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194、ぶっちゃけてみる

「とりあえず分かった。シロちゃんが普通の子じゃないのは分かった」


 噛みしめる様に、自分に言い聞かせる様に、リドお姉さんは声を出した。

 色々判断が難しいのだろう。俺自身、こんなのが職場に転がり込んで来たら困る。

 ただでさえ人が転がり込んでくるのは事務的に面倒だというのに、訳ありにもほどがあるのだ。


「溶鉱炉に飛び込んでも溶けませんし、重量物がのしかかろうと壊れないし、重量があるモノも壊さずに運搬できるので、便利な重機みたいな感じでご利用可能です」


「よく分かった! よく分かったから!」


 リドお姉さんの息が荒い。ネタを突っ込みすぎたかな? 実際に出来るけど。

 見た目的に問題が出る案件か。しかしながらここら辺を言わないと俺は画面から出られないのでは?

 画面を意識しているウチはダメなのか。わからない。


「とりあえず部屋に行こうか。服とかも必要だからね」


 リドお姉さん、思考放棄に入った気がする。

 今は混乱が激しいから正常な判断が出来ないと考えたのかもしれない。

 出来る事をやっていく。それは仕事として考えた時正しい。


 分からない事で悩んでいたらいつまでも目の前のタスクが片付かない。

 それは汚机と同じだ。何がどこにあるか分からないから仕事が煩雑化して仕事が滞る。

 やっているうちに思考が整理されて、いい案が出てくるという事もある。


 先送りする事でいつまでも片付かない仕事と化す時もあるがな。


「わかりました。余裕が出来たらで構いませんが、出来たらここで働かせてくれると私としてもすごい助かります」


「あー、うん、分かったよ。出来たらね」


 リドお姉さんの視線が泳いでいる。断る理由を探している予感がする。

 某アニメ映画参考に「働かせてください!」と連呼する? あれ、大分迷惑じゃない?

 でもそうしないと働けない? あの世界ってもし働けなかったらブタになっていたのかな?


「お願いします。働かせてください」


 あの時あの子は何を考えてそう言ったのだろう? 信頼出来ると思った彼に言われたから遮二無二に?

 後先も考えてないだろうし、何の仕事をするのか、そもそもあそこが何の職場なのかも知らなかっただろう。

 俺もここが実際どんな仕事をしている場所なのか分からないし、言っている事は変わらないか。


「いや、ね? どういう風に話せばいいかな? 働くにも色々あるんだよね」


 リドお姉さん、すごいしどろもどろしている。

 やはり問題になるのは戸籍関係だろうか? 税金関係とかもややこしくなる。

 事務関係の手続きがダメなんだろうな。


「今のところ働く事そのものが目的なので、働かせてくれればそれで十分です。行く場所もないので住まわせてくれるととても助かります」


「いやいやいやいや。そういう問題じゃなくてね」


 なお焦られる。お金関係じゃなくて何が問題だろうか?

 心情的な問題だろうか? 家出少女を匿うのは世間的にイメージ悪いだろう。そこだろうか?

 身の上がややこしいから当初思い描いていた流れを使えなくなった?


「何が問題でしょうか? 私で改善できるモノはしますので。……子供みたくこうきゃぴきゃぴした方がいいですか? えへへ」


「恐いな、おい」


「ここまでぶっちゃけちゃいますと楽しくなりますね」


 ふざけすぎかもしれない。このままでは雇ってもらえなくなるかもしれない。

 どうしたらいいだろう? 多分今の流れだと雇ってはくれないだろう。面倒事でしかないからな。

 ただ最初期よりもマシかもしれない。


 心象的に言えば初めはプラスはプラスだけれど、保護児童を見るタイプだと思われる。

 仕事仲間にはまずなれないだろう。今はマイナスかもしれないが、そこを覆し仕事としてやっていける間柄に変えられる可能性がある。

 行政的に受け入れやすいカバーストーリーが出来ればもっとよし。


 俺の存在を考えるとロボットに人権があるかと同じ括りの話になりそうだ。

 どこ由来の知性なのか、転生者由来は行政回収案件になるなどあるだろうか?

