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159、少年に手を引かれ

「私は……何でもないです」


 思いつきませんでした。

 これは語彙力なのだろうか?

 コミュニケーション能力だな。


「お前なぁ……」


 ただの人? 人じゃないじゃないか。

 俺のコミュ力を考えたら嘘をついたところでぐだってバレるだけだろ!

 走って逃げて人やモノにぶつかって爆散させたらそれこそ事態だわ。


 とりあえず真っ直ぐ進めばいつか王都の壁にぶつかるはずだ。

 王都の壁が見えたら壁沿いを進んで門を探せばいい。

 検問はどうやって超えたらいいだろうか?


 普通に考えて少女が1人で越えられるモノじゃないだろう。

 何か証明書とかを提示する必要がありそうだ。

 壁を突き破って出る? その結果は周辺住民の危機だろう。


 魔物のいる世界だ。戦闘能力が多少あっても死ぬ時は死ぬ。

 現代社会よりも圧倒的に死ぬ可能性が高い。

 穴が開けばその危険性はより高くなるだろう。


「あぁー。わかった。答えにくかったな。お前はどこから来たんだ?」


 それに魔物にぶち破られない様に壁も工夫されているはずだ。

 簡単に崩せるはずがない。崩せてはいけないはずだ。

 いや、敢えて壊しやすい場所を用意しておいて、そこに戦闘人員を集結させて一網打尽にするという方策もとれるか。


 いや、やはり目立ちやすい突破目標として門を狙う可能性が高いのか?

 そんなムリをして街壁を壊そうというのが考えにくい?

 意外性を狙おうとしたり、門まで行くのが面倒だと思ったりしたらやらないだろうか? 俺が攻める側ならやる。


 やっぱ自動で演算してくれない。リク君が考えていたのがよくわかる。

 どこから来たのか? どこから来たかが分かれば俺がわかるとでも思ったのか?

 研究室とかそういう存在を知りたいのだろうか? そんな場所で生まれた存在とでも思ったか?


「あー、うー、ちょっとお前こっちこい!」


 道の真ん中で立ち止まっていた以上、通行の邪魔だった。

 手を振り払って相手を怪我させる危険も想定出来た。

 少年の手は白く小さく柔らかく、仕事を知らない手だと思った。


 とても簡単に壊れそうだ。


 まぁ、今の俺の手はその手よりも小さいのだけれど。


 少年に手を引かれ、家と家の間の細い路地に入った。

 彼は俺の方に向き直ると俺をまじまじと見つめ始めた。

 ボーイミーツガール。ただしガールはおっさんである。


「お前はどこから来たんだ? 地面から湧いてきたわけじゃないだろ?」


 材料を考えると地面から湧いて出てきたもんだな。

 魔法で地面や空気を加工して骨子を作ったはずだ。

 作られた場所を考えると王都の外である。


 言ったところでからかっているのかと思われる内容ばかりだな。


 まじめにすごい返事に困る。

 いっそ適当な方向を指で指し示そうか?

 空でも指さしたらどうなるだろうか?


「もしかしてお前は迷子なのか?」


 迷子しているかと言われたら迷子しているだろう。

 あの家に戻るつもりはあまりない。戻ってどうしろと?

 事情を知っている人の傍にいるのは楽だが、現状は発展が望めない。

 ただの籠の鳥となってしまうだろう。


 自分から籠の鳥でいる事を俺は望まない。

 行く当てなどなくても歩かないといけない。

 そもそも生まれた時に個人個人に目的などないのだ。


 すがるのは簡単だが、すがって解決する問題ではない。

 自分から行動できないモノはいつまでも誰かにすがりつくだけだ。

 都合のいい誰かにすがり何もなせない。


「そんな顔をされても困るんだが……」


 羊や馬の群れの様に、群衆の1人になれば生きるのは楽だろう。

 盲目的に誰かにすがれば生活自体は簡単にできるだろう。

 その誰かの力が強ければ生活の水準は高くなるだろうし、弱ければ低くなる。


 会社で言えば運営の力が優れていれば給料が高くなるし、ダメであれば給料は低くなる。

 この会社の部品である事は悪い事ではない。誰しもがリーダーとなれるわけじゃないのだから。

 コミュ障の俺にリーダーの資質はないだろうし、誰かにすがるのは間違いじゃない。


 だがだからといってそれで楽しいのか?

 だがだからといって言われた事しかできない部品になるのか?

