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165、王都脱出経路選択

「あ、待てーっ!」


 後ろから聞こえる声はあっという間に背後へ消えた。


 この体の運動性能はどうやら高い。


 最高の運動神経が設定されている可能性?


 まぁ、いいか。


 オーダー通りのすごい体という事でOK。


 魔法を使わないっていう縛りがあるからラスちゃんも俺を追いかけられないのだろう。

 ある程度離れたらゆっくり移動しよう。


 普通の生き物は魔力を放出しているから特定の魔力を持っているモノは追いやすいとかないだろうか?

 そういう意味では俺は魔力を吸収するし、放出していないから見つけにくそうだ。

 いや、消しゴムみたいに吸収して空白地帯を作るからむしろ追いやすい?


 吸収を抑える方法を覚えないと簡単に追われるようになるかもしれない。

 そういえばユエさんが御用があればお呼びくださいとかなんとか言っていた気がする。

 もしかしたらもう追われている可能性があるのだろうか? あるか。


 周囲にはぎょっとした顔の人々。申し訳ないがそこをどいてもらおうか。


 発信機か何か貼り付けられてないだろうか?

 服そのものが発信機だとしたら終わりだな。

 どこかで新しい服が入手出来たらいいな。


 とりあえず手が臭う。


 カニの体液が強酸性とかでなくてよかった。

 強塩基性とかでも怖い。脱水反応が起きそうだから。

 そういう体液の生物って存在できるのだろうか?


 路地に入り周囲に人がいなくなり落ち着く。


 ガラス質の構造でもないと溶けるか。ケイ酸塩は科学的に分離させにくいからフッ酸でもない限り溶かせない。

 酸や塩基が偏っていたらタンパク質で出来ていたら脱水反応で焦げて、金属質だと酸化したり溶ける。

 フッ酸は薄めると弱酸、適度な濃度にすると硫酸並みの強酸になり、何かと混ぜると超酸と呼ばれる硫酸すら超えた酸性を示すんだったか。

 こういうものを体液にするのは通常の生物だとムリだろう。


 穴を探すとしたらカニのいた方に戻らないとだ。


 ファンタジーの世界だとマグマを体液とするモンスターがいるから勝手な思い込みであり得ないとするのはいけないな。

 万能な魔力様がある世界なんだ。デウスエクスマキナ。機械仕掛けの神様は嫌いだ。

 いくらでも何でも出来る。つまり制限がないから理屈をこねられないのだから。


 あのサイズのカニがいた以上、どこかに穴があるはず。

 王都の中であのカニが発生したなんていうトンデモがない限り。

 その穴から俺は王都を出られないだろうか?


 穴に入る危険性はあまりないはずだ。

 この体は最硬なのだ。魔法は吸収できる。

 モンスターは体液に触れさえすれば殺せる。たぶん。


 カニはまだ動けたはずなのに死んだ。

 それはきっと体を動かす魔力がなくなったからだ。

 あのサイズの体を維持するためには魔力がなければムリだろう。


 人が襲われそうになったからカニは倒した。

 でもだ。考えてみればカニは自分が生きるために行動したに過ぎない。

 俺は人ではないのに何故カニを倒す必要があった?


 人は同族でも何でもない。生存競争的に何も間違った行動をしていないカニを何故倒す必要があったのだろう。

 むしろモンスターの方が俺に近しいのではないのだろうか?

 コミュニケーションを取れる方を優先した? そもそも俺まともにコミュニケーションを取っていないじゃないか。


 いや、いい。あそこにはラスちゃんとかいた。

 ラスちゃんの前では人間のフリをしていたんだから助けるのが正解でいいんだ。

 それにカニとはコミュニケーションを取れる確証がなかった。


 そもそもあのカニが人を襲おうとしていたとは限らない。

 ペットだった可能性とかはあるのだろうか?

 もしペット……いや友達とかだったりした場合俺の行動は何もかも間違っていただろう。


 さすがにあのサイズのカニがペットや友達の可能性は低いか?

