表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/383

157、じー……

 もやもやする。振り返りはしないが、玄関でリク君が見ているのは間違いない。

 こうするのが正しい選択だったと思う。もっと早くにするべきだったとすら思う。

 しかしこれ以上早くに出来るだけ円満に自由を得るのは難しかったのではないだろうか?


 どこのタイミングで俺は他に自由になれた?

 ルート的に学校卒業後とかだろう? そこまで耐えろと?

 それが出来たら俺はここにいない。


 赤ん坊の段階で家を出るのは大分きついぞ。

 今の段階でも大分強引に出たとは思うが、この体もないのだ。ムリだ。

 産まれて3年で家から出る。捨て子スタートには負けるが早い方だろう。


 身体の自我も育ち、自分の身体も手に入れて、これで誰かに憚る事なく生きられるのだ。


 これでいいのだ。それよりも外に出たんだ。外を観察しなければ。

 いつまでも過去を引き摺る必要はない。過去を引きずっても何も手に入らない。

 あぁ、今日の空は曇っている。陽の光は見えない。


 雲の色は黒く今にも雨が降りそうだ。

 今日の天気も考慮して服を選んでいた可能性がある。

 だとしたら家の中で考えていた事がバカらしい。


 雨具として用意したとしたら、今回の服はもっと早くに用意された可能性が高い。

 規格化されたサイズで工業化された精算システムの存在が考えられる。

 このポンチョの下に着ているワンピースだってサイズがぴったりなのだ。


 今歩いている地面も色々とおかしい。

 表面がごつごつとしてとても摩擦係数が高そうだが、見た目は前世のアスファルトで舗装された道路にそっくりなのだ。

 ところどころに現代の知識が見えるのはお馴染み過ぎて笑えてくる。


 転生者が文化を汚染していると考えるのが筋なのだろうか?

 ある程度隔離しても便利だからと使えば自力での発展で見えてくる特徴的な進化などが薄れてしまうだろう。

 どうやって知識を引き出すかに重点を絞り始めていたら末期だな。


 ただ転生者が気持ち悪がられているのは間違いないだろう。

 いつだったかの商人さんがそんな雰囲気を持っていた。

 そう考えたら余程身近に転生者がいない限り敵愾心を持って負けたくないとか思っていそうだ。


 もしかしてこの樹脂を使う文化がこの世界の特徴なのだろうか?

 衣服から住居、道路に至るまで何から何まで使っている。

 燃えにくく、硬く、加工しやすいと考えたらすごい便利だろうな。


 となるとここの人類の繁栄のお供は樹脂文化だったとか?

 樹脂で尖らせた穂先がついた槍を使い狩猟を行ってきたとか?

 金属はあまり見かけないのも気になる。


 赤ん坊の側に金属を置かないのはアレルギーとかを気にしているのかな? とか思った。

 けれどそれにしても過敏だなとも思ったが、そもそも金属は普段使わない可能性があるかもしれない。

 普通の樹脂は熱に弱い以上、火をあまり使わない文化の可能性が高い。


 多少温めるだけなら火属性の魔力を利用すればいいのかもしれない。

 リク君の母親がそうやって粉ミルクを作っていたのを見かけたのだ。

 人間がこうして版図を広げているのだ。何かしらの理由があるだろう。


 地球であれば周囲のモノから火や毒に薬、そして道具を作り、罠を使うなどの能力を持ったからだった。

 そして他の動物はそれに対応できるだけの力を持たず、一定以上の版図を持てずに終わったからだと思う。

 ある森である動物が増えたら意図的にその動物を狙って狩猟するとかな。


 昔読んだクロマニョン人とネアンデルタール人の生活を描いた物語、あれはどこまで事実を基にした作品だったのだろう?

