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221、リク君への感情とは

「このゴリラにしてもカメラに収められたのもつい最近なんだ。これ、ネネが撮ってきてくれたんだよ?」


 ネネ。ハチドリのゴーレム。いつも胸元に収まっている甘えん坊。

 あの子は分類的にはショタなのだろうか? ボーイッシュな女の子の可能性?

 ……まぁ、性別とか気にしてもしょうがないな。性別聞かれたら俺自身が意味わからないし。


 でもあの子そういう事できる子だったんだ。

 確かあの子のコンセプトは目としての偵察とワイヤー設置による移動補助だった気がする。

 カメラ機能は後付けだろうか? 現像とかデータ送信とか難しそうだな。


 ゴーレムも魔道具の一種だと思うが、複合機能がウリだよな。

 複合の結果、人格を宿せる程複雑化した魔道具とも言えるだろう。

 最初に着けなかったとはいえ、後からつけるのはたぶん訳ない話だ。


「あの子が?」


 そもそもネネは甘えん坊? なのか、ずっと離れなかった覚えがある分不思議だ。

 いや、人格があるモノに命令はしたくないから、しなかった俺がダメなのか?

 だがしかしメリットデメリット伝えた上でやってもらうならともかく、命令はしたくない。


 お願いの形をとっても立ち位置的に逆らう事がダメに見えるポジションは嫌いだ。

 何かしら相手が引け目を感じるところにいるのも苦手だ。フェアじゃない。

 いや、フェアじゃない事がじゃない。逆らえない事を分かっていながらやる事が嫌なんだ。


 俺がネネに、ニーナに何かを言う事が命令につながると思った。だからしなかったに過ぎない。

 俺はしなかったとして、リク君がしない可能性はないか。お願いの形を取るだろうがね。

 いや、リク君なら命令をしたとしても相手が気持ちよく動かせるのかもしれない。


「ネネはシロがいなくなってからずっと寂しがってたんだ。だからかな? あっちこっち色々なところに行って探していたみたい」


 げふ。


 え、何を応えれば正解? 分からないんだが。

 それを言われたところで俺にはどうしようもない。

 というか俺ってそんなに思われる存在だろうか? ないない。


 何が取るべき行動か、いつだって迷う。

 迷って選んだ結果は大概微妙なモノになる。利益は薄いし被害もある。

 それでどうして近くに居たいと思う? 分からない。


 まぁ、うん。好かれていたとしてもそこまで混乱する事じゃないな。

 これは恋愛感情とかではないだろうし、恋愛感情とかだとしても別に気にする程のモノじゃない。

 対応は結論変わらないから。付き合ったとしても俺って対応を変える程やる事変わらない気がするし。


「そうなのか」


 心的距離で多少対応は変わるかもしれないが、恋愛感情に付け込んで何かを押し付けるのは嫌いだ。

 これはフェアプレイ精神とかではなく、俺がやられたら嫌だからが強いだろう。

 そもそも恋愛的な意味で俺が人が好きになるか、そこからして怪しいが。


 心的距離が近くなるとどうなるか? 今のリク君的な状況になるのか?

 切り捨てる事も流す事も上手く出来ず、ズルズルと付き合ってしまうヤツ?

 それはそれで面倒くさいな。もやもやする関係だ。


 まぁ、結局は他人だ。他人は他人なのだ。

 どんなに共通点があったとしても、同じ考えをするわけではない。

 そこを混同しだすとおかしくなるというもの。


「あの子ちょこちょこ怒った魔物の前に出て魔法を受けて補給とかしてたんだ。小さいし速いからそれで国1周とかも出来ちゃってビックリしたよ」


 ……それは……なんて言えばいいんだろうか? なんかズルい。

 大人の握り拳にも満たないサイズだからか? え、いいな。羨ましい。

 無用に殺生しなくても生きられるし、それで世界を見て周る事も出来るとか、それ俺もしたい。


 そんな風に動けたらどんなに気楽だったかな。分からない。

 結局のところ俺は何もできなかった以上、ただのゴミと同じだろう。

 ほんと魔力ばかり食って、何かの保険になったわけでもない、社会の役に立たないヤツだ。


 社会の役に立ちたいのか? 何故? 分からない。

 社会は人間のためのモノだ。人間と自分を思いたいからそこに行きたいのか?

