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185、投げられて空に

 眼下を過ぎていく緑。回転して空の青。あまりにも速すぎて森は緑のシートにしか見えない。

 この距離を走って行けば2日で行けるとか言ったのか。眠らずに動けるとはいえ、正気を疑うぞ。

 簡単に放り投げた様に見えたが、今時速何キロで飛ばされているのだろうか? そもそも着地できるのか?


 着地したいがちゃんと着地出来る姿をどうしても想像出来ない。よくて着弾だ。

 地上に大きなクレーターを作る事になりそうだ。何メートル級のクレーターが出来る事だろうか?

 あぁ、もうここは広いな。この速度で行っているのにいくら目を凝らしても行く手は緑だけだ。


 ポンチョのヒラヒラが風に押しつぶされてぺちゃんこになっている。

 台風の時と同じだなと呑気に考えてしまう。やはり他人事なんだろうか。

 目の前で起きていようと全て他人事。他人事だから「あ、そう」とほんとは軽く流せる。


 そう流せてしまう。本当に怖くて危機感を持って行動していたら、しなかった行動は多いのではないだろうか?

 間違いなく多いはずだ。本当に怖くてしたのはニーナの召喚の時くらいじゃないだろうか?

 あの時の暴走は間違いなく怖がっていたと思う。選択肢が他にもあったはずなのに、思考の段階にも上げず作り上げたのだから。


 そういえばネネの時の失敗も怖かった。予想していなかった事故だったから。

 今まで上手くやっていた分ショックは大きかった。あれもきっと本心だろう。

 他に俺の本心が出ていそうなところはあっただろうか? 今みたいにごまかしの仮面を被り続けていないだろうか?


 取り繕った感情が全て仮面だとしたら、俺は仮面で話している事になるだろう。

 痛みを伴わない経験は仮面しか作らないのだろうか? だとしたら俺は仮面を脱げないかもしれない。

 仮面を被ったままの俺では魔力を産生する何かに依存しないと生きられないのか。


 仮面はただのモノだもんな。生物たり得ない。


 仮面は見られる相手がいなければ無意味なモノだ。

 言い換えれば見られる相手に依存しているのだ。

 強烈な感情を持つ相手に対し依存し、本心を隠して接するためのモノだろう。


 仮面は何も生まない。仮面で作った関係は仮面に付随したモノであり、本体には何の縁もない。


 最後に本心から笑ったのはいつだろうか?


 ……。クマモフってた時だな。間違いない。意外と最近あったわ。


 アニマルセラピーかな。でも植物もいいんだよな。

 人間はおいておいて、動物や植物と戯れていればいいだろうか?

 神様に怒られそうだ。さっさと町に行けって。


 それにしても人間苦手過ぎないか?


 目の前の事だけではやっていけないからっていうのが一番大きなところなんだろうけどさ。

 だとしても人間と関わらないといけないっていうのがすごいハードルが高い。

 人間が嫌いなわけではないと思う。ただ不得手なだけだろう。


 精霊とか神様みたいな振る舞いをしておけばいいだろうなんてうっすら考えていたけど、痛いな。

 幼女の外見でおっさんが「私は精霊なんですよ!」とか考えるとすごい痛くて辛い。

 どうしようもなく痛くて辛い。これ以上の痛さはないんじゃないか? と思うくらいに辛い。


 おっさんと言って想像出来た姿が前世の自分の姿ではなく、髪の毛とか幸とか色々薄そうな顔をしたビール腹のおっさんだった。

 でもそんなおっさんでもちゃんと体格に見合った筋肉があるのだろうし、一瞬そこが羨ましく思えてしまった事に、自分が筋肉に対して本当に強い憧れがあるんだなと思う。

 筋肉に憧れ、動植物を愛で、本を読み続ける精霊のフリをした幼女風両性具有のゴーレム、ただし中身おっさんになりそうだ。こんなの情報の過積載だろ。小説どころかゲームにもいないぞ、こんなキャラ。


 まぁ、いいや。好きな事をしよう。抑える癖がリアルと意識を乖離させているんだ。


 そういう事なんだろう? 神様?


