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220、名前とか

 図鑑を見る。


 見る。


 見る。


 ザラっとプレビューを見ると、少しずつ知っているフォルムが混ざっている。

 でもそれらはサイズがおかしいモノが大多数。生態に至ってはもっとおかしい。

 大きさが変われば生態も変わるのは自然かもしれない。


 だが共通して魔物と呼ばれる生き物には生殖の項目がない。

 魔物はどうやって増えるのかが分からない。

 空気から生まれるとでも言うのか? 意味が分からない。


 キリンは英語でジラフだが、それを異世界語で当てはまるモノを言えと言われても分かるか。

 シマウマのゼブラとかもそうだが動物の名称は独特過ぎる。見た目そのままの名前はたまにあって楽。

 脳内辞書はとりあえず適当な翻訳をつけて図鑑に載っている動物の名前を記録する。


 ……これさ、実は学名で記載とかそんな罠……あるな。これは一般向けではなさそうな図鑑だし。

 ニシローランドゴリラが ゴリラゴリラゴリラ だったっけ?

 ゴリラって言おうとして ゴリラゴリラゴリラ とか言っていた不具合とか起きたら恥ずかしすぎる。


 しかしどうやって聞く? ゴリラゴリラゴリラって普通の人は何て言うって聞くのか?

 それはなかなか恥ずかしいな。学名じゃなくてとか言い出すとなおややこしくなる。

 そもそも学名という区分があるのかも分からない。


 そもそも学名と和名の差異が難しいし、そこからしてなんも言えなくなる。

 発見した人の名前がついたり、よく分からない言葉がついたりもするしなぁ。

 生息地とか種的な親戚関係の名前がついていたりするのはまだ分別がつくか。


 この世界ってDNAは確認できるんだろうか?

 塩基配列で生物の縁戚関係を調べると「実は見た目がほとんど違うこの生物が意外と近い縁戚だったんです!」みたいな事も分かる。

 さすがにそれは出来ない? いや、科学力を考えると出来ない方がおかしいか。


 動物に詳しい転生者がいれば、いやそうじゃなくても顕微技術は重要になる。

 大きな設備は場所を取るし、管理の手間や素材も増えるから、機材のコンパクト化は必然。

 小さければ小さい程小回りが利いて便利になるしな。


 塩基配列データとかの記載は……さすがにないか。

 というか1つの生物の塩基配列データだけでもやばいデータ量になるよな。

 似たフォルムっていう括りでソートしたりできるだけでも便利過ぎるし、色々容量食っていそう。


「何か面白いの居た?」


 ニコニコ。


 とんでもなく笑顔だ。これ以上となく幸せそうだ。

 なんか後ろに白い花。たしかマーガレットというんだったか、真ん中の花芯? が黄色で、花占いがやりやすそうな花びらの花。少女漫画で表紙によく使われるその花が咲いている様に見える。

 なんていうかここ少女漫画の世界だったかな? とか思う感じの笑顔だ。

 唇の隙間からちょっと見える白い歯とかなんかやたらキラキラしている気がする。


 俺はいったい何を考えているんだ? 意味が分からない。


「これとか」


 なんか適当に指してしまったのはゴリラだった。他意はない。


 いやね? 類人猿って存在がいろいろ不思議じゃん? 生物の進化的に抜きにはできないし?

 そもそもこの世界はどんな進化の流れをしているのか、全くといって読めないんだ。

 少なくとも人間と植物は生殖活動をしているのは間違いない。リク君の存在や学園での栽培施設とか参考するとそこは間違いない。


 でもそれ以外はどうなのかがまるで分からない。


 野菜はなんかそこそこ見かけるが、肉類は記憶に薄い。

 動物性たんぱく質ってどうやって確保しているのだろうか?

 代替の栄養素はあっても、完璧な代用には至らないはず。


 ニーナを作った時のどよめきって、知るはずのない生き物を知っていたからの可能性?

 転生者だと思ったにしては反応がおかしい? いや、そもそも犬自体存在を知らない?

 魔物はいても家禽の類がいないから、基本的に敵性個体であるためどよめいた?


