表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/383

144、2人

「今日体育はないんだー」


 ルイ君は時間割を見て残念そうに言った。

 体育がないとなると俺は図書館に行くべきなのだろうか?

 特別クラスって試験はあっても授業がないんだよな。


「ルイ君、授業頑張ってねー」


 サラ先輩は教室にいたが、カク先輩マル先輩は図書館でボードゲームをしていた。

 特別クラスって自由過ぎないか? いや、それを許されてしまう程勉強能力に格差があるのだろう。

 中学生に混ざるには体格的に難しいとか、友人を作れとか、そんな意味合いがありそうなクラスだ。


「頑張るー!」


 実際問題、同年代の友人というのはいろいろな意味で重要なのではないだろうか?

 昔の俺は出来なかったが、共通項を見つけて仲間意識を醸成して、横のつながりを作るとか。

 その過程で異物が弾かれるのはお笑いだが。


 単一集団で目的もなく行動を共にしていれば、行き場のない力が異物と認定されたモノに行くのは当たり前の事だろう。


 人によって得意な事は違う。人によって苦手な事は違う。人によってやりたい事は違う。

 けれど同じ空間にいれば互いに互いの事を意識してしまう。

 空気を共有する事になり、グループで共有のモノから個人のモノ、互いの認識が、互いのそれまで培った常識がぶつかり合うことになる。


 人は3人いれば派閥ができるという。

 意見の強い人が引っ張れば集団として固まるのはある意味当然だろう。

 チームは簡単に作られ、意外と長続きし、簡単に崩れ去る。


 近くにいたから。たまたま話があったから。利害が一致したから。

 理由なんてなんでもいいのだろう。SNSですら気がつけば自分の所属するグループが出来上がっていくのだから。

 そして仕事が忙しくなったから、時間が合わなくなったから、引っ越ししたから、常識の食い違いから、人間関係のもつれやら様々な理由で簡単に崩れ去る。


 この混沌とした世界で役に立つのはコミュニケーション能力だろう。

 人と仲良く話すとまで行かなくてもいい。ただお互い不都合がないように話を纏められる力だ。

 それがあればどこに行ってもやっていく事ができるのは間違いない。


 イソップ寓話の卑怯なコウモリみたいに八方美人をするのがいいわけじゃない。

 集団でいれば発生する問題を解決できる力が必要なのだろう。

 これには問題を見つける力が必要か。人に問題を相談されるくらい信用される必要があるのだろう。

 この人ならこの問題を解決できるだろうと見られる能力が必要だろうし、相談される程度に親しい必要もある。


 特別クラスはどういう位置づけであるべきなのだろう?

 勉強関係で高い能力があると学園から保証されている人材なのだ。

 自分の得意分野を活かし、他クラスの子を集めてチーム作成?

 この自由時間に他クラスの授業や状態を査察して側近を固めていく?


 いや、別に自分がリーダーをしなくてもいいのか。

 リーダーはやりたい人に任せて、自分は参謀的な立ち位置になる方法もあるだろう。

 リーダーが気に入らなければ別の都合のいい人を見つけてリーダーやってって頼めばいいだろうし。


 サラ先輩がやっているような同じクラスの人を纏めるのはある意味非効率か?

 いや、リーダー格を従えて幹部化すると考えたら違うな。

 リーダー格を集めて組織として発展させるというのは王族として適切な振舞だろう。


 少等部をサラ先輩達の支配下におけば今後しばらくはサラ先輩達の手駒が供給され続ける事だろう。

 そうなれば幹部階級を軒並み自分の息のかかった人に変えられる可能性がある。

 そうしたらサラ先輩は事実上のトップに成れる。王様になる必要もなく。


 マル先輩やカク先輩はボードゲームをしていた。

 これは何の意味があったのだろう? わからない。

 いや、ただ遊んでいた? 本当にそれだけだろうか?


