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166、水道管の先へ

 水道の中は暗く、そしてカビ臭かった。

 前世の身体であれば咳が止まらなくて終わったかもしれない。

 前世の身体でもやしだし。病弱属性も若干あった。


 マンホールには梯子がついていた。

 きっと定期的にメンテナンスを行うためにつけられているのだろう。

 カビの臭いは強いけれど、腐敗臭はしない。下水道ではなさそうだ。


 メンテナンスの時はきっとライトを持っていくのだろう。

 でなければこんな暗闇で作業はできない。あ、魔法で光を出すのか、普通は。

 こういう地下水道を創るのも魔法でやったんだろうか?


 身体強化はともかく、外に俺が魔力を出した時暴発する危険はないだろうか?

 そもそも身体強化というか、あれ、魔法を使った感覚がないんだよな。

 基本技能として設定されているくらいスムーズに動かせた気がする。


 俺だけやたらと縛り多くないか? この世界。

 いやまぁね? 周囲への被害を考慮しないならここで魔法を使う事も出来る。

 ただそれをしたら人類を完全に敵に回す事になるよな。


 守るのは攻めるよりも難しい。

 守るのは面で必要になるが、攻めるのは点でいいから。

 面に力を込めるより、点に力を込めた方が強い。

 エネルギーだけでなく法律など有形無形問わず。


 人間というのはとにかく数が多い。取れる手数も他の種族と比べて段違いに多い。

 現状どうやれば死ぬかわからない俺でも、殺せる方法を見つける可能性がある。

 エネルギー切れからの封印が1番されて困る事だろう。死ぬかは知らない。


 この体の耐久力も知らない。

 時間が経てば一気に朽ちて壊れる様になるのだろうか?

 それがきっと寿命だと思う。そうなるかわからないけど。


 真っ暗な中、水道管の壁を触りながら、そこのぬかるみに足を浸し、生温い気持ち悪い感覚を感じながら歩くのは精神衛生上良くない。

 わずかに流れる水の向きから下流に向かえば川に到着するだろうと考えているが、前世でこういうぬかるみに多種多様な細菌がいて不潔というのを知っているから、とても気分が悪い。

 この体はそういった細菌にやられる事はないと思うのだが、だからといって触りたいかと言われたら絶対に否だ。

 台所の悪魔を触りたくないというのと同じ感覚だ。


 あー、壁が越えられないという想定から、地下から行こうと思ったけど、気分の悪さを考えたら地上から行った方がよかったかもしれない。

 いやでも壁越えじゃない分俺がどこにいるかわかりにくいだろう。

 壁ならどこから出たとか、そもそも出ていない可能性を検討しなくてはいけないからな。


 追われているワケじゃないけど、消息をくらましたいっていうのはある。

 誰も知らないところでゆっくり考え事に耽りたいとかだな。

 特別な人ではなくて、ただの人として、生活してみたい。


 サラリーマン的な生き方で、人に自分の価値を示し、自分の時間を売るっていうのもよかった。

 リク君の中にいる時はそちらを目指そうと思っていた。

 リク君補正でコミュ力上がっていたし、そっち側を目指せると空想していたな。


 価値を示すっていう部分、誰かに自分の事を認めて欲しかったのかな。

 自分が信じる自分の価値か。俺にそんなモノはあるのだろうか?

 誰かと共同で動く事がけっこうストレスになりかねないし、一緒に仕事をするというのは難しいかもしれない。


 足首まで浸かっていたのが、今では股下か……。下着に水が跳ねて冷えた。

 川に近づく程水位が上がるのは分かっているが、最終的に泳ぐ事になるんじゃないだろうか?

 水の勢いもどんどん強くなっている気がする。


 そういえば雨が降りそうな天気だった。

 雨が降れば雨水道に水が流れ込むよな。

 ……これ、押し流されるフラグじゃないか?


 この体って呼吸必要なのかな?

 そもそも浮力関係どうなっているんだ?

 石とか同じなら浮く事が出来ないぞ。


 いざとなったら水底を蹴って水面に顔を出さないといけない。

 呼吸が必要かはわからないが、息を数秒止めてみても苦しくはならない。

 数秒じゃわからないから数分出来るかチャレンジだな。


 そういえば魔物関係も気にしないといけないのか。

 今のところ出てきていない。雨水道の方はいないとか?