 どういう思考で俺のゴーレムを見ていたか、色々とわからない。

 そもそもゴーレムを作るとしても動物型は色々と迂闊過ぎて、あの時の俺がどんだけテンパっていたか分かるというもの。

 神獣とか言い出した時も意味わからない癖にろくに考えていなかった。


「あーゴリラね」


 ゴリラ。うん、これがゴリラを示す発音。学名と思しき文字列の頭の部分と一致。

 種族を表す部分が1番前に来る法則があるのだろうか?

 そしたら後ろは何になる? 生息地域とかか? 形状の可能性もあるか。


 トゲアリトゲナシトゲトゲとかみたいなパターンはややこしい。

 トゲアリトゲナシトゲトゲは……あれはややこしい……。

 トゲトゲという全身トゲトゲの虫、それのトゲナシバージョンが見つかりトゲナシトゲトゲ。

 トゲナシトゲトゲに一部だけトゲが生えたのがトゲアリトゲナシトゲトゲ……。

 さぁ、今トゲを何回言ったかな? 俺は数える気がない! ゲシュタルト崩壊が起きる!


 まぁ、こんな感じで種族を調べていくうちに親戚の名前がたくさんついちゃうヤツもいる。

 ピカソの本名とかむっちゃくちゃ長くて覚えられなかったがあんな感じだ。

 あー、リク君が言ったヤツが一般名であって欲しいなぁ……。


「ゴリラがどう面白いの?」


 は? え? これはどう答えれば正解なん?

 どういう意図? どこを伝えればいい?

 自分に素直に言ったらまず相手が理解出来なくなるだろ。


 相手の理解度に合わせて説明する事はコミュニケーションの基本だと思う。

 足し算を習ったばかりの小学生に微分積分を説明するのが正しい事だと思うか?

 相手の理解度を探って、その上で理解しやすい様に伝える。それがきっと正しい事だと思う。


 ニコニコ笑っている。ニコニコ笑っているリク君は現状をどの様に認識しているのだろう?

 少なくともこれを提示した以上、ある程度の知識はあると思う。

 しかしどの程度の知識があるか分からない。どう探ればいい?


 そんな事やった事がない。そこまでの対人経験が俺にあると思うな!

 俺の知識の大半はたいてい本由来だぞ! 本しか読んでいないんだ!

 そして物語でそんな探りはたいてい省略されるんや……。

 やるという事は知っていても、結論だけ手元に出てくるんや……。


「リク君はこの図鑑をどの様に思う?」


 ……。これでいいのか? わからん。

 何か探偵が事情を知らない助手に話を始める時によく使う構文だよな。これ。

 これで大抵助手君はとんちんかんな事、一般的感性で思いつく事を言うわけだ。


 何かを開示する際、探偵は事情が分からない相手に理解出来る様に話す。

 推理小説の探偵になりきれば解説のプロになれるのでは? なんかそんな気がしてきた。

 よし、リクソン君。紅茶を1杯もらえるかな? あぁ、ブランデーを少し垂らしてくれたまえ。


 提示の順番はどうする?

 リク君に違和感を覚えてもらえるポイントをまず提示しないといけない。

 魔物の殖え方が切り口か。


「まとめ始めたのが最近だから歴史としては微妙かな?」


 ……。ねぇ、探偵さん? 紅茶すすってないでどう答えればいいか教えてくれる?

 魔物の殖え方が書いていないのは調査の歴が浅く調べ切れていないからという事だろう。

 現状は種類を抑える事を重視している? その可能性が高いか。


 探偵。紅茶に入れたブランデーが多すぎるんじゃないかな? 顔が赤いぞ?

 種類を知る事。生息域などを調べるのは実生活においての危険性を下げるためか。

 実像が正確に記載される事が少ないとしても、民間伝承なども記載するのは編纂の歴史が浅いから実像が正確に判別がついていないからか?


 探偵。その灰色の脳みそをピンクになるまで血を巡らせてくれ。リク君向けの言葉が出ないんだ。

 殖え方の記載がない違和感は切り口にならない。それは自然な事だから。

 進化論を唱える以前の問題過ぎる。何も言えない。


「このゴリラにしてもカメラに収められたのもつい最近なんだ。これ、ネネが撮ってきてくれたんだよ?」



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― 新着の感想 ―
[一言] ネネさん誰だっけなぁ
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