146、妨害工作
魔力を回し圧縮しなお速くなお速くと急かしていく。
ゴーレム化に必要な魔力量はわからない。
魔力の器を自分で作ると考えればニーナの時よりも必要になる可能性がある。
表のリク君はふてた。何をしでかすかわからない。
子供だからなおさらだ。子供には大人の常識なんてものはない。
大人にはミスに陥るだろうと無意識に切り捨てている道を選択する可能性を持っている。
想像力の欠如? いや、あれはきっとこうなるだろうという実験の正解を求める行為に近いはずだ。
もちろんただこうしたいと出来ないとわかっている事を言う事だってあるだろう。
それにしたって親の力であれば出来る可能性を知りたがっているかもしれない。
魔法という力でどこまで出来るかわからない俺と同じもんだ。
先駆者はきっとここまで出来ると見て知っているだろう。
俺はまだ出来ないと明確に分かっているモノを知らない。
もちろんエネルギーとして見た場合の特性は多少は把握したつもりだ。
けれどこれをしたい、あれをしたい、そう考えた場合今のところ全部できていないだろうか?
この力は便利すぎるんだ。出来る事の底がまるで見えない。
まぁ、いい。それはいいんだ。魔法は便利だ。子供にとっての親は魔法みたいなものだ。
何がどこまで出来るかなんてわかりやしないんだ。だからどこまでも願う。
自分の都合のいい方向に流れないかと思いながら頼む。皮肉みたいな話だな。
この世界には本当に魔法があるんだ。
それも想像して出来ない事が思いつかないくらいの便利なモノが。
ある程度の条理に従えば出来ない事が思いつかない。そんな代物だ。
ふてたリク君がもし何かするようであればとても面倒な事になるだろう。
変な邪魔をされた結果、魔力の器が壊れていたらすぐに俺は死ぬことになるだろう。
ニーナの手伝いがあるから最低限の形にはなるだろう。だが不完全になるのは怖い。
俺を1番殺す可能性が高いのがリク君だというのはとてもおかしい。笑い話だな。
これを聞いているだろう、心優しいリク君はきっと歯噛みする事だろう。
余計な手出しは俺を損ない、結局俺を殺す事になるのだから。
出来ない出来ないというとやってやろうとしてしまうかもしれない。
それは俺は望んでいない。それに俺が外に出たところでリク君は変わりはしない。
むしろ面と向かって話す事が出来るのだから都合がいいのではないだろうか?
「うそつき」
俺がいつ嘘をついたと言うんだ?
俺は言わない事があっても嘘をついたことは無いぞ。
嘘に何も得などないのだから。信用をなくし、借りる手をなくすだけなんだからな。
「君はきっと何も話などしないよ」
それでは今の俺はなんだと言うんだ?
「やけっぱち」
随分と冷静なやけっぱちだな。
「今嘘ついた、全然冷静じゃないじゃん」
いったい何を言っているんだ?
「君は自分に嘘をつく。もっともらしい事を言って自分を騙す。君は自分も信じていない。
そして君は考えても言わない。言えない。それを言う事を恐れているから。
君は何もかも恐いんだ」
だからなんだ。怖くて何が悪い。
この積み木細工の世界はいつだって歯車1つ欠けたらレールを外れるんだ。
代わりのモノが来る? それは俺じゃない。俺じゃないんだ。
世界は歯車が1つ外れたところで変わらない。
確かにそこにあった歯車は別の物に代わるだろう。
他の人から見た世界は何も変わらないはずだ。
だが壊れた歯車から見る世界は全て違うんだ。
「君はとても寂しいんだ」
だからどうした。
「君の思いはわかる」
わかってたまるか。
思考のほとんどが読まれている状態で、言葉だけで行動を縛るのは難しいか。
そんな器用に言葉を操れるんだったら俺はこんな苦労なんてしていないんだからな。
理屈を理解したところで、技術が実践もなく身につくわけもない。
「僕で実践する?」
はいはい。
まぁ、自分を人質になんてゲスい真似は俺には出来ないか。
そこまで俺は俺に価値を見出してなんかいないから。
ゴミを質にしても行動を封じられるわけないだろ。
「そんな事言わないで」
臭い。綺麗事は口にしてもいい事なんてない。
そんなものを俺は求めていない。そういうのは求めている人に言えばいいんだ。
悪魔に説法をしても意味ない。
「君は悪魔じゃない」
悪魔だよ。利用価値を中心に考えるヤツが悪魔じゃないわけないじゃないか。
人非人。人でなし。それが俺にあった言葉だろう。
感情を計算して自分の都合のいい方向に持っていく方法ばかり考える悪魔だ。
そんなの多少は? 多少じゃなくてそればかりだ。
頭がおかしいのは間違いない。
俺はいいヤツではないんだ。
「ガーデニングとかペットを飼って自然に溶け込みたい」
だからなんだ。悪いか?
