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248、話し合い?

 足元の透明な液体が辺りにラベンダーの匂いを広げていく。


 これさ、自分の口から出たモノだから、ヨダレの池と言えるよな。すごく嫌な気分。

 口内細菌は……こんなモノが出る口内に生息できる根性ある細菌いたらビビるわ。

 まぁ、でも唾液という消化液とかそういうの中で生きている細菌もいるし普通か。


 この池の中央に立っているお陰で臭気から解放されているのが何よりも救いか。

 着地の衝撃と予想外の状況のお陰で臭いから解放されていた時間が既に懐かしい。

 ラベンダー臭が強くて息がしにくいが、それでも集落の臭気に比べれば息が出来る。


 感覚のオーバーフローを意図的に起こして、嗅覚など特定の感覚を一時的にマヒさせられたら楽だ。

 しかしそんな器用な事、練習もしていない現在出来るわけがない。

 感覚の処理能力の低さが功を奏し、一時的なマヒはたまに起こるだろうが、意図的にはムリだ。


「お、おい……大丈夫か?」


 臭いがひどすぎてダメに決まっているだろうが!

 こんなに吐いているのをなんでだと思っているんだ!

 ラベンダー臭もひどすぎてきついんじゃ! 自分のもダメージ食らっているんじゃバカ!


 掃除。そう掃除が必要なんだ。

 もしかしたらこの臭さは野生動物避けかもしれない。

 例えそうだとしてもきつすぎる。


 どうすれば文化レベルを上げられる?

 これが最適解として生活が回っていたりする?

 そもそもここの物流はどうなっている?


「大丈夫じゃない」


 見た感じ生活環境が分からない。

 食料はどうやって確保している? 狩猟か?

 植物関係は採集か? 畑の類は確認できるところに見つからない。


 狩猟だとして、目の前の男は狩り頭とかそんな立ち位置だろうか?

 近くの男は狩りのグループ? 見た感じ、男しかいないが、生き残れなかったとかか?

 魔力量が低いからとかで追い出された人が多い場合、筋力が正義の社会になるのだろうか?


 筋力が正義なら俺は群れの序列一位になれるな。群れ言うな。

 男女関係なくいるとしたら、女性は家屋の中にいるのだろうか?

 兵隊としての、武力存在としての男が前に出ていると思えば適当なのか?


「休むか?」


 どこでだよ! この臭いから離れられるのは距離取った場所だけだろ!

 消臭剤をぶちまけてやろうか! バカ! 体洗え! バカ! バカ! バカ!

 泣きたい気持ちがすごい事になってるよ……、ほんと。


 逃避行、生き残るため、助けるため、前は動機あってのだったけど今回は違う。

 自身の欲で何かしたいと思ったけど臭いがきついんだよ、バカ。

 鼻がいいとは思っていない俺がきついんだ。鼻のいい獣は死ぬぞ! 体臭で!


 水か? 安定して水が確保できない環境なんじゃないだろうか?

 いや、しかし生きる以上、ある程度水が確保出来なければ生活の拠点として成り立たない。

 体を洗う程の水がないという事だろうか? 可能性が高いな。


「俺は行く。寄るんじゃない。臭い!」


 池を軽く蹴り歩く場所を確保する。臭いが中和? されたところを進むと他の場所よりも楽だった。

 汚染地帯が過ぎる。落下の衝撃で感覚が麻痺してなかったらこんなに長居してなかった!

 数分も経っていないと思うけど十分長い! 吐き気を催す腐臭が辛い……。


 ここ出たらどうしようか? 利用価値について考えてたけど、利用するには臭すぎる。

 利用するために長く付き合う? あの臭さに? 本気で言っている? ムリだろ。

 あいつら全員を洗う事が出来るか? 俺は絶対に触りたくないぞ? ムリだ!


 臭いが付近の野生動物から避けられる要因になっているとしたら彼らから鎧を奪う様なモノだ。

 肉食の動物の肉は臭いが草食動物の肉は臭みが少なく美味しいという。雑食? そこそこなのでは?

 この臭いが原因で動物から避けられた場合、狩猟は出来ないし、採集中心の食性になるだろう。


「ガキ。お前は何だ」


 この男が衣服をあまり着ていないのは服を洗う程の水がないから、狩猟の時臭いが邪魔になるとかか?

 狩猟用の装束は動物臭を漂わせたいが、生活臭をつけたくない? イノシシの皮とかを被るとか?