 むしろあのサイズのカニだからこそ知性があり、友好関係を築けた可能性もあるか。

 王都に住んでいる以上、魔力量などは優れているはずだ。あの人に高い自衛能力があってもおかしくない。


 あぁ、もう。考えれば考える程悩むな。


 家や庭の大きさで住んでいる人の魔力等級が分かるなら、見た感じこの辺りには同じくらいの魔力量の人がいるという事になるだろうか?

 そう考えた場合、この辺りの人は何等級だろう? 1等級の人がいたところから程近いから2等級?

 いやもしかしたら3等級? 3等級なら魔法を使えるし、渡り合えるからモンスターと触れ合って遊んでいる可能性がある。


 小さい頃に出会い、初めは威嚇などをされ、餌付けを繰り返し、適度な関係を築き上げたとしたらどうしよう?

 もしそうだとしたら俺は不意に友達を襲撃し殺した敵という事になる。恨まれても仕方がない。

 可能性はきっと低いだろうが。


 ……。


 あぁ、もうわからない。あのカニは純粋に人類の敵だったのだろうか?

 カニの記憶は海の記憶だった。この周辺に海はないだろう。

 つまり前世の記憶だろう。たぶん。


 今世の記憶が見えなかったんだ。

 生まれたてだった可能性がある。むしろその可能性の方が高い。

 体はきれいだったんだから。


 どこで生まれたのかはわからない。もし王都の中だとしたら面白いが困る。

 カニが来たところから王都の中から出られないという事だからな。

 まぁ、地下水道とかから来たとしたらそこを流れれば海とか外には出られるだろう。


 とりあえず現場周辺には戻ってきたが穴が見つからない。

 周辺にラスちゃんも見当たらない。俺を追いかけて見失いどっか探している可能性があるな。

 カニの周囲には人だかりが出来ている。物見高い人の多さよ。


 カニはあまり移動をしていないと思ったのだけれど穴はどこにあるのだろうか?

 小さい排水口から液体になって抜け出してきたとかそういう展開はなしにしてほしい。

 空から降ってきたはさすがにないだろう。それはさすがに見て気づく。気づくと思う。


 出現した瞬間を見たわけじゃないから気づかない可能性もあるか。


 穴はどこにあるんだよ。


 現代と同じ方式なら雨水管があるはず。

 カニが通った穴でなくてもそちらの配管なら川に通じているはずだ。

 下水と違って汚くないだろうし、そちらを通ればいいか。


 雨水と下水を混合させる方式だと下水処理場で処理する液体などの量が多くなり、非効率的だろう。

 だから現代は下水管と雨水管は分けられていたはず。

 この世界でも同じだといいのだが。


 まぁ、もし下水処理場に出たとしてもだ。

 下水処理を行った先には川があるはずだ。

 貯めた液体をどこかにやらなければパンクするはずだからな。


 貯めた液体を燃やして空へと返すとか言ったら怒るよ?

 どんだけファンタジーしているんだよ! っていう感じに。

 いやまぁ、川とかそういうモノがない方が侵入出来る箇所が少なくなって要塞としてはすごいいいだろうが。


 考えたらすごいありそうな気がしてきた。

 王都のどこかに水源があってそこから水を汲んで王都中に供給しているとかそういう事はないよな?

 いや、水源すらもなく魔力で供給している可能性とかある? 何それ怖い。


 さすがに雨水を処理できるだけの水道設備はあるだろう。

 なかったらそれこそあっちで冠水、こっちで浸水、地盤が緩んで建物倒壊とか起きかねない。

 脇に見える側溝とかも雨水処理に使われているのがよくわかるじゃないか。


 そういえば魔法って近くに材料がない時、周囲の原子を崩壊させて別の原子に作り変えるとかいう恐ろしい事をしているんだっけ? 頭おかしい。

 反対に考えれば近い材料があれば消費魔力も少なく、色々作れるという事だよな。

 糞尿とかも言ってしまえば窒化物だったり炭素や水分とか色々含まれているわけだから少ない魔力でも割かし色々なモノが作れる可能性があるのでは?


 考えてみたらやばいわ。


 とりあえず……マンホール見つけたからここから河川を探しに行きましょうか。

 これ、雨水管だよね? 汚水管じゃないよね? 蓋には何も文字が書かれてないし不安だ。

 雨水管でありますように。








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