258、結局なんなんだろう?
ハリセンボンのトゲって鱗が変形したモノだったっけ?
そういえば体毛も鱗が変質していった結果の代物だった気がする。
しかしそれで本当に間違いないのだろうか? 分からない。
ちゃんと勉強したわけじゃなく、何かで聞きかじった程度の代物だ。
間違いがあっても全然おかしくない。生物の進化は世代交代の過程でゆっくりと進む。
退化も進化も確実にそうであるとは言えないもんだ。
そもそもハリセンボンかどうかもわかったもんじゃないか。
丸くてトゲトゲしている海のモノならウニだっている。
何ならカニだってそうだろう。あれもけっこうトゲトゲしている。
スベスベマンジュウガニ? あの毒ガニは置いておこう。
「そうなんだ? 不思議なのがいたんだね。何色だった?」
……ネネってハチドリモチーフだけれど、色盲じゃないよね?
ハチドリって花の色が見えればいいから、赤とか青とかしか見えない可能性。
ネネの中身が人間だったとしたらとても可哀想な事をしたのでは?
いや、むしろ人間よりも多くの色が見えている可能性もあるのか。
人間の思考では想像できない色がそこに広がっているかもしれないのか。
その場合どう見えるんだろうか? 俺たちと同じ色が見えているのだろうか?
俺の意識が作ったから人間と同じ色覚の可能性もあるか。
それはそれでどうなのだろう? ハチドリの特徴を全て反映しているわけじゃないのも微妙な気分。
自意識が人間ならいいのだろうけど、ハチドリとしての自意識があるなら気持ち悪くなりそうだ。
「赤くてツヤツヤしてた!」
やばい。何も分からない。いや、そもそもここは異世界だぞ。
地球基準の生物なわけがないじゃないか。ちょっと近しいシルエットなだけだ。
だからこれはこれで何も問題ない。そう問題ないんだ。
地球の常識はおいておけ。そもそも俺の常識、地球の常識じゃない可能性が高いな。
ほんとの意味で常識を知っていたら道を外れないだろ。その時点で俺の常識非常識。
なんか変な事プラスアルファされてたり、必要な事が抜けている気がする。ダメだな。
落ち着け。これはまだ雑談の1つに過ぎない。これで全てを把握しようなどと思うな。
そもそもたった1つの事象から全てを把握する事は出来ない。
ここから分かるのはただ一側面に過ぎず、空想にしか過ぎないんだ。
「そうなんだ? 大きさはどのくらいなの?」
この世界では大きさ程当てにならないモノはない気がするけれどまぁ一応。
トビウオもデカかったし、カニは家くらいのサイズだし、クマもクマで木よりも大きかった。
むしろ小さい生き物っているのだろうか? 原寸サイズは人くらいでは?
いや、むしろ人や木が小さい可能性はないだろうか? 小人の国的な感じで。
それはそれで面白い。だがだとしてもそれはクマがおかしくなるか。
そもそも小さい体で人並みの高機能な言語機能が持てるか分からないよな。
ティラノの脳みそは恐竜で1番だが人間の3分の1程度だっけ? ティラノ450で人1500?
狩りをする動物や集団行動をする動物ほど脳が発達しているという話だったっけ?
大脳がコミュニケーションや視覚とか五感で、小脳がバランスとかっていう話だった気も。
脳の形状からある程度の行動が推察できるとしたら強いんだろうな。
体の大きさの割合に対し脳がどれくらいかの比較が脳化率で、哺乳類の中で人間がトップだったのはなんか覚えている。
重量だけならクジラが9キロあってヤバいというのも。ゾウは小脳の発達はすごいけど大きさはそんなだっていう話も面白かったな。実際見たわけじゃないから知らんけど。
「リクが5人分くらい!」
ほら意味わかんない。どう判断しろっていうんだ。はい解散。かいさーん。
少なくとも8mくらいある? そんな赤くて丸くてトゲトゲしている魚? なんだそれ。
オニカサゴとかそんな感じのヤツの化け物か? 奇天烈過ぎて上手く想像できんわ。
カサゴの類なら大口で何でも食いそうだな。でもやはり揚げ物は美味しいのだろうか?
