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249、にらみ合い

 もうさ、なんか俺どこから間違えているのか分からないよ。


 今回のこの生意気スタイルは相手を突き放す事で同族意識を持たせないためのモノだ。

 ここに長居はするつもりはないし、長居する場合は神様スタイルになるだろう。

 指導者や神様みたいな立ち位置が無難で、下手に紛れ込むと貞操的な意味で危険な気がする。


 文明的な環境であればここまでの忌避感はないのだろう。

 汚いと認識させるモノが多過ぎる。それがこの方針を立てた理由だと思われる。

 少なくとも他の綺麗な都市の時は驕り高ぶる振舞いをしない。

 これは俺の本意というより、環境に対しての反応なのだろう。言い訳が過ぎるな。


「……敵にはならない、お前にとって俺たちは取るに足らない存在だと言いたいのか?」


 言葉を強くすればそうなるだろう。

 この身をどうにかするつもりなら溶岩の海に沈めるとかしないといけないだろう。

 それでどうにかなる保障もない。脱出までにエネルギー切れを起こさせる必要がある。

 それが出来る状況や環境がなければ基本的に無意味だ。


 それこそあの神様みたいに器を壊すとか、そういう理外の事を出来る相手以外は大丈夫。

 そういえばあの神様の言葉、実際に出来たのだろうか? 試すわけにもいかないし、何とも言えない。

 自分の作った理だから何でも出来るっていう可能性はあるか。それは否定できない。


 神様に対抗するには自分で体を設計して、分解など出来ないモノを作る必要があるのだろうか?

 それを行うためには魔力の仕組みをもっと詳しく知らないといけないんだよな。

 それをするにはやはり安定した実験施設が必要になるだろう。

 さらにその仕組みを知られない様にするために、神様向けの監視対策をしないといけない。きついわ。


 どういう条件で神様が関われなくなるか分からないし、そもそも魔力そのものが神様の手先の可能性。

 この分野で相手が十歩二十歩前を行っている。別の方法で超えないと神様を越えられないか?

 魔法に対してだから物理で上回る? より大きな物理に負けるな、人間サイズから変えたくないし。


「俺に物理や魔法で傷をつける事ができないからな」


 地味な精神攻撃はめっちゃ食らうけど。

 小さいヤツだと反撃の仕方にめっちゃ困るけど。

 それが悪気ないヤツだとどう行動を起こすべきかも悩むけど。


 ここら辺、本当に弱いよな。後先を考える程に行動に慎重になってしまう。

 後先を考えないでいいなら楽だけど、それが出来る程の度胸がない。ほんと度胸がない。

 向こう見ずな鈍感さ、躊躇いなく踏み込める度胸、被害を甘んじて受け入れる器が足りない。

 八方美人になりたがる。出来やしないのに。結果は四面楚歌。


 どこか妥協して整えるのがいいのだろうが、妥協しても大丈夫な落としどころがわからない。

 今までで一番妥協しても大丈夫そうなポイントだったのはリク君のところだった気がする。

 どこもかしこも一度は腰を下ろそうかとは思ってはいたんだけど、結局タイミングを逃したな。


「……そうか。ちょっと試してみてもいいか?」


 ……試す? どうやって試すのだろうか?