 そもそもそんな奴にどれだけの価値があるのだろう? 余程自身のスキルが優れていない限り人に求められる価値などないだろう。


「……君、起きてる?」


 そのスキルは籠の鳥で身に着けられるのだろうか? 俺には身に着けられるとは思えない。

 言われるままに着けた量産型のスキルなんて一山いくらの価値しかないだろう。

 部屋に閉じこもったがり勉君にトーク力もなければ特異なスキルもありやしない。

 事務的処理が上手くなればいいが、マニュアル操作しかできない、アドリブ能力もない、対人折衝能力もないでは碌な所にいけやしない。


 部屋に閉じこもって上手くいくのは職人さんだけだ。

 職人さんにしても、様々な物からインスピレーションを得なければ工場製品に負ける。

 機械に対しての人の優位性はその独創性にあるはずだ。


 俺はどのタイプが1番合うのだろう?

 結果で語る職人さんや研究者さんタイプで合っているはずだ。

 何にしてもコミュ力が低いのが最大の問題だが。


 状況を正確に伝える能力がどこまであるだろう。

 顧客のニーズに合わせたモノが作れなければ自己満足でしかない。

 自己満足では利益を得にくい。氷が必要だっていうのにアイスクリームを持って行ってもしょうがないのだ。


「放置も出来ないよな……」


 で、目の前ですごいお困りになられている少年をどうしようか。

 ぶっちゃけすごい放置してほしいのだけれど。

 話せる内容も特にないし、交流を深める必要も現状はない。


 将来的には利害関係が出てくるかもしれない。

 だが現状今の俺がどうなるかもわかりはしない。

 将来的にこの体でいる保証もない。


 コミュニケーションのため執事のゴーレムを作って諸々の雑事をやってもらうとかしそうだな。

 だがまぁ、人と話す事に慣れるのはとても重要な事だ。

 いくら俺が面倒くさい身の上だろうが、たいていの人には関係のない話なのだ。


 特にこの世界での役割を持っているわけでもないだろうし、何も気にする必要などない。

 現状の髪色や瞳の色の組み合わせがやばいだけなのだ。染髪やカラコンなどでどうにかできれば大丈夫なはず。

 髪の色や瞳の色の組み合わせの多様性を考えたら少し色を変えれば一般庶民に潜り込めるだろう。


「あのー、私はお構いなく……」


 とりあえずどうやってこの場を脱しようか?

 少年の緑の瞳が吊り上がっている。

 ……これは怒鳴る可能性が高い。


「そんな事できるか! とりあえず来い!」


 あ、また腕をつかまれてしまった。

 これを振り払ったら少年が怪我をする可能性が高いよな。

 そしてどこに連れていかれるのだろう?


 色んな意味で困った。


 周囲には住宅はあれど、お店の類は見かけられない。

 この辺りは住宅街なのだろうか? それともお店という形式ではやっていない?

 王都にお店は必要ないのだろうか? わからない。


 広場の類も見かけられない。

 庭が広いからフリーな集会所としての広場を必要としない可能性か?

 子供の遊び場としても親の目の届きやすい自宅の庭が便利と。わからないが。


 家々も似ているし、覚えやすい目印となる物が少ないな。

 位置を確認する方法は家々の形から判断するしかない?

 いや、表札みたいな所を見ると住所が書いてある。

 大まかな位置は表札を見ればわかるのか。


 さっきの道は人混みができる程の通りだった。

 今の道は特に人影がない。主要な道というのは多少決まっているのだろうか?

 あの道はあの家から繋がっていたが、どこに向かう道だったのだろう?


 道が気づかない程緩やかなカーブを描き、城等を中心にした環状の道路を作っていたとしたら?

 あの道に沿っていくら歩いても壁に到達しなかった可能性がある。

 こうやって少年について歩く程に感じていた視線も減り、何だか落ち着いてきた。


「ラスーっ! 起きているかーっ!」


 あ。ここまでついてきちゃった……。

 まぁ、いいか。なるようになる。ここからどうするかを考えよう。

 王都の外に出たいとか駄々こねてみるか?


 本来いないはずの土の英雄見習いの少女。本人に記憶なく、ただ外に出たがる。

 英雄見習い達はこの少女に出会った事で世界の知られざる仕組みを知る事になる……。

 物語の導入にありそうだ。綺麗に終わる物語だといいのだけれど。


 なんか最終的に少女は実験体であり、魔王化して英雄見習い達の敵として立ちふさがりそうだ。

 そして涙と共に倒された後、英雄見習い達の冒険が終わり、彼らは英雄としての真の道に行く。

 たぶんきっとそういう物語がある。









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