12、王都住民権
「後3年……」
「あくまで目安です。
ですができたら王都に行ってもらいたいですね。
1等級も王都なら10年に3人ずつ程生まれてくるようですし」
なんで3人……。
「でも……」
「3等級と2等級でもその差は10倍近いんですよ?
等級が1つ離れる毎に10倍って考えてください」
つまり俺の場合、級の差が3つ下の母さんの1000倍は魔力あるのか。
確かに魔法の感覚は大きく違うだろう。
「魔力の使い方を教えられるのは級の差が1つが限度です」
差が2つになれば100倍近く変わってしまうからな。
「本当は教える側が1つ上なのがベストなのです。
力の感覚も近く、魔法の発動を抑えられるだけの力量があるので」
「むぅ……」
「リク君の場合あの光の強さからして、1等級ですらはるかに彼方、足元にも届きません。
過去に見たことのある魔力の鑑定でも、あのような光景は見たことありません。
それに鑑定するだけで全身の強化を行うというのも前代未聞です」
全身強化が起きたのはきっと肌の下ぎりぎりまで魔力をため込んでいたからだろう。
聞いたことがないとはいいことだ。
俺のようなマネをしでかした人はいないということだろう。
つまりオンリーワン!
「ですがだからこそ2等級の父親でも教えることはムリなんです。
魔力1等級の人なんてこの街にはいませんしここで育てるのはムリがあると思います」
「でも王都で生活をするなんてそんな住民権、私たち家族には用意できませんよ?」
王都に住むだけでも土の神様のご加護が得られる確率が上がるんだから、住民権だのもけっこうな資格が必要なんだろうか。
「住民権獲得審査なら私の方で申請しておきますよ、大丈夫です」
「シスターリンがですか?王子様から逃げ出してきたあのシスターリンがですか?」
王子様?
「あんなやわっこい子はタイプじゃないんです。
私は蝶よ、花よと育てられたあんな、女の子よりも女の子らしい男の子よりも、スパスパと物事を決める出来る漢が好みなんですよ」
男の娘な王子様?
リンさんは即断即決の漢が好きと。
めもめも。
「タイプじゃないからで、玉の輿を放り出し住み慣れた王都からこんな辺境の街に来ますか?」
「あまり王都から近いと押しかけてきそうで……。
王子様に押しかけられたら私がどうこうじゃなく、王子様の護衛の人たちが周囲に迷惑をかけてしまうし、ご近所付き合いもできなくなりましたよ……」
「……ご愁傷さまです」
ご愁傷さま。目の中の闇が深いぞ……。
「あと私、もう少しで17歳なんですよ?
そろそろ結婚考えないといけないのに10歳の王子様に好かれても困るんですよね。
王子様となれば引く手数多ですし、年齢差を考えると後々若い娘に浮気されてしまう可能性が高いです。
付き合わないという選択をしても夢が覚めるまでの数年、その数年で適齢期は過ぎてしまいます。
そしたら後はもう立場に惹かれて集まる人以外出会いなんてなさそうですし、そういう人ってけっこう後から浮気されたり、ドロドロの家庭模様を
王子様の一時の気の迷いで私の幸せな結婚が遠のくのは御免なんです」
シスター……。
「まぁ、それはさておき、元王都の神子リン=クーロンの名はまだまだ通用します。
住民権獲得審査の推薦状程度、用意するのわけないですよ」