 わからない。わからないがそれを怖がっていたら人間じゃなくなる可能性がある。


 人間、人間、人間って面倒くさいな。そもそも人間ってなんだよ。正解がわからない。

 答えのあるモノじゃないが、間違えはあるんだろう? すごい面倒くさい。

 今の俺は間違えていないだろうか? それすらわからない。


 この思考がそもそも人間として間違えている気がする。

 人間か、人間じゃないかなんてどんなお気持ち判定だよ。

 お気持ち過ぎて気味が悪い。君が悪い? 知っているよ。


 あぁ、寒。あまりの寒さに氷が出来るんじゃない? かき氷食べたい。


 なんかさ。考え方が掲示板の向こう側というか、事象に関係出来ない口だけの第三者じゃん。

 そりゃ人間じゃないわ。あぁ、もう今の俺が人間として成り立っていないのは理解している。

 口だけで実物が伴わない、虚心の化け物なんだよ。


 あぁ、ほんと解決方法が分からないこの始末。どうつければいいんだよ。

 出来る事ってなんだよ。行動ってどうするんだよ。

 わからないんだよ。


 心の重量だけが増していく。

 身の伴わない、虚ろな重さだ。

 見える事だけやってきた末路か。


「ちょいちょい! 何か他にも事情があるのかい? そんな闇を放出してさ」


 顔に出ていたのか。やばいな。

 放置したら徐々に闇を濃縮しているのヤバいヤツじゃん。

 ダメじゃん。やべぇヤツが過ぎるわ。


「あー、実は神様に人間にならないと2、3日で死ぬよ? みたいな事を言われまして。

 人間と言われても分からないですし、とりあえず働いたりしたら人間になれるかな? とか思ったんですよ。

 魔物に突っ込んで魔力奪って延命みたいな事は出来るんですけど、神様にそれ止めてって言われちゃいましたし、そんなこんなで割かし切羽詰まってます」


 ぶっちゃけこんなの話しても何にもならない。想像しにくい情報はぶち込む程判断が難しくなる。これを話す事で頭の整理は追いつかないが、切羽詰まった状況だけはフィーリングで理解出来るかな? 程度だ。

 それにこの話を話さない意味も特にない。最終手段として魔物に突っ込むという手は一応あるし。

 自分の領域でやるなっていう意味にも聞こえたし、適当な場所に向かって突っ走ればきっと生きていける。多分。活動停止前までに適当な魔物が見つからなかったら終わりだけど。


「ほんと君は情報量がおかしいな」


 頭をかきかき口をへの字にしてリドお姉さんはため息混じりに言葉を出した。

 情報の全てが(どうすりゃいいんだ?)を示しているのが分かる。

 窓から飛んできた段階である意味普通じゃないのは想像出来たと思うが、こんなヤツだとはまぁ想像できないよな。分かる。


 天空の島の王女でもここまで情報を抱えちゃいない。

 あれは立場や持ち物という意味で情報は多かったが、本人の持っている情報はそこまでなかった気がする。

 こちらは色んな意味で情報過多だぞ。誇れないな。


 とりあえずさらけ出してみた。ここまで来て後生大事に情報を抱え込んだところで少ししたら変死体だ。

 火葬しても燃えない、破壊も出来ない、腐りもしない不燃ごみか?

 もしかしたら魔力切れたらパラパラと粉になって崩れ去るか。現状の耐久力が魔力由来だとしたらその可能性が高そうだ。


「まぁ、私には時間がないのです。人間というよく分からないモノにならないといけないので」


 さてリドお姉さんはどうするだろうか?

 控えめに言ってリドお姉さんの立ち位置って主人公だな。

 こんな拾い物をするのどう考えても主人公だろう。


 まさか俺の今までって脇役のバックストーリーなのか?

 そう考えれば筋が通る物が多い……。しかしこんな厄介な脇役作り出す作者頭逝かれているな。

 そんなまさかか。いやでもしかしなんかそう見たらちょっと面白いな。


 前作主人公がリク君か? そして今作主人公がリドお姉さんだとして、クロスオーバーがあってもおかしくない。

 それはちょっと読んでみたい。俺の思考が省かれるわけだろう? リク君の無双の物語じゃないか。

 リドお姉さんの方は探索か? 神様に出会うまでの物語とかになるのでは? そう思えば楽しそうだ。


「とりあえず良く分からない。冗談じゃないんだろうけど、あたしには人間になる方法なんてわからないし、対応できないと思うぞ」


「あ、いや、まぁ、多分人間云々は内面的な事情だと思われるので、働いたりして社会的な生き方が出来れば何とかなるとは思うんです! お願いします! 働かせてください!」


 断られたらそこで試合終了、辺境ダッシュになるんだよ! 途中で粉になったらどうするんだ!

 夕日に向かって駆け抜けたところで誰も追いかけてくれないし、ただ虚しくお粉になるだけだろ!

 いっそ世界を道連れに爆散してやろうか?! きっと出来る! 多分出来る! いえすあいきゃん!


 拾った物は最後まで責任を持って! 押し売りゴメン!


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― 新着の感想 ―
[一言] リドお姉さんも大困惑
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