 全くもって我ながら奇々怪々な所業だ。

 そもそもあの人? が本当に神様であるのかすら怪しい。

 そもそも神様とは何なのか? そこが読めない。


 あの人? は自分を神様だとは明言しなかった。

 俺を次の土の神様だとは言ったが、その意味にしても前の会話? で出た土の神様に擬えたモノにすぎなかっただろう。

 全くもって読めない点が多い。明言は何もしていないのだから。


 ただ昔考えただけの事すらも見通していたのが問題だった。

 ちょっと考えただけの事を見られていると思うと恥ずかしさすら感じる。

 人物評みたいな事をしていた時があったが、あれすらも聞かれていたのだろう? 恥ずかしい。


 特にためもなく投げて、この速度に、この飛距離。

 普通の人間では間違いなくなし得ない事だろう。

 王都にいた高い魔力の保持者だろうときっと出来ないんじゃないだろうか?


 そういえば魔力の等級測定の時に水の英雄がドラゴンを投げ飛ばしたみたいな事をシスターが言っていた気がする。

 ドラゴンを投げ飛ばせるなら子供くらいこの速度で投げ飛ばせてもおかしくないのか?

 だとしたら何も言えないな。人間がどこまで出来るか想像出来なくて、人間ではあり得ないと言い切れない。


 まぁ、精神を読んでいる段階で魔力の関係者だっていうのは分かる。

 だがだからといって、神様だとは言い切れない。

 そもそも神様の定義自体があやふやだから、神様云々は水掛け論にしかならない。


 一先ずこの思考はめんどくさい。


 結局何が出来るか、どうしたら出来るか。

 それ以上の事は意味がないのだ。周囲が云々と言ったところで、行動しないヤツは意識を変えたところで何も意味がない。

 何も実績がないニートが真理に目覚めたところで、何が出来る? それを伝えて聞いてくれる人はいるのか? 戯言として処理されて何も起こすことが出来ないんだ。


 有名人などであれば日常的な事をちょっとつぶやいただけで何か変わるかもしれない。

 それは今までに成し遂げた事に他の人が興味を持っているから、そうなるのだ。それらが実績なんだ。

 何も成してない、成せてない、そんなヤツに世界を変えられるだけの価値があるのか? 


 1人ではないに等しいが、人数が集まり、声が大きくなれば変えられる可能性はあるだろう。

 言い換えればボッチのニートには価値がない。現状の俺はボッチのニート同然、人類的に価値がない。

 どんなに素材が良くなっても、逃げてばっかで行動が足りないやつは価値がないんだ。ほんとね。


 マイナスに陥るな。


 この森を越えて街に着いたとしてどうやって生きる? まずはそこから考えないといけない。

 この世界の事だし、街に外壁があるのは間違いない。門番の人と話して中に入れてもらう?

 自分が誰かを示せない戸籍のないゴーレムさんにはどうにも厳しい案件だな。


 見た目の年齢とか、度重なる酷使でさすがにボロボロになってきたポンチョとか、どう説明をつけたらいいのだろうか?

 浮浪者みたいな格好だが、元になった服が上物だから、色々とツッコミどころがあるだろう。

 いっその事、このポンチョを脱いでしまえばいいのだろうか? しかしそうすると裸になってしまうしな。


 人間の間で生きようと思うのがほんと厳しい気がしてしまう。

 もう少し森の中で生きてみたかったのだけれど、それは怒られてしまったしどうしよう?

 動物をモフって植物を愛で、のんびりと生きられる場所はないだろうか?


 植物を育てるとなると農家かな? 鶏とかの飼育とかもありそうだ。

 だがしかしこの世界に農家はいるのだろうか? いるにはいるが木属性の人限定になっていそうだ。

 俺の生育方針だと稀少性や関係性を見るためのモノになるだろうし、同一作物をずっと作り続けるみたいな事はしそうにない。農家というよりも研究者よりの育成じゃないだろうか?


 他の人の実験データを見て実際に検証したり、データから読み取って思いついた事から別の検証を行ったりしてみたい。

 日本の研究者の話をちょいちょい聞いて、自由も夢もない世界だなと思ったが、この世界ではどうだろうか?

 やはり資本が第一だろうか? お金になる研究でないとやはり手を伸ばしにくかったりするんじゃないだろうか?


 あぁ、自由に生きられたらいいな。ほんと。


 走って2日の距離らしいけれど、俺は何時間空の上にいるのだろう? 数時間?





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― 新着の感想 ―
[一言] 最新話まで読んだ! そのうち成長したリク君が追いかけてきそうだよね
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