 汚れを材料に顕現とかの可能性だと、流れていった先が怪しくなるな。

 雨水道だとしても汚れは出るもんだ。先の方にうじゃうじゃいたらSAN値チェックしなくちゃいけないや。


 あぁもう、パンツまで濡れた。

 ポンチョが体にピタッと張り付いて気持ち悪い。

 息を止めているから黴臭さ気にならないのが幸いか。


 なんだかんだけっこう息を止めているよな。

 呼吸はイミテーションか。しているふりだったのか。

 この体ってどういう感じなのだろう。


 代謝とか行われるのだろうか?

 カニの殻を割れたけれど、硬いのだろうか?

 エネルギー量があったから割れたっていう感じなのだろうか?


 肉みたいな感触だけれど、本当にこの体は肉で出来ているのだろうか?

 水銀みたいな液体金属で出来ていたと言われても信じられてしまう。

 水銀だとどうやって固形を保っているのかがわからないが。


 タンパク質は分子が細長く、糸が絡まる様に繋がっているからゴムの様にしなるし伸びる。

 あれ? そういえばワイヤーとかでも似た感じの事が出来るよな。

 金属で繊維を作って編み込めば筋肉の代わりに出来るだろうか?


 だがそれは結果論だよな。

 実際のオーダーの段階ではほぼ動物の体そのものを想像していた。

 タンパク質で出来ている可能性ってやっぱあるんじゃないか?


 偽装タンパク質とか? 何で偽装しているかわからないけど。

 タンパク質じゃ突進の負荷に耐え切れず血まみれになってなかったらおかしいし。

 それにニーナの大きさも通常のタンパク質では実現出来ないだろう。


 恐竜サイズって考えたら出来るのか?

 恐竜が出来ているのだから出来るって事か。

 でもそれは恐竜の構造だから出来たっって事のはずだ。

 縮尺を変えたら色々組み替えなくては対応できないはずだ。


 やはりタンパク質に似た何かが回答って事か?

 それとも前世と同じタンパク質だけれど、魔力によって不思議な性質を帯びた?

 分からない。


 嗅覚があるという事は受容体があるという事。

 酸性とかアルカリ性とか中性でも細胞を変質させる能力があるもの、それらが嗅覚を司る受容体を刺激して、神経に様々な臭いの情報を神経に伝達させている。

 この辺りはタンパク質だからこそ複雑に分析出来るというもんだよな。


 タンパク質は容易に変質し、そして入れ替えやすい。

 また柔軟で衝撃を形を変える事で逃す事にも長けている。

 色々な原子や分子、イオンなどを組み込み、様々な状況に対応させる。


 血液にしてもそうだ。イオンチャネルなどを使い、浸透圧を調整し、物資の運搬を行っている。

 あの仕組みを他の物質や構造で再現しようというのは大分困難だ。

 少し生物を学べば分かる事だが、生物の身体構造はある種芸術だ。


 足りないものが出ればある程度なら他の物質で補う事が出来る。

 ドミノ倒しの様に、電気エネルギーなども利用し、無駄なく動かされている。

 進化が進むほどにその傾向は顕著だ。心臓の構造が特に顕著だろう。


 人間は2心房2心室で完全に分けられている。

 爬虫類や鳥類などの心臓はそこまではっきり分かれていないところがある。

 具体的に言えば肺から戻ってくる血液と帰ってくる血液が一部一緒になってしまい非効率だ。

 人間でも稀にその状態になる時があるが、その人は走る事など活発な運動が出来ない。


 ミミズなどの環形動物や、は開放血管系といい、体が小さいから気門から空気を取り入れたら酸素が全身に行き渡る。心臓が要らない。

 心臓代わりの筋肉は少しあるが、心臓は存在しない。

 ワームとかミミズを巨大化させた魔物とか生物としてはあり得ないんだ。


 ……あのカニも酸素とか要らない存在だったんじゃないか?

 カニも節足動物だし、そこら辺考えたら大きくなるという段階でおかしいよな。

 やっぱり何か壊れた存在な気がしてならない。


 でさ。予想はしていたよ? 予想はしていたけど、これは正気? 運営正気?

 暗闇で大乱闘しろと? この音のする動き方って絶対ぬめぬめしているよな?

 力では対抗できないよな。魔力の吸収で1匹ずつ仕留めるしかないか。


 相性はきっといい。

 


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