わけわからん。髪の毛洗う手にヘンな力かかるわ。そろそろ水で流していいのでは? 流すか。
雑談しててもしっかり手は働いていてエラい。たぶん同じところをずっとやってる時間長いけど。
臭い泥を落とさないといけないからしっかり洗うべきなのは間違いないんだけどさ。
にしても魚か。最近は水辺の調査をメインにしていたのだろうか? 分からないな。
空に魚がいるし、陸海空宇どこだって検討の範囲になってしまう。
いや流石にまだ宇宙までは観測していないのかな? いや、なんか観測していそう……。
「大きいねぇ」
何も言えないわぁ。言えたけど。いや、うん。こうつれない返事しか出来ないって意味ね?
会話って共感か解決以外の選択ってとるの難しくない? 話ってどうやって広げるんだよ。
頭の中の憶測の類は出したらはばかるし、何よりもこういうのを口に出すのってうざくない?
相手ががんばって話しているならそれを遮るのは相手を不快にさせるだけだろ。
しかも上手く想像も出来ないものの話だ。こういうのかな? と言う事すらできない。
ぶっちゃけ大きさで想像していたモノの大半が殺された。つらい。なぞなぞかな?
楽しく話すという事の難しさよ。結果的に余計な言葉になるモノの多さよ。
いや、そもそもこの思考がきっと普通じゃないんだろうな。たぶん意識が過剰なんだ。
相手に合わせる事を考えすぎなのでは? 自分がないのでは? この意識で自分がないとかないな。
会話が主じゃない意識があるのが原因な気がする。そこで自己主張をしようと思っていない。
そういう考えが頭にあるから会話の主導権を取ろうと足掻かない。聞き手に回ろうとする。
自分を強く持ちすぎて、他は何とかなるだろうみたいな、それが人間になれない部分なのでは?
「うん、大きかった!」
あぁー。うん。いや、ねぇ、シャワーかぶってて見えないけど、後ろにハニカム少年? 少女? 今いない? いるよね? これに対して俺は情報を抜き取ろうと話していたの? 心が痛いわ!
勝手に黒くなっている俺が悪い。全面的に悪い。
そもそも俺に対して黒い感情を向けてきた相手はいただろうか?
いなかった気がする。勝手に前世からの悪印象を全てに対して抱いているんだ。
きっとこうだろう。ああだろう。こうなるだろう。
憶測だけで敵愾心を燃やして、バカをしている。拗けて斜に構えた態度を心で取って。
そんなバカにこうもキラキラふわふわした陽の感情をぶつけられるかな?
ねじくれた自分が痛くて堪らない。
相手が悪意を持っていれば俺は力を振るったのだろうか?
なんだかんだ理由をつけて、言い訳して、やめていそうだな。
拳の振り方も知らない。握り方とか効率のいい動かし方が分かっても、実際にふるう事が出来ない。
壁越しだと吠え合う犬かな? 壁がなくなるとお互い「あ、すみませんねぇ」みたいな顔をするアレ。
あれ、実際なんなんだろう? 壁を戻すと吠え合い出すし、安全圏だとイキり散らせるみたいな?
だがそれは俺も似たようなもんか。思考の上ではこんなにも饒舌なんだから。言葉にすら出来ない。
「そうなんだね。手伝ってくれてありがとう。そうだ、体洗おうか?」
背中も十分に洗い終えた。あかすりタオルはなかったので手で擦っただけだが。
背中で握手できるくらいに体が柔らかいの、なんか今気づいたわ。
ネネはシャワーをかけてくれていた。ちゃんと仕事している。
ネネが体を擦りつけて洗うとかいうサービスはない。
羽の質的に水分を弾くだろう。だからたぶんそれでは洗えないしな。
あとこのシャワー、水に何か混ざり物している。少しぬるぬるしてる。たぶんアルカリ性。
臭い土のせいで最初分からなかったけど、これは絶対アルカリ性だ。
洗剤入りなんだろうか? もしかしたらあの消臭剤の中和剤かもしれない。
一回目のシャワーの時に普通の水じゃ希薄出来ないってなったのかも。
「やったーっ!」