いや、悪魔が悪い事以外をしてはいけないか?
悪いヤツだっていい事をしたくなる時があるだろう。ただそれだけじゃないか。
悪いヤツは自分の欲求を人のルールの中で抑えきれないんだ。
抑えきれないから悪いヤツなんだ。
越えてはいけない一線を越えてしまえるから悪いんだ。
俺の心はもう既に越えているんだ。何もしていなくても越えているんだ。
越えているのを見せないように隠しているから善人に見えるだけだ。
いや、隠しきれていないんじゃないか?
「全然越えていないよ。むしろ遠いよ」
それは行動していないだけだろ。
人を傷つけたり盗んだりとかはやる意味を感じないだけだ。
俺はきっと誰の迷惑もかけないと思えば何でもするだろう。
「ニーナ達に命令も出来ない癖に。人の自由を侵さないといって絶対しない。
ねぇ、なんでそんな人が悪人ぶっているの? 昔に何があるの?」
何もない。何もない。本当に何もない。
「嘘つき」
もういい。認めないなら認めないで構わない。
俺が壊れているのは確実なのだ。俺は倫理感がおかしい。
結果的にしないだけであって、必要であればなんでもやれる。
何の気負いもなくやる事が出来る。
「また嘘ついた」
知らんっ!
「虚勢ばかり。嘘つき。何も信じてない。今度こそは成功させると息巻く。
どこが気負いがないの? 気負いしかないよ」
「ずっと1人で、ずっと悩んで、気負って、君はなんで頼らないの?」
「頼ればいいのに。話せばいいのに」
そんな事できるか。何も決まっていないのに何を話すというんだ。
「そうやって人を見ない。君の中で決まった事だけ周囲に通達してお終い。
それでコミュニケーション能力が! ってコントをしているの?」
うるさい。
「全部自分で解明できると思っているの? 目の前の事に憶測を立てて、本を読めば解決するの?
1人よがりで井の中の蛙しているだけでしょ」
うるさい。
「君はいつまで周囲を決めつけるの? 話してみようよ」
気軽に言うな。俺を見ているのだろう? 何故そんなに簡単に言えるんだ?
あぁ、そっか。リク君にとってはそれは簡単な事なのだろう。
俺にはとても難しい。俺とリク君は違うんだ。
「逃げるの? 出来ないからってやらないの? 逃げてないとか言わないでね?」
うるさい。うるさい。うるさい。
そもそも俺に話す内容などない。
人と話す前に結論が出ているんだ。
相談する内容なんてない!
「その結論を話せばいいのに。1人では間違う可能性があるなんて君なら知っているでしょう?」
リク君。君は俺の感情の逆撫での仕方をよく知っているな。
そうだな。結論を話せばいいだろう。で、それは誰にだ?
俺個人の話だ。誰に話せばいいというんだ? 俺には想像がつかんな。
「ニーナとかネネとかたくさんお仲間作ったのに? ねぇ、君は何を怖がっているの?」
リク君、君はいったいどれだけ俺を引き留めたいんだ?
こんな自己中を引き留める価値はない。
君には十分な思考能力もあるんだ。俺がいなくても将来は安泰じゃないか。
むしろ俺がいると将来が怪しいぞ。お願いだから引き留めるな。
ニーナ
0歳(???歳)
役職:リクのゴーレム
属性:無
魔力:容量は0等級、産生能力はなし
モデル:ゴールデンレトリバー
体高:3m
リクの初めて作った生物型ゴーレム。中身は古代より存在する魔力。本人曰く元転生者。人の世を長く飛び回り観察をするばかりの数千年を過ごし、若干人と話すのが慣れず話すという機能を忘れがち。今まで見る事だけしかできなかったためか、リク君に対しお節介を焼きたくなる節がある。犬の姿になった事で陽だまりで眠る事が好きになったり、カナさんにブラッシングされたり、神獣扱いで待遇が良かったりで現在最も色んな意味で自由を満喫しているのは内緒。魔法を吸収する毛皮や魔力時代の能力で身体に蓄えた魔力を操り高効率の身体強化魔法を使い戦えるため、ガーディアンとしての能力は高い。幼少リクであればくわえられる大きさの口なので、緊急の際はニーナの口の中に入る事でタクシーにする事も可能。水陸両用、山岳などのオフロードもへっちゃらなのでタクシーとしてとても有能。