 よく見ると男の肌は大して汚れてないな。垢で黒ずんだりはしていない。ただ毛深いだけだ。


 土くれがついている? 泥だったモノか? 泥を体に擦り付けて乾燥と合わせて垢を落とす?

 そんな動物みたいな体の洗い方をするだろうか? ゾウとかサイとかならあり得るけどさ。

 いや、水が少なかったからそういった動物を参考に体を洗う様になった? 洗ったにしては臭い!


 全員が全員そういう洗い方をしているわけではない?

 筋肉量が少ないというか、贅肉が多いヤツ程垢で黒くなっている様に見える。

 追放されたばかりで、こういうタイプの洗い方をしたがらない連中がそうなっている可能性?


「おっさん、お前は自分が何か言えるのか?」


 垢で黒いヤツ程今着ている服が文明的というか既製品というか、ハンドメイド感が薄い……気がする。

 火事で焼け出された人をテレビ的な演出で表現した時の服が近い? 脂で嫌なテカリ方をしている。

 追い出された事を受け入れきれない人がそういう人なのだろうか? 分からない。


 自分の臭いって自分が一番分からないモノだし、臭いは慣れてしまうモノだ。

 1人が自分の体の洗い方を見つけても、この集落には臭いはあり続ける。

 体を洗っているヤツがいたところで、体を洗っているヤツでも臭いが分からないだろう。たぶん。


 人数がいないと狩猟とかやるのが辛いと感じてたら、今は役立たずでも囲わないときついだろう。

 それに追放された事のあるヤツしかここにいないとしたら、感情の整理がつかない理由も分かるか。

 だとすれば無理に体に纏っているモノを剥ぐ事はしないのだろう。労働は適度に任せるだろうが。


「ガキが……。俺はガラだ。この集落で主に狩猟を担当している」


 あー。うん。そっか、普通はそう答えるよな。組成云々だとか言い始めたら大分やばい。

 水35L、炭素20キロとか言い出しても大分やばい。あとそれは転生者が言いそうだ。

 自分の所属を聞いていると思うのが筋だろう。


 俺は……なんと言えばいいんだ? この場合? 所属しているところなんてないしな。

 どこから来たも、どこを言えばいいか分からない。空? 違うし、リク君の役職も知らん。

 こんな不思議な体を人間と言い張るのはムリだし、男でも女とも言えない体だ。


 魔物かと言われたら違うだろう。ゴーレム? この体はゴーレムと言っていいかも分からない。

 神の類でもなく、化け物というのも厳しいのではないだろうか?

 いや、化け物の定義は曖昧だし、具体的なモノを指しているわけじゃないなら入れてもいいのか?


「そうなのか。俺はシロ。ただのきれい好きの化け物だ」


 きれい好き。まぁ、うん、間違いはないだろう。

 何もなければ掃除したり、整理整頓をしているし。

 整った状態が好きなのも間違いない。思考は取っ散らかっているけど。


 きれい好きを自称する化け物ってヤバい存在が多いがそこは置いておこう。

 人に向かってきれい好き言う化け物って、人を汚物だと思っているヤツだよな。

 殺人狂の化け物だろ。普通。このパターンは。本当にきれい好きの化け物が見てみたい。


 辺りに散った消臭剤が悪臭を払いながら領域を拡大させていく。

 濃すぎるラベンダーの香りが薄まり、息がしやすくなっている。

 というかそもそも呼吸を止めてればいいのに、止めなかった俺が悪いな。

 中途半端に生物である認識が不必要な動作を起こしてしまっている。


「ガキ。お前は敵か?」


 息を止めろ。呼吸をするな。俺に呼吸は必要ない。

 不快なモノを体内に入れるのをやめろ。

 そもそもこの毒物みたいな空気、俺には毒にならないだろ。


 毒じゃなくても不快なモノを体内に入れるのは嫌だ。

 この吐き気はただの不快感からの過剰反応。

 戦闘でただ臭いだけの異臭を避けて、守るべき対象に被害を出すのか?


 守るべき対象。その場において守った方が後々の好感度が高いものだ。

 偽善者の愚かしい行動。自分の未来のために命がけ。それは他人のためではない。

 自分が嫌いで、でも苦しみたくない。心地よい空間が欲しい。そのための愚行。

 やっぱりバカだ。


「おっさん。なんで敵になれると思っているんだ?」


 俺はなんでこんなに煽っているんだ? いや、まぁ、メリットはあるんだけど。

 なんかガキガキ言われたせいか、頭の中にクソガキ湧いている気がする。

 このクソガキ、自己評価高すぎだし、自己中極まりないだろ。

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[一言] シロ「がるるるる」
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