 魔法をぶつけられるなら問題ないんだが、ここって物理が優勢だろう。多分。

 殴るとかでも問題ない。斬られるのも問題ない。その程度で壊れるなら落下時点で壊れている。

 そういう試し方じゃなかった場合が怖い。


 臭い。そう臭いモノを押し付けられたら間違いなく手が出る。

 今、息を止めている……止めているよな? 吸気も呼気も起こしていないはずだ。

 指をちょっとだけなめても風を感じない。よし、息は止まっている。これで臭い対策も大丈夫だ。


 あとは何だ? 何がヤバい? セクハラ? それは腹パンするわ。ガチギレモードで。

 綺麗な風穴を開けられるかな? というチャレンジになるだろう。

 張り手にしたら手の形にお腹に穴が開くのだろうか? 気になるな。


「拳だろうが鈍器だろうが刃物だろうが魔法だろうが何でもいいが、撫でるとか変な事したら殺すぞ」


 ムダにどやりながら鼻を鳴らす。肺に入っていた息を捨てる事で体の不快感はさらに消せた。

 反射的に吸いたくなるところを我慢する。ちょっと抑えておけば息を止めている事も忘れるだろう。

 こういう事をすると自分が人間を辞めている事を実感し、人間に対して郷愁みたいなものを覚える。


 元から人間だと思えない癖に、人間である事を諦めきれないのが矛盾している。

 自分から捨てた人間の体が恋しいか、愚か者。捨ててもう何年だ? 10年以上経っているだろう。

 自己の認識出来ている期間だと1月もないかもしれない。だがリク君が大人になる程の時間が経つ。


 全く人の体をいつまで引きずっているんだ。もうないし、あったところで俺の事だ。意味がない。

 この痛みも感じない、興奮するとバカ力の制御も現状ままならない、化け物の体が嫌いか?

 見た目は不便だが、体自体には不満はないだろう。むしろこの体質じゃなければ何度も死んでいる。


「そんな事言われてもそんな見た目のヤツを殴れるか」


 まぁ、そういわれるだろう。というか衆人環視の中で子供の姿した何かを殴るのヤバいだろう。

 この見た目で化け物だと言ったところで、自称化け物にしか見られないか。

 どこか化け物らしい崩れがないとそういう殴ってもいいという免罪符はないか。


 見るからに悪い事をしたヤツ。見るからに化け物。何かしらの不快感を覚えるモノ。

 殴られても仕方がないという納得できる理由があれば、相手の暴力を認めてしまう。

 こういう考えが頭に浮かぶ。正義という名のおもちゃはいとも簡単に作れて、いとも簡単に振るえる。


 変な液体を吐いたり、地面に切り傷を作っても、まだ崩れは足りない?

 少なくとも人間に出せる量を越えた液体を出していたぞ? 臭かったし。

 足元の感じを見る限り、2、3リットルは出ている。もしかしたらそれ以上。

 人だとしたら脱水で死んでいるだろうな。


 魔法の世界の住人はそれ以上の水を出せるからおかしいと思えない?

 魔法で出来る事をある程度知っていても自分ではできないから、魔法なら出来るだろうと思っている?

 結果的に多少の不思議も魔法が影響しているのだろうと納得してしまう? 可能性がある。


「いいヤツなんだな」


 あぁ、さっさと化け物認定をしてくれたら話は早いのに。それも難しい話か。

 余程倫理観に欠けているヤツじゃなければそんな思考は出来ないだろう。

 この世界が都市で人口制限をしているとして……。


 成人になったら都市の住民権を失う? 一律で追放?

 自分の住民権を獲得するためには何かしらの手段で功を成す必要がある?

 成人するまでの間にポイントを稼ぎきれなかったからここにいるとか?


 ポイント制か。その方が考えやすい。身なりの割に倫理観がしっかりしている気がするし。

 暴力上等のスラムみたいなところで育ったら今のタイミングで絶対に殴っているだろう。

 上位何名かしかその都市では成人前に都市への住民権が確保できないなら、都市に住める程の教養や財力があるとすると、自分の子供を路頭に迷わせないようにしっかり教育する事だろう。


「いいヤツか。……いいヤツね」


 おっさんは微笑みつつ、何か思った事を捨てる様に息を吐いた。意味深反応が過ぎる。


 なんだ? 親友に裏切られたか? いや、違うな。そういう顔じゃない。

 何かを諦めて、代わりに救った相手がいるのだろうか? 見た感じ、他の人とは顔が違うし。

 本来は都市に残れた側の人だが、好きな相手のために住民権を捨てて、外を選んだのかもしれない。

 自己犠牲をバカだと思いつつも、惚れた弱みでしてしまったかな? 分からないけど。


 周りの連中はどこか負け癖がついている顔をしている。競争社会においての弱者だったのだろうか?

 否が応でも比較されて、劣等感を味わい続け、放逐された事で完全に心が折れた?

 外の世界は魔物が跳梁跋扈していると聞かされて、負けは死だというのに、負け続けて放逐?

 都市の周囲で過ごされると魔物が集まってくるからと都市の周辺から追いやられるのもプラスか?

 そこまでされたら心は折れるだろうな。


 分からんけど。


「まぁ、どうせ止められないからどうでもいいけど、話がないなら俺は散策しているから」


 







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― 新着の感想 ―
[一言] 不器用な奴だと認識されたかな?
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