 かもしれない。かもしれないがそれを否定する意味もまたないか。


「いいな」


 俺の出した声は俺が思っていたよりも冷たい響きだった。

 嫉妬成分が多分に混ざってしまった。ちょっとびっくりする。

 混ぜる必要のない感情なんだ。要らない感情でもある。


 嫉妬。適わない事が分かっていながら届かないモノへ届いた人を妬む感情。7つの大罪の1つだ。

 大罪と言ったところで、その感情がない世界はいつか破綻するからなければならない感情だ。

 だが今この段階で必要だとは思わない。


 あぁ、取り繕ったところで無意味だ。

 どうせ俺は心に暗いモノがたくさん落ちている。

 どんなにいい面をさげようとそこは変わりはしない。


「でしょ? あの子が居てくれたから、遅くなっちゃったけど僕は君を見つけられた」


 花が綻ぶ様に笑う。リク君はほんと綺麗に優しく笑う。

 ほんと俺みたいなどうしようもないヤツを支えようとしてくれている。

 そこに暗い感情はたぶんないのだろう。


 俺はろくなヤツだとは思えない。何も出来ていないから。

 なのにどうしてこんなに優しい? 意味が分からない。

 成果を出せない大喰らいだし、ムチャした結果損害が大きいし……。


 あぁ、何でこんなに闇が出てくるんだろ?

 光属性を相手にしているからか。光が強ければ闇もまた濃くなるってか。

 闇を相手にしていると俺の中にも光が出てくると思うし。


「そうなんだ」


 生き返ってしまったモノはしょうがない。

 生き返る事に肯定も否定もない。

 いや、ようやく眠る事が出来たという意味では悲しいか。


 もし生き返るのが数億年後とかだとしたらどうなっていたんだろうか?

 その時に人はいるのだろうか? いないとしたら何が世界を闊歩しているのだろう?

 ちょっとその世界を見てみたくある。


 声を出すとムダに隠してしまう思いの欠片がこぼれていく。

 こぼれる感情の欠片を適当に繋ぐと元の感情の存在とは違う歪なモノになる事がある。

 相手が恋愛感情を持っているとか考えるストーカーとかけっこうな場合好き勝手な解釈をしてしまう。


「うん」


 あーもぅ。大人みたいな顔をしてなんでこんなに子供みたいに幸せそうに笑うんだ?

 無垢さがズルい。なんかイヌみを感じてきた。嬉しい事があるとほんわかする雰囲気出すところとか。

 タンポポとか辺りに咲き乱れていそうな笑い方しやがって! くそぅ!


 そもそも俺はリク君に何を思っているんだ?

 親近感を覚えている? 敵対心を抱いている? 光属性で近寄り難く思っている? 簡単に言えない。

 疎んでいる? 問答無用で嫌い? そういうわけじゃないよな。


 好きか嫌いかで言えばたぶん好きなのだろう。

 好意的な部類の人間だとは思っている。だがたぶんそれでお終いだろう。

 俺は好きだからと言って近づくわけではないし。関わっているから関わっているみたいなもんだ。


「よかったな」


 自由意思に任せて近寄るモノは基本拒まず追わず。

 まぁ、苦手なタイプは避けるけど、それは自衛の内か。

 ここがおかしいのかもしれない。


 そもそも今リク君に見せている感情の切れ端は全て嫌っている事を示していると思う。

 行為に対しては怒っていたが、個人に対しては何の意識も向けていない気がする。

 根本的に嫌ってはいないのだろう。元は自分の体だったから複雑なだけで。


 嫌っていないと伝えるべきだろうか? 今後の先の状況は未だ分からない。

 この不明な状況で嫌われていると思われているのは最悪の結末に繋がる危険性がある。

 そう思えばちゃんとやった事について怒っただけで、嫌いじゃないよと言うべきか。


「うん、ほんとよかった」


 だからその顔はズルい。


「艦長。お楽しみところ悪いが出番だ」


 誰だ!?



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― 新着の感想 ―
[一言] ネネ……シロが脱走することになった一番大きな切っ掛け……。
[一言] 艦長だったのか(゜ω゜)
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