125、枝は持ったか
人数が増えた。それならそれで隠れ方があるというものだ。
ルールとして木の枝を持ち続けないといけないが、人に紛れ込めばそう簡単にわからなくなるだろう。
自然物以外が増えると探し方も変わっていくのだ。
「ねぇ、君? ちょっといい?」
誰がルイ君側環境かわからない。だが全員が全員ルイ君側ではないだろう。
環境を自分側に偏らせる。具体的には味方にした人に枝を持たせればいい。
それじゃ、誰が鬼かわからない? 紐がついている棒を持っているのが鬼さ。
「この木の枝を持っててくれる?」
しかし鬼と言い続けて固定化してしまうのはダメだな。
何かに変えないといけない。そもそも鬼という概念自体排他的なモノだ。
昔の鬼といえば漂流してきた西洋人だとか外国の人だ。
「もし僕の事尋ねられたらあっちに行ったって言ってね!」
昔の日本人の平均身長は今よりもずっと低い。確か160cmを下回っていたはずだ。
そこにゲルマン民族系……は流石にない? だが6尺、つまり180cmくらいを想定し、かつ狩猟民族などの移動が考えられると思う。
平安時代の征夷大将軍、蝦夷、東北や北の方を恐れていた様に感じる。
「この木の枝で地面に絵を描いてみない?」
ロシアの方から南に勢力を広げていたと考えやすい。
だが誰かが主導したわけではないだろう。統一勢力がいたとは思えない。
いや、酒呑童子などの頭目もいた? 強い鬼の酒がウィスキー? 流石にないか。
「ヒャッハー! そこの木の枝を持てぃっ! いざ勝負っ!」
酒や怒りなどで紅潮した姿が赤鬼。血の気が薄く静脈で青く見える様が青鬼。
黄色人種の日本人からして見れば異質。そんな白色人種特有の色素の低さが血管の色を鮮明に見せたと考えられるだろう。
それによく考えてみれば赤鬼や青鬼は他の色の鬼に比べて昔話に出やすいと思う。
他の色にしても、垢が溜まって黒ずんで黒鬼とか、こじつければ他の色も説明できるんじゃないだろうか?
「リク君のバカーっ!」
北に比べれれば暑い環境。そんな場所にいれば腰パン1つで居たくなるかもしれない。
船で移動している狩猟民族が女性を連れてきているかといえばほとんどないだろう。
男しかいない環境だから現地住民をさらって来ていてもおかしくない。
「数は力だっ!」
……まぁ、いい。鬼が排他されるモノの象徴だと俺は考えている。
そしてその理由は見た目が異質だからだろう。言語が通じなかったという点もあったはずだ。
この世界に見た目による差別の概念を持ち込むのは許容できない。
もしもうあるとしてもだ。
そしてこの排他の概念を強めた時に誰が排他されるのか。
それは間違いなく俺だろう。俺が排除されないためにも排他の概念を取り除かないといけない。
鬼という概念自体を許容させてはいけない。
「木を隠すなら森の中っ!」
この世界では髪の毛や瞳の色がほとんど規則性が見えない。
魔力によって染まっているのもあるかもしれないが、それは1等級にまでいけば偏るのかもしれない。
遺伝で決まるわけでもなさそうだ。
「追ってーっ! あそこーっ!」
区別されているといえば魔力量だがそれは仕方がないだろう。
これによって出来る仕事が明確に違うのだから。
代わりが利かないから区別される。
「あのひもが目印だよっ!」
ルイ君の光属性の力やばいな。
俺が巻き込んだ子達をほとんど仲間にしてる。
何も説明せずに巻き込んだからだな。
「リク君っ! リク君の負けだよっ!」
流石にこの人数に囲まれたら逃げ場がなくなるか。
環境操作もほどほどにしないといけないな。
そうしないと逆襲される。
「ルイ君強いね~」
まぁ、今回はこれでいい。
あまり深く考えていなかったが、ルイ君の光の波動がリーダーポジションを作り上げている。
そして手当たり次第に巻き込んだから認知度が上がった事だろう。
「リク君のが強いよっ! 探すの大変なんだよっ!」
ルイ君がいい子過ぎて辛い。
ぷんぷんしているけど、ずるいとか一欠けらも思っていないだろう。
声に暗さがまるでない。
「ルイ君のが強いよ」
人を認める事ができる人は強い。
なにせ人は自分の事を認めて欲しくてしょうがないのだから。
承認欲求なんて言葉が生まれるくらいに。
「次は僕の番だよ! リク君に絶対捕まらないんだからね!」
ビシッと指を俺にルイ君が差した。
しかしこの人数でこのゲームをするのはつらい。
ひも付き棒持ちに対して追いかける人が多すぎる。
「ルイ君、今回は何組かに分けようよ」
他のグループを環境にする事もできる。
ひもだとどのグループか判別がしにくいな。
いっそ旗とか用意できないだろうか?
