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15、行商人

「リク君。行こっか」


 俺は母さんに乳母車に乗せられて移動した。

 なかなか外の景色を窺う機会がないっ!


「母さん、どこに行くの?」

「王都よ、リク君」

「王都には乳母車で行くの?」

「流石に母さんも乳母車で王都まで向かおうとは思わないわよー」

「じゃあ、どうやって行くの?」

「車ね、お父さんが行商のニキさんを引き止めているはずだから早く行かないといけないの」


 ……?

 どうしてこんなに急いで出ていこうとしてるんだろうか?


 シスターの王都の住民権獲得審査の推薦状、あれに関しては悩んでる素振りを見せて保留にしたというのに。


 シスターの属するグループに何か危険があるのだろうか?


 とりあえずその可能性は高いと思う。

 今回の件で目をつけられた可能性が高いんだろう。


 でも王都に行く?


 住民権はどうするんだろうか?

 何かツテがあるのだろうか?


「母さん! こっちこっち!」


 力強い野太い声。父さんの声だ。


「はーい、父さんっ!」


 母さんの飛ぶ速度が上がったのか、身体を押す風圧がどんどん強くなっている。

 ちょっと痛い。

 身を起こそうなんてことはできない。

 万が一落ちたら死んでしまう。


「母さん! そんな速度出したら危ないぞ!」

「はーい、父さん!」


 感じるほどに速度が落ちていく。


「母さん!」

「父さん!」


 あー、はい、ごちそうさまです。




「いやー、お熱いですな~」


 からかいの色が強い、優しそうな男性の声が聞こえた。


「ニキさん、今回はお待ちいただきありがとうございます」

「いや、あのケンさんを旅の護衛にできるなら少しは待ちますよ」

「妻のエリです、今回は私たちを乗せていただきありがとうございます」

「大した場所もとらないですし、全然問題ないですよ」


 大して場所をとらない……?

 家財道具はどうしたんだろう?


 俺は乳母車の中で立ち上がり、その縁につかまった。

 目の前には緑の帽子を被った若いお兄さんの姿。

 たぶん、この人がニキさんだろう。

 青い目が興味の色をたたえている。

 ここで印象に残ると後々仲良くできそう。


 それに行商の人はいろいろな街の情報を知っているはず。


 訪ねた街だけとはいえどういう状況になっているか、知っているということは大きい。

 1つの場所に留まっているとその場所の色には詳しくなるだろう。

 けれど国全体としての色調がわからない。

 商人つながりで他国の情報も入ってくるかもしれない。

 情報はあるだけで視野が違う。立ち回りも工夫できる。


 ここで何としても印象に残らないといけない。


「ニキさん、ありがとうございますっ! 僕はリクっていいます!」

「おや、お可愛らしい、何歳ですか?」

「2歳ですっ!」

「……す、すごく賢い子なんですね……」

「「私たちの自慢の子です!」」






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