173、そして彼らの家に着いた
運ばれる。鼻歌まで歌っている。そんなに嬉しいのだろうか?
何がどうして嬉しいのだろう。理解が出来ない。
子供らしいと言えば子供らしい姿だっただろうか?
いや、しかしあれが子供らしい姿だっただろうか?
分からない。結局このままでは逃げられない気がする。
どうしたらいいだろう。このまま居たらいつか王都に送り返されるのではないだろうか?
そうなると面倒くさい。辺境の方に行った方が人も少ないだろうし楽そうだ。
土地神みたいな感じで適当な場所で子供とかを守ったらどうだろうか?
今のこの体でも出来るなら小さなゴーレムを作って辺りに配置すれば肉体補正の力業で事件とか解決できそうだ。
いじめっ子がモノを隠したとかも、ゴーレムで見つけていればササっと近場に置いていく事も出来るしな。
神様の真似事をした場合、本物が来た時困りそうだな。
いやだがしかし、本物の神様は人を助けるのだろうか?
ここの世界の神様は魔法の管理者じゃないだろうか?
そもそも俺の前世の価値観だと神様はいない。正確に言えば神様というのは周囲にいる人の無意識だ。
人の無意識がその人に対する当たりを決めていて、その人の行動のつけが運に繋がるとか考えていた。
溜息をつけば幸運が逃げるとかもそうだと思う。面倒な事情を抱えているヤツに誰が好んで近づくのだろう。特に何の縁もなく近寄るのは下半身でモノを考える出会い厨くらいじゃないだろうか?
「おー、険しい顔をしてんなー」
笑う門には福来るもそうだ。笑う人を見れば何かいい事があったのだろうと良縁が来る。
金の巡りがいい人の周りに行けばお零れが手に入るかもしれない。
そんなハイエナの様な考えじゃなくても、笑う人の周りは不幸が少ないから一緒にいて心地よくなる。
そう考えていくと神様というのは周囲の無意識を便宜的に言い換えたモノじゃないかと思う。
宗教も考えるとイスラム教の豚を食べるなとか、細かい教義も生存のために必要な知恵を授けるためのモノだったんじゃないか? とか思う。
生存が厳しい場所程行動に対する戒律が増えて、生存に容易い場所ほど倫理的な戒律が増える。
そういえばインドでは知らなくても聞かれたら何かしらでたらめでもいいから教えないといけないとかいう話を聞いた事がある。
インドで道を尋ねるのは枝を倒して行く先を決めるようなモノだとか。知らないと突き放すのは冷たい行為だからダメだとかあるらしいが、実際どうなのだろうか?
迷っている段階でそこで足踏みをしているよりも動いた方が物事が解決するから、知らなくてもとりあえず道を指し示すとかだと面白い。
「おーい、着いたぞー」
はっ。途中から車に乗っている気分だった。車に乗っていると風景が覚えられないのは俺だけだろうか? 後部座席で振動で揺られているだけとかが影響しているかもしれない。
今回のも途中で自分の力で動かず、相手の意思がなければ降りられないという点が同じか。
見た所けっこう大きな小屋の様だが、ここが彼らの家なのだろうか?
実家の一軒家よりも大きいが、道具を置く場所があると考えるとこれでも狭いんじゃないだろうか?
1階は大きな道具とか置く場所か。血抜きとか臓物を洗うとかは現場でするとして、解体はここで行うのだろうか? 解体とかした事ないけど。
いやそもそも彼らが狩人というのも俺の想像でしかないんだ。
森の保全とかの担当者なのかもしれない。
もしくは危険区域の警備兵とか特殊な代物の可能性もあるか。
そもそもなんであそこの川にいたのか?
仕掛けを回収に行くのお昼時というのはおかしくないだろうか?
いやそもそもお昼時なのだろうか? 一瞬見えた日は高かったと思う。東西が分からなかったがもしかして夕方ちょっと前だったのだろうか?
地下水道を歩いていた時間はどれくらいだった? もしかして地下水道で夜を越えたのか?
