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182、カメに近づこう

 大きい亀。形態的に言えばゾウガメか。首を体内に収められる構造になっていない気がする。首のひだの感じ的に。

 ウミガメとか首や手足を引っ込められないカメって、自身を捕食する敵がいないから機能が退化したのでは?

 あのカメもサイズ的に敵はいないだろう。


 背中の甲羅にはサイズ感でコケか何かの様に見える木々が見える。

 甲羅の1番高いところまで200メートルかそれ以上あるんじゃないだろうか?

 首以外の動きがあまりないから遠目だと山か何かと勘違いしてしまった。


 動作がゆっくりだからか、あの大きさの木を食べているというのに非常に静かだ。

 あー、でも首のあのしわしわ感、やっぱカメいいなぁ。大きな爬虫類ってなんていうかそれだけで惹かれるというか。

 軽率に人語を介されるとモヤつくが、歳経た巨大なカメとかがテレパシーか何かで通じ合えるのは何故か多少納得出来てしまう不思議。漫画の神様の影響か。あれは海神の息子が主人公だったから言葉がわかるというだけか。


 そういえば映画化もされた動物と話せるお医者さんの話も好きだったな。あれは動物の身振りなどから言葉を読み取ってという設定だったか。

 ただ動物の身振りにどれ程共通言語があるのだろう? 同じグループ内ならまだしも違うグループになれば細かい部分でニュアンスが変わってしまう事だろう。

 人間ですら山1つ超えただけで読解できなくなるくらい差が出るところがあるのだから。


 離れて暮らす1匹につき1言語を持っていると思った方が正しいはず。

 というかだ。話す相手がいなかったら言葉なんて成長しようがない。

 言葉は誰かに情報を伝えるためのモノで、伝える事ができる相手がいなかったらモノや事象に名前をつける必要がないんだ。1頭しかいない室内飼いのわんこがどうやって言語をもつというんだ。


 視線や身振りなどである程度言いたい事がわかる。わんこが「これ!」と吠えるのも見ればわかる。

 だからってそれで全てを終わらせていたらそれ以外の伝え方を知らない言葉足らずの子ができるだけだ。

 リアクションが大きいから楽しいけれど、説明しろと言われたらしどろもどろになるタイプのコミュ障と何が違う。


 根本的に話す機会がない場合、共通言語を持つ人間ですらそうなるのだ。

 共通言語を持てなかった動物達がどうしてコミュ障にならないと思う? 動物同士元々共通言語を持っているなんてそれは幻想だろう。本能で出来る事と学習が必要な事は区別するべきだ。

 ドッグランを見るとどうしたらいいか分からなくなって困った感じで主人の側から怖がって離れないわんことかも出るくらいだぞ。動物同士のコミュニケーションは学習が必要な事なのだ。


 それにしても近寄れば近寄るほどカメの大きさがよく分かる。頭だけだとしても小学校のプールが2つあったところで収まりそうにない。

 表層は鱗状。ウミガメの頭みたいだ。口先はリクガメと同じで尖っていない。木々を主食にしているからだろうか。

 あの体の大きさを支えるためにどれ程の木々を必要とするのだろう。


 そういえば煎り豆にも魔力が含まれていたんだ。木々にも魔力はあるはず。あるはずだよな?

 それにしては魔力の吸収が働いている気がしない。木の幹の大部分は死んでいる細胞だからか?

 木の幹は表面の皮だけが生きていて、他は死んでいるんだったか。


 水を吸い上げるのは霜柱が出来る原理と同じ毛細管現象。木が意思を持ってやっているわけじゃない。

 内部に水が多くなりすぎれば気孔が開き水蒸気を放出し、それが追い付かなくなると木は水分で腐る。

 自分の意思で飲むことを止められないのはなかなか大変だな。気候が合った場所でないと腐ったり枯死したりすると思うと植物はけっこう生存できる場所が限られている。


 種はほとんどの部分が生きているから、煎り豆は魔力を保持していたのだろうか?

 けっこう厳密に決まっているのかもしれない。葉っぱの部分は確実に生きているはずじゃないか?

