が出来る。でもこれは可愛すぎる。辛い。


 キャラモノでないだけまだマシなのだろうか?  竜とか描かれていても嫌だ。

 ぶっちゃけ迷彩柄のトランクスとかがいい。妥協して原色かボーダーとかだろうか。

 そもそもおっさんが少女みたいな外見している事自体が問題に感じる。というか問題だ。


 中身にあった見た目をしてくれ。いや、それで変な姿になっても困る。

 世間に潜みやすい平均的な顔をした平凡な成人男性であるのが一番だ。

 労働力以外で狙われる理由がないのがいい。警戒の必要性が少ないのがいい。


「やっぱり手伝う……?」

「いらない!」


 口が反射的に動いた。どんだけ穿きたくないのか。脊髄レベルか。ガウガウと吠える犬の様だ。


 穿きたくないがこれをこの変態に押し付けるのもなんか嫌だ。

 とりあえずポッケにでも入れといてどこかで処理しよう。一応ポッケあるしちょうどいっか。

 被服担当とか見つけたら要望とか伝えてみて、適当な下着を用意してもらうのがいいか。


 この服、子供用だからポケットがあったのだろうか? 分からないな。

 祭典用とかではない。普段着として作られたモノだとは思う。

 スカートのポケットみたいにヒダに隠れて目立たない形にしているのが面白い。


 それはそうとお風呂から出るとしてどこを目的地として設定するのがいいだろうか?

 船の通路的に案内人がいないと迷走するのが予測できる。変態は案内人にしたくない。

 ネネは頼れるだろうか? 最悪だと変態を案内人に仕立てないといけないんだよな。


 そういえばなんでここちゃんと扉があるんだろ。自動で開くと全裸と遭遇するからか。

 カギがない気がするけど、どこかで操作するのかもしれない。ここも個人認証か?

 まぁ、自分の意思で出入り出来て助かるのだけど。壊す心配なく開けられて更によし。


 船の構造を鑑みて時間稼ぎを考えるとこの船って歩いているだけで出来るのか。

 だとしたらこの変態は自分の欲求を満たすためにやっていたんだろう。

 余計にこの変態に気を許す気はなくなったな。余罪があるかもしれない。


 壁を突き破って移動するのは最終手段。突き破った結果のフリーフォールは天丼過ぎる。

 下手に破ってエンジンを巻き添えにしましたとかしたらヤバすぎる。

 俺はともかく他の人が死ぬだろうし気が引ける。案内人は絶対必要だ。


「ネネ。リクの元に案内お願いしてもいい?」


 扉を開けた先、ネネはホバリングしてた。OHANASHI中ずっとしてたのだろうか?

 まぁ、1時間もやったわけじゃないし、大した負担じゃなかったかもしれない。

 時間感覚が曖昧だからなんとも言えないけど、数分も経っていないかもしれない。


 前世もそうだったけれど、自分基準で動いている事が多過ぎて、時間に縛られなかったのだろうな。

 空腹とかに対しても反応が鈍かったし、夜でも街中の明るいところはたくさんあって動けた。

 時間を忘れる要因ってどれだけあったんだろう。いや、そもそも意識しなかったのは俺か。

 そこからして協調性というか、人間性の欠如の片鱗が出てたのだろう。


 まぁ、でも一番の時間の忘却要因はこの無秩序な思考だろう。

 人に対してモノを思っても、それは人に向けられる言葉になっていない。

 今こうやってネネの目を見ているのに、自分に向けた言葉ばかりが出てくる。

 相手に向かって何を話せばいいのか、1ミリも浮かばないどうしようもない脳みそに、溜め息しか出てこない。

 こんな頭しかないから人間になんてなれないのだ。


「うん! 分かった!」


 あーうん。やっぱネネはいい子だ。この嬉しそうな声ってそれだけで分かってしまう気がする。

 こういう裏表もない様な声というか、明るくてすごく魂が浄化される気分というか。

 変態を相手にして疲れてたせいか、この声がもうポーション。回復するな。


 普段だと光が強すぎるんだけど、今回は素直に受け入れられる気がする。

 自分を悪いモノだと思うのがいけないんだろうけど、そう思わないとやっていけない気がする。

 自分が悪くないなら今のこの現状は何なのかってなるのだろう。まぁ、実際それは俺のせいだな。


 自分が悪いと思うせいで、余計に自分を悪くしている。

 こういう悪のスパイラルはどこかで断たないといけないだろう。

 結局のところ、断つために自分で道を決断しない他人任せを止めなければ治らないだろう。


「ありがとう。お願いね」


 自分が決めた道に行く。


 例えば宇宙飛行士になりたい人なら、そういう大学に行くための勉強をするだろう。

 自分のなりたいモノが明確なら自ずと方法が出てくる。漫然と生きているだけでは選択肢に上がらない行動を選ぶ事になるだろう。

 そういった目標は今の俺にはないだろう。だから選ぶ道が見えていない。

 少ない文字数だけれども簡単に出来る事ではないのが難点。


 やりたい事をやるのは普通の人でも難しい。それをやるためには現状を越えないといけないのだから。

 現状を熟さずにやりたい事を目指す場合、金銭や人間関係など様々な障害に阻まれてキツいだろう。

 俺の場合もそうだ。まず目の前のモノをクリアしないで逃げたからややこしい事になっている。


 もしリク君と別れずに学院で勉強などしていたら?

 もしかしたら同じ時間軸で自由気ままに動物をモフりながら色々工作などしていたかもしれない。

 そもそも人間だどうだなんて、そんな些末な事を気にする必要もなかっただろう。

 だからやっぱり逃げた俺が悪いんだ。


 イフをいくら考えても、過去をやり直す事は出来ない。

 もう逃げるな。次のために繋がるモノは戦略的撤退か? 敵前逃亡かもしれないな。

 どの道、逃げたところで何にもならない。ただ時間のロスにしかならないから戦え。

 戦わなければ生き残れない。




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[一言] ノーパン( ˘ω˘ )
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