「お嬢ちゃんはほんと面白いなー」
何が面白いのだろう? わからない。
割かし苦虫を噛み潰したような顔をしていた気がする。
いや、とりあえず面白いと言っておけばいいと思われた?
いや、でも安易に言って絆すとしたら今少女の体だし可愛いじゃないか?
気が強そうな家出少女だとして、可愛いと言われたら跳ねっ返り嫌われる可能性を懸念した?
可愛いと散々言われて返ってその言葉が信じられなくなった子だったら正解かもしれない。
しかし川底を流れてくるような少女にそんなもんを懸念するか?
いやむしろ訳ありが過ぎるタイプだ。可愛いに嫌悪を感じる可能性が高い。普通なら。
そうなると面白いという言葉はそういう少女の心情を傷つけずに友好的だと思わせるのに丁度いいのでは?
「はいはい。そうやってじとっとした目で見るんじゃないって。立てるか?」
中身が俺なのでそういうモノは効かない。
けれどもしそういうのを狙ってやっているのであればこの人は危険だろう。
……家出少女とかを疑っている可能性はどれくらいあるだろうか?
見た目的には魔力が1等級を予想される。けれど近くにいても魔力の波動が感じられない。
川を流れて定置網に引っかかった事から、事故か事件で流された可能性が高い。
やたらと警戒心が高く物思いに耽りやすいところから、いじめなどを受けていた可能性が高い。
傍目から見るとこんな感じだろうか? 身元が分からない様に名前を隠そうとするところも怪しいか。
転生者の話題で過剰に嫌悪している様子があるところから、お前転生者じゃねーの? みたいないじめを受けていた可能性も高い。
……思っていたよりも頑固で意地っ張りな家出少女っぽいな。
「心配しなくても立てるから」
まぁ、どの道ここから離れないといけない。
こんな王都の近くだと戸籍とかしっかりしているだろうし、戸籍なしで行動するのが難しい。
魔力がほとんどない人というのは辺境に多いはずだし、そういう意味でも隠れやすいはずだ。
辺境で神様プレイ? たぶんそれが1番生きやすいだろう。ここで家出少女のフリをしているよりも絶対に。
化けクジラ? 化けシャチ? あの異世界生命体と一緒に来たというだけでもおかしい以上、何かしらの監査が来る可能性が高い。
監査が来たら俺は王都に連れ戻される可能性が高いし、出来るだけ早く出て行かなければ。
それにしてもこの体で魔法が使えるかどうかが分からない。
使える魔法がどの辺りなのかも分からない。魔力を暴発させて自爆した場合俺はダメージを受けるのだろうか?
吸収メインにしている以上排出には向かないんじゃないか?
「やっぱりお嬢ちゃんは面白いなぁ」
あぁ、はいはい。勝手に面白がってくれ。トイレやお風呂とかのタイミングは俺は1人になるよな?
このゴーレムの体でそういうモノが必要じゃない気がするし、逃げるのはそのタイミングでいいか。
もしそこを監視しようとしたら「変態」とでも言ってやろう。
魔力の補給はあの異世界生物のおかげでしばらくは要らない……と思う。
ニーナ達は魔力の供給を俺が多少していたが、それだけじゃタマゴの稼働時間を考えるに足りないはずなんだ。
一体どうやって稼働のための魔力を得ていたのだろうか?
元魔力だから周囲の魔力に融通してもらっていたとかだろうか?
物理体を得たことで上位存在になって、周囲から強奪出来るようになっていたとしたら面白いな。
王都には魔力がたくさん漂っているから特別供給が必要ないとかだとしたらどうしようか。
まぁ、どの道辺境に向かえば魔物の類はたくさんいるだろう。
異世界生物よろしく彼らから魔力を入手できれば俺は生きる事が出来るはずだ。
王都で魔力豊富な人々から吸収するか、辺境で魔物から吸収するか。道は2つに1つだろう。
感想ありがとうございますっ!
感想のおかげでエネルギーの充填が早まり、更新速度が上がりました(笑)






