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142、ニーナとの話し合い

「……君は本気のようだね」


 ニーナは俺をしばらく見つめた後深くため息をつきつつ言った。

 そこには諦めの色が濃く見えた。手伝わないなら手伝わないで勝手に行動するだろうという諦めだろうか?

 しょうがない、やれやれみたいな雰囲気が見える。


「もちろんだとも」


 手伝わないなら手伝わないで問題はなかった。

 少しかかる時間が増えるだけの話なのだ。

 実験の途中で殺害される危険はあったがそれはいつもの事だ。


 俺を見つめるニーナの瞳の色には深い呆れが混じっていた。

 どうしようもないわと言いたげだった。

 嫌なモノは嫌なのだ。可能性がある以上俺は俺になるべきだ。


「わかった。……それでは魂とは何と考える?」


 問いかけ? 問いかけか。スフィンクスの問いかけを想像してしまう。

 あれは問いかけに答えられないモノを食い殺す化け物だったか?

 だが実際ここでの回答次第で外れを引けば死ぬかもしれないだろう。


「魂は魔力を作り出しているモノで出来ているのではないか?

 そしてニーナは自分を魔力として生まれたと言っていた。それとニーナには前世があるとも。

 ネネはまだ詳しく聞けていないが、ネネにも前世があるのだろう?

 ゴーレムになる素質は転生者である事だとしたら、魂の質が違うのだと予測ができる。

 どういう風に違うかはまだ観測方法の目途がたっていないから何とも言えない。

 一先ず自分の内側にあるモノで可能性の探求を行う程度しかできていないが、今後やるとしたら自分の器に蓋を作れるか? の確認だろう。

 魔法として行うのは難しい可能性が高いから、自分で回路を作れるようにならなければならない。

 導線として使えるのは体毛とか血液だろうか? 体毛程度であれば魔法で作れるはずだ。

 魔法陣を作れる様になれば結果を観測していくといいだろう。

 自分で全部やる事を考えると寿命が先に来る可能性が高いが、上手く人を巻き込む事が出来れば手数が増える。

 人である必要もないか、単純作業用に単機能のゴーレムを作るとか方策はあるだろう。

 まだわからない事が多いが、出来る事が多い内はそこまで気にする事でもないだろう」


 ……頭の中身をそのまま言ってしまった。

 ここまで言う必要はなかったはずだ。

 見ろ、ニーナの瞳が引き気味になっているぞ。


 コミュ障のオタクが堰を切った様に話す様と何が違うんだ。

 情報圧で相手を押しつぶそうとするような真似は拒絶と何が違うというんだ。

 なんだ? 相手を危険視し過ぎて歯止めが利かなかったか?

 俺の裏面を知っている相手だからというのもあるか。


 全くもって情けない。人が理解できない行動は避けなければいけない。

 相手の理解の確認と共に話さなければそれはただの騒音にしかならないのだ。

 言葉ではないんだ。


「ごめん。一先ず俺は魂は魔力だと考えている」


 やってしまった事はしょうがない。

 過去は変えられない。過去は反省し、未来を見て、今を行動する。

 それ以上も以下もないのだ。


 ニーナの引いていた黒い大きな瞳は徐々に元の位置に戻っていく。

 ビビり顔というか驚いた時の顔は実家のゴールデンレトリバーと似ていた。

 元にした個体のフラッシュバックが起きているのだろうか?


 前世を思い出す時が増えているな。

 過去の俺が近くなっているのだろうか?