 両者の衰退と繁栄の理由が緻密に描かれていて、両者の混血がいた可能性なども見えていて面白かった。

 動物との関わり方、本草学などについていて触れられていて、薬学に興味を持ったきっかけだったな。


 大学についての話はいいか。結局何も出来なかったんだ。あそこでは。

 あそこがあったから自由でなければいけないと思えた。

 上から抑えつけられるのがいやだった。状況も分かっていないのに上から口を出されるのはもう嫌だ。


 空の色は黒さを増し、今にも雨が降りそうだ。

 あの家と次の家までの距離は100mくらい離れているだろう。

 他の家と隣接している家の間は5mくらいだ。


 隔離している施設だなとよくわかる離れ方だ。それに周辺の家々から視線を感じる。

 露骨に視線を向けているわけじゃないが、意識がこちらに向いているのがよくわかる。

 ゴーレム化した直後だ。監視は特に厳重なのは間違いない。


 教室に入った直後に浴びる視線とかってどうして圧力を感じるのだろう?

 目を向けるだけ。目は刺激を受け取る器官だけれど、放出する器官じゃない。

 視線を受けた事で感じる圧力は脳の誤認なのだろうか?


 それにしてはこの感覚を知っている人はとても多い。

 本に書く程感じている人やSNSなどに書く程感じる人はけっこういる。

 少なくとも俺1人の感覚ではないだろう。


 そういえば空気を読むとかもそうだ。空気にはそういったエネルギーはないはずだ。

 言いたい事は分かる。だがそれは視認した事実から想定できるこうするべきだという圧だ。

 認識していなければ気づかないモノで間違いはないだろうか?


 俺は視線を感じていると思っているが、これは思い込みなのかもしれない。

 だがそれは「ここから見られている可能性がある」という警戒心が生んだもののはずだ。

 対処法を想定するには丁度いいだろう。


 教室で不意に入った人を見たとして、見た側は反射的に見ただけだから何も考えていないと思う。

 そう思うと視線が集まったからといって、思考のエネルギーが相手に伝わっているとは思えない。

 視線が多数集まる事で質より量という事だろうか? 量があれば気づけるエネルギーがある?


 思考にエネルギーがあるというのはさすがにないか?

 魔力的な感じだとありそうな予感がする。

 だとしても荒唐無稽でしかないか。


 精神的な不良が肉体的な不良になるのは自律神経が関係している。

 俺が魔力を回したのも肉体の反動を利用したモノだ。

 結局、物理的な経路が関係しているのだ。


 血の流れを早くしたいとか、ここに血を集めたいと思っても、直接的には出来ない。

 けれどもここに力を込めてとか、逆立ちしてとか間接的に流れを変える事は出来る。

 ……似た感覚をある程度学習したり、特定の行動を反復練習すれば、そこまで意識をしなくても操作する事は出来るかもしれない。


 あまり現実的じゃない。何年も修行をして、呼吸をする様にとかのレベルじゃないと難しそうだ。

 まぁ、どちらにしても物理的に操作を行っているのであって、意識だけで操作しているわけじゃない。

 思考だけでモノを操作する事には俺は否定的になる。


 魔法にしても魔力というシステムにエネルギーの操作と魔法の製作を委託しているのだ。

 意思の力で体の外のモノに影響を与えるというのは出来ないと思う。

 視線には何の力もないはずだ。……それこそ魔法を使わない限り。


 やはり魔法って万能過ぎるな。それが全ての言い訳になってしまう。

 使用する魔力の量によってできる事は変わってくるのがせめての救いか。

 使用した魔法から相手の魔力量を推測して出来る事出来ない事を多少推測できるだろう。


 アリかゴリラか重機かを判別する程度の精度でしか現状は推測出来なさそうだな。

 もやしかゴリマッチョかくらいを判別できる程度に推測能力を上げたいな。

 髪の毛で魔力を吸収できるなら近場を通り過ぎれば吸収量から測定できるかもしれない?


 で、窓から色んな人が見ている気がするのだけれど、ちゃんと俺はフードを被っているよな?

 もしかしてユエさんに布教された狂信者が周辺にいるのでは?

 呼べば行きますというのは、狂信者という追跡カメラがあるからの言葉だったのか?


 視線に意識が割かれて、まるで周囲の建物や植物などに集中できない……!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
gqch13hqlzlvkxt3dbrmimughnj_au0_64_2s_15


gto0a09ii2kxlx2mfgt92loqfeoa_t53_64_2s_d
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