 だとしてもその量は1枚1枚は大したことないか。カメみたくまるっと食べるなら簡単に補充できそうだが。


 調理の過程である程度抜け落ちたとしても生きている細胞が多いから魔力を保持できる?

 細胞が生きていれば魔力を保持できる? いやそれなら死体……なりたてであればどのみち保持しているか。

 観測しなければ具体的な事はわからない。設備などを整えなければ。


 そこそこの距離まで近づいたが、カメは俺に気づいているのだろうか?

 わからない。カメはのんびりと食事を続けている。掘り起こされた土の匂いが香っている。

 こんなカメがいるのに何故周囲には30、40メートル級の大樹が生えているのだろう?


 カメは年に1本しか食べない? だがあの感じの速度で食べているならもっと食べている量は多いだろう。

 周囲に同種の木しかないから他の木が生える余地がない? ありえるだろうか?

 木の成長速度がおかしく、数年以内に同じサイズの木が生えるとか? カメの糞に成長促進作用があるとかありそうな。


 もしここだけ巨人の国みたいだったらどうしようか? ここだけ基準としているサイズ比が圧倒的に大きい場合の事だ。

 今まで見た他の動物が虫みたいなモノ、カメや木々が小動物みたいな扱いだったら。

 その場合この異常な生物図の説明がつくのだろうか?


 動物と話せるお医者さんが月に行く回で、重力が弱くなった分大きく成長した月の巨人の話があった。

 体が大きくなるためには体を支えるのに必要とする力が弱くなるか、身体を支える力が強くなるかする必要がある。

 ここなら魔力という万能の力があるんだ。高い魔力を保持すれば王都のカニの様に通常ではあり得ないサイズにだってなれるのだろう。


 カニは触ったら死んでしまったが、あの怪物シャチは俺を飲み込んだというのにそれが直接の原因では死にはしなかった。

 もしかしたら直前にカニで魔力をある程度吸収していたから大丈夫だった可能性もある。

 だがサイズが大きいという事は保有している魔力が多いという事を示す。だから触っただけでは死にはしないかもしれない。あの怪物シャチみたいにな。


 あのカメは体が大きいし、生産する活性魔力も吸収する活性魔力も非常に多い事だろう。

 保有魔力は基本的にその巨大な体を支えるために使われているのだろうか?

 さすがにそれは楽観的だろう。魔法の1つや2つ使ってもおかしくない。


 実際はどうなのかまるで見当がつかない。一当てしてみたらわかるだろうか?

 ここから眺めていてもしょうがないし、とりあえず足をつたって甲羅の頂上でも目指してみようか。

 どこまでのモノをカメが気にするか分からないし、補給ポイントを見つけられたらいいんだが。


「やっほ」


 ……。


「うーん。いやぁ、やっぱり。うちの子にほんとそっくり。その驚いた顔とかもう瓜二つ。区別がつかないよ」


 髪の色が緑。瞳の色も緑。草木の様な生命力を感じる色合いだ。

 テンガロンハットっていうんだったか、カウボーイが被っているような形の緑色の帽子。草木の柄に見える緑のポンチョを身に纏った人の良さそうな顔をした青年が背後に立っていた。

 人間みたいな顔をしているし、人間みたいな雰囲気を感じるのに、人間ではない事が何故かわかる。


「その警戒心たっぷりなところ。そこもうちの子と同じだねぇ」


 中腰になりニヒヒと笑うその瞳は非常に人が良く見える。

 いつのまにか右手で頭をポンポンとされると、脇に手を入れられて抱え上げられた。

 何故素直に抱え上げられた? いやまぁ、どの程度反撃してもいいか、分からなかったからだな。


「いい子だ。いい子だ。それじゃちょっとあそこに行こうか。君もそこだとそろそろ厳しいだろう?」


 気がつくとお姫様抱っこされている外見だけ美少女おっさん。

 下手に暴れる気は理性的に考えてもないが、反射的にも暴れられないのはなかなかに問題がありそうだ。主に自衛の時に。

 もう少し意識の制限を緩めた方がいいのではないだろうか? だがこの体はもやしだった昔と比べるのもおこがましい程力が強く危険なのだ。制限を緩めるのも危険だ。


「我が神殿にようこそ。我が兄弟の写し身よ」



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