 あまり良くないだろう。


「予想していた以上に踏み込んでいたのだな」


 ニーナは呆れたような声を出した。

 その瞳は仕方ないモノを見るような色を帯びていた。

 敵意や危害を加える気配は感じられない。


 まぁ、この程度の内容だ。才のない俺に考えられる程度の内容でしかない。

 本格的に学問として取り組んでいる人からすれば鼻で笑う程度の内容だろう。

 単位を作れない段階で具体性に欠けた案件だ。


「憶測でしかモノを言えないから価値がない。

 ゴシップと同じで根拠に欠けるのも頂けない」


 単位は重要だ。正確に計測できるのであれば情報の補正も出来る。

 反証し正当な証拠を探す事もやりやすくなる。そんな簡単に求められるモノであるわけがない。

 正しい正しいと思っても、実際は偶然噛み合っていただけとかそんなパターンすらある。


 物理を少し習えばその式の立て方に大して前提知識がいらない事に気づかされる。

 数学もそうだ。あれも見れば必要な知識なんて本当に少ない。

 本当に必要な知識はあちこちに転がっていて、足りないのは思考と試行だと思い知らされる。


 思考がまとまらない。混乱が激しい。否定したいのか。肯定したいのか。

 認められない俺と認められたい俺が入り混じっている。

 きっと怖いのだろう。怖い。


 俺の前世の存在を知っているニーナ。それでいて傍にいてくれる存在。

 こうして寄りかかっても嫌がらないでいてくれる。

 そして前世の愛犬に似たその姿。突き放せないし近づききれない。


 そしてこのどうしようか? と悩むニーナの表情。

 味方に分類にしてもいいだろ! と頭の中で誰かが言う。

 そもそもなぜ死の危険を考えているのだろうか?


「リク殿。自身のゴーレム化について我が手伝おう。

 どうせ早いか遅いかの違いになりそうだしの」

「いいのか?」


 ニーナの黒い大きな瞳を覗き込んでも真意なんてわかりやしない。

 表情は呆れとしょうがないという色が混じっている。

 これは演技なのだろうか? わからない。


 手伝うと言っていたがどうやって手伝うのだろう?

 魔力の同士が周囲にいるのだろうか?

 魔力の同士の制限を解くという事なのだろうか?


 魔力が意図的にデータを狂わすという可能性もあったか。

 魔力がデータを狂わせ続ければ俺は間違った結論にしかたどり着けなかっただろう。

 そもそも魔法を使おうとしても使えなくなる可能性だってあったのか。


「ただ約束してほしい。魂の器を作るのはこれが最後だと」


 やはり条件があったか。だがそれはしょうがないだろう。

 やたらめったら魂の器を作られたら魔素の流通量が減る事は間違いないのだから。

 それ以外にも何か理由がある可能性だってある。


「わかった」


 人工的に魂を作る実験をする過程で歪な生物がたくさん生まれる可能性があるかもしれない。

 バイオハザードが起きたりしそうだな。

 不完全な魂で生まれた影響で自分を治そうとして周囲の生物を襲う生物とか。


 色々事故を起こす可能性が存在するな。

 試行錯誤の過程で何を生み出すかと考えたら控えさせたくなるだろう。

 他にも事情があるかもしれない。


 もしかしたら魂の創造の途中で生まれるだろう技術が危険なのだろうか?

 神様がシステムを築き整えた魔法が崩れる?

 いやシステムにはないイレギュラーを作られるのを嫌った?


「リク殿。それでは次の王都から外出する時にですな」


 人目に着かない場所でゴーレム化の魔法を使いたい。

 誰かに見られながらゴーレム化したら監視がつきそうだ。

 どうすれば回避出来るだろうか?


 隠れる事が習性にまでなっている気がする。

 堂々と人前に立ちたいと言いながら隠れるのはおかしいな。

 だが監視されるのは好ましくない。


 いっそニーナに外に連れ出してもらえばそのまま?

 いやそれは危険か。ゴーレム化したら魔力を使い切る寸前になるだろうしな。

 その状態で俺が生きていける可能性は低いだろう。


「次の外出はいつになるんだろうな……楽しみだ」


 魔力の充填期間も必要な事だし、どっちみち今すぐはムリか。

 今はゴーレム作成に向けて魔力を練り集めておく時間に当てよう。

 ゴーレム化したら後はきっと自由なはずだ。


カナ

21歳

役職:土のシスター、リク君お世話係

属性:土

魔力:3等級

髪色:赤

虹彩:とび色


ミラ先生と同級生のシスターさん。苦労性だけど能天気でカバー。色々と便利に使われやすく、仕事を押し付けやすいと思われている。実際、リク君の仕事を押し付けられた。色々と便利に使われる関係で一所にいる事が少なく、体のいい便利屋として使われがち。本人は色んなモノを見る事が出来て楽しいと思っている。あと人間関係がサッパリしているので、煩わしい事に遭遇する事が少なくて意外と快適に思っている。よく仕事を押し付けられているように見えるので、ミラ先生がその合間に割り込み押し付けすぎを抑制していたりする。ミラ先生がいい感じにしてくれるのでその関係もあり仲がいい。

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