260、魔力の供給方法は?
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「気持ちよかった~!」
幸せそうな声でネネは言った。その声帯はどこにあるんだろう。
まだ黒い。俺の心は洗い切れていない。心の洗い方って調べたら見つかるものだろうか?
純粋さをぶつけられて表層の取り繕いを吹っ飛ばされた気がする。つまり根が黒いのか。
危機感の持ち方が狂い過ぎている。ご飯を食べていないのが問題かもしれない。
この体になってから食べたのはあの化けシャチの内臓と不味くて吐いた空飛ぶ触手の塊だ。
俺は何を食べているんだ? 人間らしいご飯をいっさい食べていないじゃないか。
精神的な充足はけっこうな割合を食が占めていると思う。三大欲求だしな。
三大欲求の食欲、肉欲、睡眠欲のほとんどが生きていた頃から薄かった気がするが。
生きていても大して欲しくなかったモノがゴーレムになって欲しくなるか? と言われたらキツいか。
「よかった。きれいに洗えて安心したよ」
そもそも本当に欲する事が俺にはあるのだろうか?
普通の生活? 本当にそれが欲しいのだろうか? いや、欲しいか。
自分が自分らしく生きられる生活ってそれだけで目指す価値があるだろう。
頼り頼られ、自分が社会に必要とされているという実感はきっと得も言われぬ味だろうな。
自分の価値観というモノは自分が想像する社会というモノを重視していると思われる。
自分が想像する社会というところがきっとミソだろう。
俺の想像のは実際の社会とはきっとかけ離れた理想郷になっている気がするからな。
理想はあくまで理想でしかない。現実とは違うし、気がついていないだけで欠点がある。
そもそもの理想論で生きられる程、人間は一本筋が通っていないし、体調で判断だって変わる。
機械みたいに決められたモノを決められた様に動かし続けるなんて出来ない。
むだと思えるモノも含めて色々あるからこそ、多様な選択肢が生まれ、様々な結果が現れる。
全員が全員、俺みたいな人だったらどうなる? たぶん社会崩壊するぞ。ダメだろ。
「うん! スッキリ!」
あぁ、うん。ほんと。今はまだ顔は取り繕えているだろうけど、精神がささくれ立っている。
二面性が酷い。美味しいご飯でも食べたら治るだろうか? ご飯はいらない体だと思うが。
もしかして今さ、俺、魔力切れかけている? 可能性高いよな? 不安定過ぎる。
あの触手の塊、食べた内には入らない。口に含んですぐ噴射してたし。
むしろ魔力を消費していた可能性が高いだろう。そう考えたらダメな気がしてきた。
お風呂あがったら何か食べるモノをもらおう。もらえたらいいんだが。
もらえない可能性があるのでは? というかなんで急にそんな事を期待したんだ?
そもそもご飯がいらないはずの体だし、用意されていない気がしてきた。
捕まえられた以上、自分でご飯が確保できないから用意してもらえる気でいたのかもしれない。
自分で金銭を稼いで適当に買って食べる。それが出来るのが一番気楽なんだが難しい。
そもそもこの身分証明すら出来ない身。いったいどこが雇ってくれるというのかというヤツだ。
魚でも捕まえたり、山河を駆けて野生動物でも捕まえて売ればいいのだろうか?
あの文明社会でそんなモノ需要は薄いだろうが。
研究者とか専門家になら珍品は売れるかもだが、珍品は珍しいから珍品であって、常時捕まえて売る事が出来るモノじゃないんだ。
「ネネ? 普段ってご飯というか魔力ってどうしてる?」
純粋に魔力の量を考えたら稼働に必要な量を出せるのはリク君だけだ。
しかしいくらリク君といえど無限の魔力を持っているわけではない。
限られた魔力量をどう配分していくのだろう? ニーナとか山ほど必要だろう。
成人になった事で魔力量が格段に増えたとかあるだろうか?
ニーナ。そう幼少期に蓄え込んだ異常な量の魔力をほとんど使い生み出したのだ。
器の大きさにどれだけ魔力が使われたかが分からない。しかし大きさに比例するならヤバい。
あの異常な量と言われた魔力を再度蓄えられるのだろうか? 実質爆弾扱いされてたくらいだぞ?
放出しなかったから爆弾扱いされた可能性? それはあるかもしれない。
リク君の体で器の拡張と魔力の圧縮を行った。もしそれを今も続けているとしたら?
