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25、ケイさんの奥さん

 大人の楽しそうな飲み会は日が暮れても続いた。

 何回か俺のトイレでニキさんを呼んでしまったが、火竜の一団はそれを興味深そうな目で見ていた。

 20代の冒険者はまだ1人の女性と過ごすなんて考えられないのかもしれない。子供なんてなおさらだろう。だから未来の自分もやるかもしれないと思ってみているのかもしれない。


「こんの……ばかっ! こんなところに居やがったのかいっ!」


 うとうとしていたところに怒鳴り声が響いた。

 なんだなんだと思って見てみるとそこにはワイルドな顔をしたお姉様がいました。

 お姉様です。お姉さんではなく、不良チックなお姉様です。

 おば様みたいに太い体つきはしていません。細身な黒髪のお姉様です。

 しかしその腕には細いながら鍛えられた筋肉が……戦闘力は非常に高そうです。


「げっ! 母ちゃん!」


 ケイさんが見つかってはまずい人に見つかったというような情けない声を出した。

 日が暮れて暗くなってきたので机には照明が置かれていた。

 その照明がケイさんの顔を下から照らしへの字になった口元が情けなさをさらに強調する。


 にしても母ちゃんか……。悪ガキが親に見つかったみたいな言い方だなぁ……。

 お酒が入って少し幼児退行でもしてるのかな?

 そういえば俺の母さんたちは何してるんだろう?


「ニキさん、悪いねぇ……。うちのばかがこんな時間までお邪魔しちゃって……」

「いえいえ、楽しい時間でしたよ」

「そうだぞっ! 楽しんでいたんだぞっ!」

「あんたはだまらっしゃいっ!」


 ケイさん……。


「あぁ、私が付き合わせてしまったんですからあまり怒らないでください」

「ニキさんはいい人だねぇ」

「そうそう忘れるところだった」


 そういいながらニキさんが車から何かを持ってきた。

 それは白い包みに見えた。両手で抱えないと持ち運べない大きさだったが平然と持ち上げているニキさんの表情からして重くはないのだろう。


「奥さん、これで1つ旦那さんと楽しんでください」


 奥さんがそっと包みを開くと中には黒い物が見えた。

 その中身が見えた瞬間火竜の一団の内の1人、指輪をたくさんつけている男性が一気に青ざめた。

 やばい物なのだろうか。


「おや……これって……!」

「辺境にてもらい受けたものなんですが私ではちょっとどう扱えばいいかわからないんですよね」

「……ニキさん。これ、任せてもらってもいいんですか?」

「えぇ、どうぞ」


 お姉様は神妙な顔をしてそれを受け取った。


「ケイ。これから忙しくなるよ」

「へ……?」

「さっさと酔いを醒ましなっ!」


 お姉様はケイさんの襟元をひっつかむと肩に担ぎあげた。


「ニキさん、とりあえず何か作れたら連絡するっ! 今日のところはここまでにしてまたなっ!」

「えぇ、頑張ってくださいね」


 ニキさんの声がお姉様に聞こえたのか分からないくらい、あっという間にお姉様は人1人抱えているとは思えないほどの速度で走って夜の闇に消えていった。


「すみません、あの包みはもしかして」


 火竜の一団、指輪をたくさんつけた男性がニキさんに声をかけていた。


「えぇ、東のです」

「誰があの化け物から……」

「リク君のお父さん達ですね」

「そうなのか……」


 え、父さん?

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