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250、クソガキ仕草

 息を止めたおかげで目に意識を集められる。

 いやほんとさ、毒も効かないこの体で何を鼻で感知する必要がある?

 鼻で感知出来たら周囲の弱い生命体を救えるか。自分よりも他の存在に対して役立つな。


 あぁ、もう完全に自分1人で完結出来たら楽なんだろうな。

 ある意味この体はそうなっているんだけど、だとしても存在している以上、外部と関係してしまう。

 物質の交換が完全に0な存在は自然界において不必要というか、いて欲しくないモノだろう。


「どけよ。触るな。無理に手を触れたら下手したら骨が折れるぞ」


 遠巻きにしている群衆に吐き捨てる様に言う。言ってみる。

 この身が力を上手く加減出来なかった場合、瞬間的に破壊的なエネルギーが手首などにかかる事だろう。

 ゆっくり動いた場合でもかけている力がおかしければ飛行船の壁みたいに壊れる可能性がある。


 固定物ではないから壊れないだろうか?

 動くトラックだろうと歩行者並みの速度であれば側面に触れてもケガはしないか。

 動くのに必要なエネルギーが大きくても、それが接触点に全てかかるわけじゃないからな。


 まぁ、だとしても壊れる可能性がある事はやめて欲しい。

 変なところを触られたら気色悪くて吹っ飛ばしかねない。というか吹っ飛ばす。鳥肌が立つ。

 心臓のところにある肉が背骨ごと空の星になったとしても何も言えない。


「なぁ、触るなっていうが触られたらダメな場所があるという事か?」


 ……。


 触られるのが嫌なのは肉欲で見られるのが嫌なだけだな。

 自意識はたぶん男性寄りだし、男性側のアレな感情も見かける事があった。

 いや、見てはいないな。全部伝聞でしかない。


 ぶっちゃけ肉欲に忠実な連中は男女問わずいるのは知っている。

 というか裏見れば女性の方が色々濃かったりする事もある……。

 ただそれをヤバいところで露出させてしまう事が多いのが男性な気もしている。


 ただまぁ、触られるのは嫌だな。特に肉欲を滾らせている連中に。

 そもそも俺はそういう意味での感情をたぶん一度も抱けたことがない。

 同類になるために抱こうとしても出来なかったし、どうしたところで伝聞の理解できない感情だ。


「おっさんは撫で回されて嬉しいと思うのか? 嬉しいならそれはおっさんの趣味で結構だが、俺はそういう趣味はない。ただ気持ち悪いだけだ」


 嫌だという感情が強すぎる。お風呂の時よりも嫌悪感が強い。

 そういう部分を考えれば間違いなく意識の上では俺は男性なのだろう。

 性欲とかは特にないのがおかしなところだが、それでも俺は男性なのだろう。

 

 そういえば犬とか猫とかヤギとか牛とか撫でてもらうの気持ちよがるよな。

 信頼関係がある相手だから許している? だと思えばこれは意識が男性女性関係ないのか?

 そもそも撫でられる事で何かが生まれる? こう幸せを感じるホルモンとか分泌される?


 分からない。


 いや、そもそも俺は誰かを信用する事ができないから、触られると不快感が強くなる?

 何を思って触るのか理解できないから怖いと思うし、理解できないから気持ち悪いと感じる?

 結局のところ、俺が歪んでいるせいで嫌なのか。


「あぁなぁ」


 おっさんはなんかしみじみと頷いていやがる。

 何を考えているのか。たぶんやはりこの人いい人なんだろうな。

 いい人じゃないならこういう反応は考えにくい。


 いや、そもそもいい人ってなんだ? 自分にとって都合のいい人か?