魔力が異様な量を保持できる存在になっているかもしれない。
「リクからもらってるーっ!」
しかし魔力の活性化が大事なんだよな? それは一定の量でしか回復しないのでは?
どんなに海みたいな量の水を抱え込んだところで、それをお風呂の温度までに上げるエネルギーは変わらないもんな。
お風呂の湯を沸かすのがせいぜいなら、海みたいな量の水は1度も上げられないだろう。
あれ? もしかしてリク君は下手したら魔法が使えなくなっていた可能性あるのだろうか?
いや、そもそもゴーレムを同日とは言わないが立て続けに何体も作れたんだ。
つまりこの量の魔力を活性化できるだけの炉が体内にあるという事では?
不活化した魔力を回収して炉をガンガンに回して戻せばそれだけで稼働に持ち込める可能性ない?
いや、だとしてもその炉は何を糧に動かしているんだよ。食べ物? 本当に?
活性化した魔力を考えるとどんな高カロリーを摂れば足りるかわからないんだけど。
もしかして毎日30杯とかラーメン食べてる? 脂直飲み? 生活習慣病で死ぬわ。
「そうなんだ?」
具体的に聞くか悩む。どうやってもらうのかわからない。
手のひらに作った魔力の放出孔からやるのだろうか?
あの孔、肉眼では確認できないのだけど、今もあそこにあるのだろうか?
なんか人差し指の先にありそうな気がする。構えたらそこから魔法が出てくるとかやばいな。
いや、むしろ全部の指先がそうなっていた場合どこから放つか分からなくてヤバいのか?
炉がすごいならいくら外に放出しようが問題ないもんな。いや、さすがに放出しすぎはないか?
もし変な方法で魔力供給とかなったら嫌だな。
思い浮かんだが言葉にはしないけれど、同人誌的な供給とかになったら逃げる。
粘膜接触で云々かんぬんは受け入れがたい。未成年禁止な話ならなおさらだ。
いや、さすがに例えばネネ相手にそんな事をしているわけがないか。
というかどうやるんだ、それ。いや、考えるな。そっちへ思考をやってはいけない。
「話してたらお腹減っちゃった! リクのところ行こ!」
手から飛び立つと空中で回転し水を床や天井へ全てネネは飛ばしつくした。
これ応用したら液体系の攻撃を無効化できそうだな。
水よりも粘度の高い液体を弾いているんだから、きっとそうだろう。
液状のコンクリートとかも弾き飛ばせるとか思えば拘束とか不可能では?
移動速度も速いし、突進するだけでも火力が高い。
拘束も難しく、人が通れないような隙間でも侵入できる。
やはりネネって最強のスペックがあるのではないだろうか?
干渉力が一定以下だと相手には打つ手がなくなる気がする。
ゴーレムに干渉できる、出来そうな相手となると神様くらいじゃないか?
実際に見たわけじゃないから何とも言えないけれど、あの木の神様は出来る気がする。
しかしそれも対応の仕方次第で封じようがあるかもしれない。
手駒となるだろう魔物の類はゴーレムにとってはエサでしかないからな。
「そうだね」
自分を脅かす存在だというのに、何故神様はゴーレムを放逐で済ませたのか。
上手く使えば都合よく使える可能性があるから?
このくらいの存在でも自分にとっては脅威足りえない存在だったからだろうか?
自分の管理しているシステムの中では強者だが、管理者には敵わない仕組みとかありそうだな。
下手したら人間やその他生物よりも魔法で作られている分操りやすい可能性すらあるかもしれない。
脳内をというか、思考を見ている節があったな。ああいう部分も影響しているのだろうか?
この思考も読まれているのだろう。本当に微妙な気分になる。
見られたところで困る事を言っているつもりはない。
打倒せよとまで考えているわけでもないし、もし倒したとしてどうなる?
魔法がなければ魔物に対抗する手段がなくなった人間は死ぬぞ。絶滅の可能性すらある。
魔法ありきで戦闘技術は組み立てられているだろうし、通常武器では火力が足りない。
いや、そもそも魔法はどこまでを魔法と捉えるかという問題もあるか。
魔力そのものが消えた場合、巨大化している体を支えられずに死んでしまう生き物も多そうだ。
「今日のご飯は何かなー!」






