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24、ニキさん

 ニキさんと過ごす夜は気づけば過ぎていた。

 朝ご飯とトイレを済ませ、ニキさんはイスと机を外に運びだし車の陰で読書を始めた。

 乳母車からイスの上に置かれた俺は辺りを見回して1つ1つ確認していった。


 朝、まだ日も高くない頃合いの空気は涼やかで草木の匂いが美味しい。

 日陰にいるため赤子の肌には厳しい紫外線も届かない。

 車の停まっている辺りは車を停めるための広場のようで、ニキさんの車とは違う車も多数あった。


 車。そう車である。あの動力は何なのかもわからない、あの車の全貌が今初めて拝めたのだ。


 車輪はある。しかし馬をつけるような場所は見当たらない。

 動力は動物ではなさそうだ。


 車体は角ばっている。直方体だ。

 薄緑色の表面には光沢はない。

 軍隊のトラック。それが一番形容して近いものだろうか?

 周囲に溶け込みやすく、目立たない。


 行商は外郭と王都に物資を運ぶのが仕事。

 物資を運び込みその都市の商人に売りつけるのだ。

 行商が売り込みに行くのは都市の商人であって、都市の住人ではない。

 だから目立つ必要はそこまでない。

 むしろ都市から都市へと行く道中に襲われることを警戒し車は目立たないようにする。


 ってニキさんが言ってた。


 でニキさんがここで読書している理由は


「ニキさん! ニキさん! 来てやったぜ!」

「遅いですよ、ケイさん」

「いやぁ、わりーわりー。ちょっといろいろ声かけてたら遅くなってな」

「ほぅ……? 誰に声かけたんですか?」

「火竜」

「火竜……? もしかして3年前の?」

「おうよっ! 話したかったんだろ?」

「いいんですか?」


 待ち合わせだ。

 お酒は各自で持ち寄り、場所はここで。

 車から降ろしてきた机やイスに溜まり、男2人は雑談を始めるのだった。

 今何してるという近況報告、近況報告の延長線上の世間話。


 聞いたことのない単語が多くて単語の意味を予想できない。

 語感からして、人名だとか場所だとか物だとか、名詞だとは思うのだけれど、何が何をさすのか理解できないためまるで理解ができなかった。


 赤子に向けてゆっくりしゃっべてるならまだしも、あれどうだった? これどうだった? いいねぇ! を矢継ぎ早に話していたら知らない単語で飽和して頭が追い付かないんや……。

 お酒が入った影響なのか、どんどん会話のスピードが上がっていく。

 言語チートぷりーずっ!


 ニキさん、ケイさんが話しているところに若い男達3人がやってきた。

 革の鎧をまとい、背中には槍を背負い、腰には小刀を携えた男達だ。

 ごつい体つきをしている人は大きな盾を亀のように背負い、細身の人は腰にたくさんの袋をつけて、最後の1人は指輪をたくさんつけていた。

 ケイさんが彼らに対して親し気な態度をみせニキさんに紹介をしているところから、彼らが火竜とよばれた一団なのだろう。


 ニキさんは柔和な態度で軽く酒を酌み交わし雑談をしていく。

 しかし相も変わらず世間話なのか知らない単語が多くて会話の仔細を把握できない。

 ニキさんとケイさんの話のテンションにのまれて、火竜の一団も次第に態度が軟化しているのか、ぎこちなかった笑顔も自然な笑顔へと変わっていた。


 傍から見ていて思っていること。


 ニキさん恐いな。


 初対面のグループを懐柔し、つなぎをとりやすい状態へと変えていく。

 もしここで依頼事を頼んだとしたら仕事の関係となって1度限りの出会いになっていたことだろう。

 でも親睦を選び今回はたぶん依頼事をしない。

 アドレスみたいなものを交換し伝手を広げていくだろう。

 彼らが必要としているものがあった時取引を行うようになればその関係はさらに強くなる。

 そしてニキさんが頼みたいことがあった時多少面倒なことでも縁を残したいと思うならその依頼に応えてくれるだろう。


 たぶんこういう手法でいくんじゃないかと思う。

 買い物の時とか、ケイさんがセッティングした今回の席のように。


 手慣れているのだろう。

 きっと意識しなくても出来るほどに。


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