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209、どう見ても外見はツンデレです、ありがとうございます()

「どんな人と?」


 考えてみると不思議だ。俺という不具合が入っていたというのに、真っ当に成長しているんだから。

 俺に普通の人付き合いが出来るかと想像したら意味が分かる。まず出来ない。

 出来ないからやってみたいんだが、出来ないと思うから不思議なんだ。


 若干の嫉妬心があるかもしれない。

 俺の声に冷たくて熱い何かが混じった気がする。

 同一存在だったという点で、妙な誤解が頭の中で広がっているかもしれない。

 同一存在だった。今は違う存在なのだから別人で間違いないというのに。


 バカな嫉妬心だ。


「楽しい人だよ。研究バカっていうヤツかな? ああしたらこうなるか? ってずっと計算しているんだよね」


 リク君は本当に幸せそうに笑った。


 きっと楽しい世界なんだろうな。どういう風に楽しいかは分からない。

 だが口ぶりからどんな相手と過ごしているか見える気がしてくる。

 それはきっと俺にとっても面白いと思える相手だとすら思えてくる。


 だがだからこそ。


 羨ましさが募っていく。


 どこで道を間違えたのだろう。


「よかったね」 


 絞り出す様に声が出てしまう。

 素直に祝福が出来ない。

 俺が悪い。


 勝手に身近に感じて。


 もっと離れた相手なら素直に祝福出来た事。


 でも今それが出来ない。


「うん、よかった」


 ほんと遠いところにいればよかった。

 そうしたら醜い自分を捨てられたのに。

 退廃的かもしれない。


 社会と繋がらなければ俺はきっと平和に生きられただろう。

 でもそれは出来ない。生きるためには思考を停止できない。

 無人島で誰かに干渉される事なく……なんて出来ないんだ。


 柔らかく微笑み、本当に幸せそうなリク君の顔に、俺は嫉妬を抑えられない。


「リク君はいい人に出会えたんだね」


 なんか面倒な彼女みたいな思考は終えないとだ。

 ヤンデレ彼女がウケるのはファンタジーだ。現実はドン引きだろう。

 職場で一緒になった先輩が寝てたら足首の腱を切られかけた話はなんか覚えている。


 その先輩、その事件の後も付き合っていたらしいけど別件で別れたんだとか。

 その事件を越える別れる理由ってなんだろう? って思っていたがついぞ聞き忘れていた。

 思うとあの職場、家賃とか色々渡していたら使い込まれた先輩とかいたな。

 女難の相が出てたのだろうか? あそこは不思議だったな。


 とにかく重い心は大して役に立たない。

 物語でならいいスパイスだが、現実だと害しかない。

 利害だけで決まる軽い関係は互いに気安いモノだ。


 ちょっと重いだけなら肯定感につながるかもしれない。

 しかし感情の重さを肯定感にするというのはとても不安定になる。

 その重さがないとダメなんて、相手にどれだけ依存したモノだろうか。


「そうだね」


 リク君は本当に幸せそうに笑う。


 こんな微笑みを浮かべられることが羨ましい。

 俺もこういう顔をして生きていきたい。

 そのためには重いを取っ払う必要があるだろう。

 思いじゃなくて重いだ。


 ……自分の課題点は見つけたが話題が消えた……!

 飛行船の大雑把な構造は見れば分かるが、それで合っているか確かめるべきか?

 いやしかし聞いたところで現状中途半端な知識にしかならないだろう。


 枝を拾ったところでそれを生かすのは難しい。

 葉っぱをつけるまでにどれだけの時間がかかるか。上手くいっても数年で枯れるのが関の山だ。

 根幹技術がしっかりしているからこそ技術は大木になる。

 ライターを拾ってもそれだけでは火をつける事しかできないんだ。


 ……そもそもムリに会話をする理由はあるのか? ないよな?

 これは逃げだな。事務的会話しか出来ないのは円滑な人間関係を築く上でダメなところだろう。

 嫌がらずに話をしてくれるリク君でないなら、俺みたいなめんどくさいヤツと話してくれないぞ。


 逃げるな。会話の経験値をこの機会に積め。

 頭を動かせ。独り言スキルしか伸びていないぞ。

 会話だ。会話をしなければならない。楽しい会話を!