 遊ぶのは重要だ。人の考え方がある程度わかるのだから。

 打ち方指し方でどの程度の思考が出来るのか判別がつく。

 また心理戦をしかける事で相手の内側に踏み込む事が出来る。


 またボードゲームには肉体的能力が関係しない。

 どんな相手とでも対等に戦う事が出来るのだ。

 経験に左右される部分は大いにあるだろう。だがそこは想像力で補う事が出来る。


 遊びという事で対人におけるハードルを下げる事も出来るだろう。

 オセロという傍目に見て難しくないゲームならなおさらだ。

 ゲームのやり方も簡単だから少等部でも頭のいい子ならすぐに適応できるだろうし、自分たちの輪に混ぜやすい。


 自分の得意としているフィールドに人を乗せたら後は簡単だ。

 そのまま自分のペースに乗せてゲームをして遊べばお友達(意味深)だ。

 実際、俺もそうなった事だ。適度に勝たせて褒めればなおさら関心を引ける事だろう。


 文官はこういう方法で集めていけばいいか?

 武官は体育の時間で集めていそうだな。

 カク先輩は見た感じ武官よりの気質に感じるし、そちらで集めていそうな気がする。


 考えれば考える程歯車が噛み合っているんだな。

 もちろん完全にそう上手く歯車が回っているわけじゃないだろうが。

 その他のカバーをサラ先輩がやっているのだろうか?


 それで俺はどう立ち回るのがいいだろうか?

 ルイ君を隠れ蓑に参謀型で立ち回る? 文官トップに武官トップと来たら庶民トップがいてほしいか。

 まぁ、俺はゴーレム化するわけだからやる方向は考える必要はないか?


「行かないで」


 ゴーレム化したらすべての関係がリセットとまではいかないだろうが気にする事は少なくなるだろう。

 少なくとも今俺がこうやって現地リク君に身体を間借りしているような気持ち悪さはなくなるだろう。

 ゴーレムとなれば誰かに狙われる可能性もあるけれど、だからといってそこに不安な気持ちはない。


「行かないで」


 ゴーレムとなった後はどうしようか?

 希少な存在という事で狙われるんだろうか?

 それとも神獣という扱いでもされるんだろうか?


「行っちゃヤダ」


 ニーナが手伝ってくれるならまず器の製造は問題なく出来るだろう。

 どれくらいの性能の器が出来るのだろうか?

 出来たら自衛が出来る様に容量の大きな奴だと助かる。

 まぁ、それには用意できるだけの魔力がなくちゃだめだな。


「僕の中から出ていかないで」


 周囲に目をやっても辺りには本しか見えない。

 そういえば図書館に向かっていたんだったか。

 現地リク君は誰に向かってこの言葉を言っているんだろうか?


「君だよ。僕の中の人」


 人か。たぶん一応人だな。

 俺に対して現地リク君は、リク君は言っているんだな。

 そうか。リク君には俺の声がしっかり聞こえるんだな。


「聞こえるよ」


 あー、うん。とりあえず初めまして? 互いを認識しては初めてだろうからな。

 リク君には俺の声が聞こえるのか。俺にはリク君の声は聞こえないのに。

 不思議だな。


「そうだね」


 多重人格を思い出すな。この関係は。

 辛い事から逃げるために対応できる新しい人格を創り出してしまう。

 その人格からはメインの人格を知れるけれど、メインの人格からはその人格の事を見れない。


「わかんないよ」


 現地リク君というのはもしかしたら俺の罪悪感から作られたものかもしれない。

 その真相は俺にも君にもきっとわからない。

 ダメだな、思考がまとまらない。


「僕はきっと元からいたんだと思うよ」


 その言葉はどうしたら信じられる?

 その言葉は気休めのために言われたとしか思えなくなる。

 サブ人格がメイン人格を守るためにつく嘘か、現地リク君が本当にそう思っているのか、俺にはわからない。


「僕にもわからないよ」


 いったい何時からというのもおかしい。

 それはどちらの場合でも初めからと言うしか答えがない。

 俺は君がどちらなのかを判断できない。


「そんなのどうでもいいでしょ?」


 何故? どうでもいいわけがないじゃないか。
























ハク

21歳

役職:学園少等部特別クラス教師

属性:水

魔力:1等級

髪色:水色

虹彩:黒


水の英雄。安定した実力と安定した精神で同世代を纏めていたリーダー格。面倒見いいけれど誰に対しても優しいその性格がかえって壁となっている。本人的には友達作りを頑張ろうとしている。壁を越えられたのは同年代の英雄2人だけだったりする。そして個人的に婚期が遅くなりそうだと思っていたミラ先生に結婚を先越されて焦っている。彼氏募集中。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
gqch13hqlzlvkxt3dbrmimughnj_au0_64_2s_15


gto0a09ii2kxlx2mfgt92loqfeoa_t53_64_2s_d
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