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113、お姉さんが来た理由

「リサお嬢様、お待ちくだ……あぁ、遅かったですね」


 テンション高いお姉さんが扉を開けると同時に俺の方に向かってきた。

 アパレル店員とキャバ嬢を足して2で割ったようなお姉さんだ。

 扉の向こう側でサラお姉さんの時の爺が少し服を乱して「しまった」という顔をしていた。


 このお姉さんはサラお姉さんのお姉さんなのだろう。

 サラお姉さんの表情は「ふしゃーっ!」と言いながら毛を逆立てる猫のようだった。

 尻尾も立ててガルルとうなったりもしそうだ。やはりサラお姉さんのイメージは猫だな。


「リサお姉様。ここにはどのような用事で来たのでしょうか?

 ここは私がリク君の歓迎会を行っているところですよ?」


 瞬間的な威嚇行為は取り澄ました顔に納め、坦々とした顔でリサお姉さんにサラお姉さんは切り出した。

 思わず出てしまった素の顔がアレだったのかもしれない。

 狐を装った家猫だろうか。野良猫ではないな。家猫だ。


 この2人の関係性はどうなっているのだろうか?

 リサお姉さんは犬っぽそうだ。大型犬。リサお姉さんからしたらサラお姉さんは可愛いかもしれない。

 だがサラお姉さんからしてみたら「やんのかコラーッ!」と潰されないように必死なのかもしれない。


「私もリク君気になってたんだよねーっ! 呼んだって聞いたから来ちゃった。

 ねぇ? リク君? 私と遊ばない?「私が呼んだの!」」


 我田引水か。だがしかし、ここで選択肢が増えるのは好都合だろう。

 今はサラお姉さんを優先した方がいいが、リサお姉さんの内情も知った方がいいかもしれない。

 ボス猫のサラお姉さんの周囲にはサラお姉さん第一主義の人で固まっていく事になるだろう。


 サラお姉さん第一主義が多くなると少数精鋭といえば耳ざわりがいいが、排他的になる。

 排他的であると直属の上司には詳しくても、他の同僚や上司についてわからなくなる可能性が高い。

 評価を求めて自分達だけ良ければ良いという道に陥ったら、毒の沼地だ。足の引っ張り合いだ。闇が深くなる。


「え、えっと?」

「リク君、返事しなくていいから」

「サラ? サラはお姉ちゃんに意地悪するの?」

「リク君は私が呼んだの。リサお姉ちゃんは関係がないの!」

「えー? ひどーい。サラのケチ~」


 リサお姉さんはサラお姉さんよりも頭1つ高く、リサお姉さんがサラお姉さんの前でいじけたふりをすると、ふんとサラお姉さんは鼻をならしすねていた。

 リサお姉さんはサラお姉さんにウザがられていそうだが、家族仲は悪くなさそうだ。

 家族仲が悪いようなら、ここの従者一同が出会わないように気を回すだろうな。その能力を生かして。


 だとしたら? どうしてここに訪ねてきた?

 理由は? 開口一番に「リク君」と言われた。つまり俺が目的の可能性が高い。

 どういう理由で? 人材の引き抜き? ありえない。家族仲は悪くないのだ。足の引っ張り合いをしているとは思わない。


 そうなると可愛い妹に近づくゴミくずの確認が正解か?

 ゴミくずだったら引き離さないといけない。そういった姉の使命感か?

 妹もそれが分かっているから「1人で出来るもん!」と言っているのか?


「あ、ほら、リク君が目を白黒させてるよ?」

「リサお姉ちゃんのせいでしょ! 今日は私がホストなの! 主催! 主催わかる? 主催!」


 この姿を見て気を許した関係じゃないとは思わない。

 思わないが、本当にリサお姉さんの目的がわからない。意図によっては危ういかもしれない。

 ポカポカと叩かれて笑っていても裏がどうなのかなんてわかるわけがない。


 それに従者達が誰の下に着くかで、今後の待遇が変わるかもしれないと思っていないだろうか?

 従者側の社会でも、誰が後継者になるのか、わかっていないのかもしれない。

 そこで誰につくかの権力闘争があった結果、ここにリサお姉さんが来たのかもしれない。


 そう考えると、このやり取りは対外的に姉妹仲は悪くありませんよ、そういったアピールになる。

 裏側では本気で権力闘争を行って、人材の奪い合いが起きていてもおかしくない。

 真相がわからない事には身の振り方がわからなくなりそうだ。


「リサお姉ちゃんには後で紹介でもしてあげるから今日はどっか行ってて!」

「え~? 私、今、用があるのに」


 用? リサお姉さんがなぜ俺に用があるのだろう?

 今ということは急ぎの用件なのだろうか?

 どうして急ぎの用件ができたのだろう? また何かあった?


「リサお姉ちゃん。それって急ぎ?」

「急ぎ、急ぎ。リク君の両親がこのままだと暴れかねないくらい心配しているって話だもん」


 そういえば実の両親についてが思考から抜けていたな。

 薄情なのだろうか? 俺は。薄情なのだろうな。

 自分の事で手一杯だといえばそうかもしれない。


 だが生まれてからの大部分を一緒に過ごしてきた親に対し、思考に上げる事が少なかった。

 薄情だな。目の前にしか興味がないのだろうか。だからダメなのだ。

 目の前の事に対しても甘いのに、育ててくれた人に対しても思いが薄い。


 思いが重すぎれば相手の重荷になるが、軽すぎれば鼻紙くらいの価値しかなくなる。

 重すぎず、軽すぎず、相手の荷物にならない程度の重さ。

 考えてみると難しい。普通の人はこれが簡単に出来ているのだろうな。


「え? リク君の両親今どこにいるの?」

「王城の1室。叔父様とお話し中」 


 大分、喫緊の事のようだ。それにしても急だな。

 何が原因でなのだろう? 入学のタイミングだから?

 入学の際にハク先生がいたな。あの先生は英雄だ。


 英雄つながりで交友関係があったのかもしれない。そこから両親に連絡がいったか?

 もともと両親と離れる事になった理由は部分的に問題がなくなっているのだ。

 魔力関係は要観察処分だろうが、爆発を気を付ける段階ではなくなっているはずだ。


 郊外で人の迷惑にならない場所で魔力を放出すれば問題ない。

 そう考えれば育てられない事情もない。放出できる場所に連れていく事もできる。

 自分達の手元に戻したいと両親が考えてもおかしくない。


「リク君。どうしよっか?」


 俺に聞かれても。会いたいか会いたくないかで考えると微妙なラインなのだ。

 前世の影響もあって、両親にまるで依存していない。

 本来依存していて当然の年齢だというのに。


 いや、そもそも人に対して会いたいとか思うのは依存であっているのだろうか?

 愛情という名の依存だと考えている部分はある。

 だがそれを依存だと、してはいけない行為だと断ずるのはおかしい事だろう。


「お父さん、お母さんに会いたい」


 って通常の子供は言うだろうな。それが当たり前だ。

 それが普通の子供なのだから、普通にならないとおかしい。

 異常な子供は受け入れてくれる人が少ない。


 俺が求めているのはドロップアウトした異常な進路ではない。

 普通の人が歩んでいた道だ。本来行くはずだった道だ。

 知らないモノを求めはしても、高みに届かなくなる道は望んでいない。


「僕はお母さん達に会いたいです」




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