 ……。


 ……。


 楽しい会話ってなんだろう。


 雲の上まで上昇して窓の外は綿あめの様にモコモコした絨毯が広がっている。


 思考がダメだ。


 会話が思いつかなさ過ぎて正面を向けない。


 なんだ? 楽しい会話って? そもそもそこが難しくないか?

 近況報告が楽しいと思える理由はお互いがお互いに興味を持っているからだろう?

 興味のある話題でも意識に上らない相手が話していたら何も思えないはずだ。

 下半身野郎が女性アカに凸っても相手にされないのがそれだな。


 ……。興味のある人であるのはリク君相手なら多少クリアしているはず。

 興味のあるっていうのが一番クリアしにくいところだから、そういう部分も踏まえて都合がいいんだ。

 興味のあるのクリアの仕方って知名度をあげるとか、相手が興味を持っているところで業績を出したりとかしないといけないわけだから、超面倒くさいんだ。

 席が隣でもわざわざ話に行く気が起きない人もいるわけだし、ちょっと身近に感じられる程度じゃ色々微妙なのだ。

 魅せプとかも微妙だし、本当に相手の嗜好とかが噛み合わないと、話が出来る間柄にはならない。


 ……。こんな事を考えても話題の切っ掛けにはならないんだ。

 脳内独り言スキルだけがレベル上昇し過ぎだ。

 俺が俺に向けて言っている一人ボケ突っ込みだぞ。悲しすぎる。


 まずリク君は何に興味を持っている? 分からない。

 業績的に理系なのか? いや、行動範囲を広げたかっただけかもしれない。

 理系でいうエンジェル的な立ち位置の可能性が高いか。お金を出す人の可能性。

 その場合見える成果に誇りを持つが、詳しい理屈はそこまで興味がない可能性が高い。


 俺はそういう意味ではどうなんだろうか? 1つに集中するタイプではないのは間違いない。

 色々な事に興味が出来て、適当にこんなのはどうだろうか? と探索するタイプだ。

 研究に手を出したら目の前の物に集中するだろうか? 経過を見ているところで待ち時間が出てきたら別の物に手が出てしまいそうだ。


 短時間でこれだけ思考があっちこっちに飛ぶんだ。そうなるに決まっている。

 ……。研究者に向いてないな。これは。ただアイデアだけ出して人に動いてもらうのが一番良さそう。

 動いてくれる相手がいるかが問題だけれど。現状はいないな。間違いない。


 単調な作業は意思無きゴーレムに任せるという手はあるか。いやだが、実験の大半は経過観察も重要になるだろう。

 秒単位で変わるならずっと見ていても退屈しないが、日月単位で変化するモノは変化がゆっくり過ぎてわからない。年や世紀単位だったらもはや忘れそうだ。

 思考が止められない以上、俺は待ち時間に耐えられない気がする。


 そういえばタマゴは発声器官がないから話せないだけとかないか? 意思無きゴーレムである保証はあるのか? 意思あるモノは相手の同意がない限り使いたくない。

 あぁ、意思の確認手段とかすごい面倒くさい。本当にそれが望んでいる事かも把握したいしな……。

 意思薄弱なヤツを騙して行動を強制させるのも大嫌いだ。心の弱みにつけ込む様で気持ちが悪いし。潔癖症が過ぎる。


 ぶっちゃけ意思薄弱なヤツって、流される事を望んでいるヤツもいる。

 人に方向性を定められるのは判断力が弱いヤツにはとっても心地良いらしいし。

 俺はその状態が無茶苦茶嫌いだが。自分の発展の可能性を閉じているわけだからな。


 意思を持って行動しろ。仕事は踏み台でいいんだよ。

 自分のやりたい事をやっている時が一番いい顔をしているんだ。

 ワガママであれ。俺が一番出来ていないがな! くそったれ!


 思考のまとまらなさに歯噛みしてしまう。

 横目にリク君の顔を見るとなんかニヨニヨって表現するべき顔をして見ていた。

 なんじゃコイツ。見ても面白いところなかろうが。


「何笑ってんの?」


 あぁ、顔に血が集まっている気がする。



 





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― 新着の感想 ―
[一言] その先輩にメッチャ可愛がられる可能性も微レ存( ˘ω˘ )
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