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26、飲み会は終わり

「リク君の父さん達って何者なのですか?」

「リク君の父さんはケンさん、英雄ハク様が率いる竜の団のメンバーですよ」

「竜の団っ!」

「えぇ、竜の団です」

「まさか……あの素材も?」

「竜の団が東のに挑んで手に入れた素材です」

「……それをなぜあなたが?」

「私が王都にいる職人よりもいい職人を知っていると判断したからだと思いますよ」


 竜の団……。火竜の一団といい竜が好きなのだろうか?

 いや、竜が好きなんじゃなくて、火竜の一団は竜の団に憧れているのかな?


「そうなんですか……」

「行商人をすると同業者よりもいい仕入先を見つけないと仕事にあぶれちゃいますから。

 これでも私、先祖代々続く行商の家系なんですよ?」

「……先祖代々……行商に何かこだわりがあるのですか? 行商って移動も多ければ生活の安定もしない、そんな危ない仕事じゃないですか」

「1つの街に住み続けるには私の家系はちょっと好奇心が強すぎるんですよ。そういう安定を考えるのは老いてからでも十分です。父も腰を悪くして長旅が出来なくなるまで行商続けていましたし、私もきっとそうすると思いますよ」

「そうなんですか……」

「えぇ」


 ニキさんは目を閉じて微笑みを浮かべていた。

 その表情はとても穏やかで落ち着いていた。


 ニキさんがしていることはもしかしたらニキさんの父親の真似事なのかもしれない。

 父親はその父親みたいに、先祖代々引き継いできたやり方なのかもしれない。

 先祖代々引き継ぐことでどんどん洗練されていったのかもしれない。


 かもしれない。かもしれない。こんなことはすべて推測に過ぎないのだ。

 実際に話を聞いたわけじゃないし、違うかもしれない。


 わからない。けれど1つ言えることがある。


 ニキさんの影響力は非常に高い。


 ニキさん、ニキさんの家族はとても多くの伝手があることだろう。

 先祖代々増やしてきた多くの伝手が。

 生産者は新進気鋭の若手から伝統の継承者まで、でも期待の若手から王都の老舗まで販売する店舗も幅広いに違いない。

 冒険者から直接材料を仕入れ、適切な生産者に材料を運び、商品を引き取り、適切な商店に売り稼ぐ。


 それに父親は隠居して都市に住んでいるということは住民権に関しても問題ないだけの資産があるということ。

 零細だとは考えられない。


 本当に知り合えてよかった。

 付き合いが続くようにニキさんにとって魅力のある人材でいないとだ。

 気が付いたら疎遠になっているなんて怖いことにはなりたくない。


「さて、そろそろいい時間ですね。今日はこの辺りでお開きにしますか」

「ニキの旦那。また機会があったら飲みましょう」

「いいですとも。あ、もし何か困る素材あったら見せてもらえませんか?

 その素材を加工できる友人はきっといるので」

「きっといいところを紹介してくれるだろうな」

「えぇ、それはもちろん。腕の良さはしっかり確認していますから!」

「それはいいですね」

「連絡をとりたい時は中郭、東区画5の都市に父が住んでいるのでそこに要件を伝えてください。

 父なら、今私がどこにいるのか、把握しているので連絡はとれますから」

「わかりました。今後ともよろしくお願いします」


 火竜の一団はそれぞれニキさんと握手すると夜の闇に消えていった。


 ニキさんは見事に新しい素材の入手先をゲットしたのである。


 知り合いからの紹介という断りにくい誘い方、お酒を介した飲みニケーションによる友人関係への踏み込み、ケイさんの奥さん登場を予期して組み込んだ素材の受け渡しという衝撃、仕事に立ち返らせつつもビジネスだけはない友好関係を築く。

 鮮やかなお手並み。


 ちゃんと精進しないとだ。

 ニキさんは今後もその伝手を広げていくことだろう。

 今、知り合える時にちゃんと印象づけて、できることをしっかり伝えられる人にならなくちゃだ。



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