「どうやってわけるの?」
旗……、棒に布だ。
都合がいい布ってなにかないだろうか?
上のシャツを木の枝にでも巻き付けようか?
……怒られそうだな。
「手を上に出して、指を何本か突き出すのはどうかな?
同じ本数だったら同じ組。
人数が多すぎるところはもう1回。
今回は5人になったらグループが完成ね!」
木の枝なんだよな。
ここには色んな木があるし、葉っぱ付きの木の枝を選べば旗代わりになるんじゃないか?
桜組とか、竹組とか、持っている枝で組み分けすれば出来そうだ。
「ふむふむっ!」
ルイ君がすごい頷いている。なんか可愛い。
葉っぱが似ているモノだと出来ない?
グループ内で決めた種類の木の葉っぱを持てばいい。
それを符号にすればグループが判別できる。
「じゃあ僕は3番を出すっ!」
木の葉っぱを覚えるいい訓練だな。
周囲を巻き込めば平均化が起きる。
希少価値は下がるが、世代の評価が高まればそれだけ相対的に価値が見やすくなる。
「僕も3番っ!」
希少なものは異端として扱われやすい。
大多数の人にとってそれは手に入らないモノだから。
手に入らない人にとってそれは手に入る敵を強くするモノだ。
排除したい団体にとって異端と扱うには十分な理由だ。
「じゃあ、いっせーのであげるよ!」
異端にならない希少なモノ。
巨大組織に目をかけられているモノや完全に無害なモノだろう。
一般的能力だが能力値が異常なモノはギリギリだろうか?
本人の性格云々で難癖つけて異端にされるかもしれない。
「「いっせーのっ!」」
異端にならないためには同程度の存在を量産できればいい。
そもそも俺はそんなに能力値が高くない。最終的に勝てるのは魔力値くらいだろう。
俺程度の存在を超えられないわけがない。
「リク君僕たち2人だけだね」
思考能力がそもそもなのだ。突拍子もない事を考えられる頭をしていない。
人を楽しませられる会話能力が低い。諧謔を嗜む事ができていない。
してはいけない事そういうモノは考えられても生産性のある冗談を言えない。
「まぁ、そんな事もあるよ」
そもそも生産性のある冗談とはなんだろうか?
事実を絡めすぎると皮肉となってしまう。
かといって事実無根の事を言えば白けてしまうだろう。こいつ何言ってんだ? と。
「2番多すぎみたい」
してはいけない事を想像できる事はわかった。
ではするべき事は? あまりよくわかっていない。
していい事がわかってないから生産性がない。
「じゃあ、2番選んだ人はもう1度……いっせーのっ!」
していい事を想像しようとするとしてはいけない事しか思いつけない。
こんな低能など超える事は簡単だろう?
コミュニケーション能力があるかないかで世界の広さが変わるのだ。
「じゃあ、その組で遊ぼう!」
コミュニケーション能力が高く誰とでも仲良くなれる人はインスピレーションを得る機会に富んでいる。
1人で1つのモノを弄っていても、1人で試行できる回数に限りがある。
30人で試行すれば1日で集められたデータも1人なら1月かかるかもしれない。
超人的能力で数人分の仕事をこなせても数日かかるだろう。
コミュニケーション能力が高ければ手数も増えれば大量のデータも簡単に集められる可能性がある。
その重要なコミュニケーション能力が低い段階で俺は低能だ。
人と話せばコミュニケーション能力は本当に上がるのだろうか? 俺のコミュニケーション能力が上がる想像がつかない。
「枝は持ったかっ!」