 いい人だが頭が足りなくて変な事をしてしまう人とかいるよな。あれは都合が悪い人だな。

 性情が大人しいというか、相手を思いやれる事をいい人というのは不思議だ。


 出来るだけウィンウィンの関係になる様に動こうという人をいい人。

 自分だけが儲かる様に動く人を自己中とか悪い人。

 こういう風に捉えればちょっとしっくりくる。


 しかし悪い人のやり方って非効率だし、回りまわって自分の首を絞めるだろう。

 人にいい顔をする事で儲けるヤツもこの区分ではいい人だ。根本的には悪でもいい人としてしまう。

 悪い人、いい人。結局自分で好き勝手に判断しているだけに過ぎない。


「関わるな。俺はたまたま来てしまっただけだし、今後俺の事を思い出す事もないだろう」


 本当に。所詮、俺はどこにも辿り着けない、居座る事も出来ない。

 自儘に居座ろうとしないからだろうか? それが出来る根性がないんだ。

 図々しさ。自分を押し通す事。どれを取っても先々を考えて怖がって出来ない。


 自分のやりたい事1つ見つけられない。それをする行動力も足りない。

 ないない尽くしで根無し草。流されるままに道を外れる。

 これが最善と思っても、それがしたいと思っては行動出来ていないしな。


 最善としたい事は違うし、そもそもしたいと思う事すら足りない。

 それでどうして生きられるというのだろう? 生きていると生きるは違う。

 やりたくてやっていない根無し草は生きるとは言えない。


「まぁ、待て。何をそんなに急いでいるんだ?」


 臭いし、裸を晒しているからだよ! バカ! 俺は露出狂じゃない!


 息を止めているから嗅がないで済んでいるけどな、好きで息を止めているわけじゃないんだ!

 草木の匂い、土の匂い、空気の匂い、水の匂い。この世にはいい匂いのモノが多いんだ!

 こんな糞の中に好んでいられるか、バカ! 俺は外に出る!


 あぁ、というか本当に服どうしよう? 折角洗ってもらった体が汚れたし、水辺とか探そうかな?

 近くには泥沼くらいしかないかも。いや、大きな水辺があったとしてそこに怪物でもいるかな?

 怪物がいたらどうしようか? 嚙みつく? 不必要に殺す必要はないな。


 小さな子が襲われそうだったり、飲み込まれたり、救助のために倒しても、無意味な殺しは良くない。

 その水場にいる事で近くの人間が困る? 知るか。そもそも自然の上限を超えた生き物が悪い。

 人間は自分で食料を生産する事で増える事を覚えたが、それは犠牲の上に増えたモノだ。


 いつか犠牲になってくれるモノがなくなり、死ぬ事になる。それが自然の摂理だ。

 ここの住民はここの世界で増え過ぎた人口に分類されるヤツらなのだろう。

 殺しはしないし、何かを成せば都市の住民としてなれるかもしれないという楔を打たれた家畜だ。


「こんな臭い場所になんで好き好んでいる必要がある? 早く出たいに決まっているだろう」


 感情任せに言葉を出すと息が足りなくてかすれ声になる。息を止めると話せなくなるのは当然なのか。


 手にペッと消臭剤を吐き出す。手で鼻を覆いながら深呼吸し、肺に多めの空気を入れる。

 ラベンダーの香りが強すぎて吐きそう。元の空気に比べたらマシなんだろうけど辛い。

 これに頼らないといけない以上、ここはやっぱり俺のいるべき場所じゃない。


 というか下水道よりも臭いとかどうなっているんだよ。

 あのナメクジが地下を清掃し、異臭がする前にコケの類すらも含めて消したとか?

 あり得てしまう。あのナメクジ、地下に潜もうとする犯罪者の類も食い殺したりしてなかったか?

 実際にしているところは見ていないが、それをしていてもおかしくないか。


 あの都市は色々整い過ぎているのかもしれない。やっぱ考える程、あの都市怖いな。


「臭いか。臭いなぁ。そんなに臭いのか。いや、だがそんな恰好のガキをここの森に放り出すとか流石に許認できないな。臭くて悪いが留まってもらおう」


 ……。なんか周囲の人もうんうんと頷いていやがる。なんでやねん。


 俺、しっかりクソガキ仕草をしているよな? 面倒な感じの子をしているよな?

 何故引き留める? この身が女の子にも見えるからか? 髪が長いのが原因か?

 人垣が邪魔だな。どうする? 上を行く? 角度はどれくらいがちょうどいいだろうか?





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― 新着の感想 ―
[一言] ジャンプしてまた地面に刺さるのかな( ˘ω˘ )
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