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112、協力者になるためのプレゼン

「僕は魔法の研究に興味があります」


 この世界を読み解くに辺り、魔法という要素は無視することができない。

 神様という存在も無視することはできない。この辺りを疎かにすると危険だろう。

 現代の知識を使った行動は前世がばれる可能性が高いので今はまだムリだ。


 魔法の研究は無難な選択でもあり、俺にとっての興味の行く先でもある。

 サラお姉さんの役に立つかもしれない。立たないかもしれない。

 その辺りは不明瞭だからこそ手下になろうという媚を売っているようには見えないだろう。


 媚を売る段階で主体性が見えない分、信用しにくくなるものだ。

 ただ生きたいだけの、取るに足らないゴミだという判断をされたらお終いだ。

 それとギリギリの判定だが、俺の魔力量という特性を生かす形にもなる。


「僕は魔力が多い。この魔力をどうにかしないといけない。でも無駄にしたくないです」


 この魔力で困る事は多いが、だからといって育てた事を後悔するつもりはない。

 育てすぎたが、だから特異な事に絡むことができた。妙な事は何もないよりか面白い。

 ストレートに進んでいくのもいいが、平坦な道はあまり好きじゃない。つまらない。


 大草原、見ている分にはきれいだと思い、感動をするだろう。自分が小さく感じるかもしれない。

 だが俺はきっとしばらくしたら困るだろう。何を次の目標としたらいいかわからなくなるから。

 前世の俺なら体力的な問題ですぐ死にそうだな。


 生き足掻くために行動するだろうし、草とか食いそうだが。

 さすがに何も持たないで肉を手に入れられないだろうし、草を食うにしてもそれが毒があるか、栄養として妥当かとか判別がつかないだろう。

 なんで完全に大草原に取り残された場合を考えているかわからないが。


「そう。それはいいわね」


 ありきたり過ぎたか? サラお姉さんの反応が薄い。

 いや、具体性がなさすぎたか? 中身がなく見えただろうか?

 あまりいい反応をしていない。ゴミとして見ているかもしれない。


 もしかしてそういう演技だろうか? 俺を不安にさせて本性をさらさせるための。

 サラお姉さんの青い瞳は冷めて見える。

 猫のような瞳が演技? で今は考えている?


 もしここで具体的な内容を話し始めたら慌てているように見えるか?

 慌てて話すのは自信がない証拠や媚びるのに必死なように見えるか?

 落ち着こう。慌てずにゆっくりとしっかりと話せばいい。


「僕は体外に放出する微量の魔力から魔法を使える事を発見し、この技術の第一人者が僕である事は分かっています。

 ニーナやネネといったパートナーがいますので、これからも何かしら発見していく事は多いでしょう。

 ニーナやネネの存在は僕の今まで見た世界では関われた事がほとんどない存在だと分かっています。

 僕は彼らを作る事ができる。彼らは自分からその知識を教えてくれる事はないとしても、僕が読み解いていけば様々な力の使い方を知る事ができる。僕じゃなくても近くに人がいれば気づく事ができるかもしれない。

 短期的には基本的な魔力の使い方を覚え、その過程で検証を含め調べ事をしていきます。

 まだ先は分からないですが、今後はもっとできる事が増えていくでしょう」


 あの部屋の外の会話を聞いたり、周囲の反応を読み解けばこれくらいは推測ができる。

 だがこの程度しか推測ができない。まだ俺が自由に行動できる場所が少ないから、どこまでの技術が実用されているのか、まだ詳しい実態を知らない。

 世界を歩かなければ見えないモノが多い。


 知らないモノは知らなくてはいけない。

 子供の好奇心。子供の中には機械の箱とか壊してしまう子がいた。

 今、思えば知らないモノを知るために自分なりの調べ方をしていたのだろう。


 仕組みを理解しただけで満足であれば発展はない。

 仕組みを理解したら、別の仕組みと組み合わせられないかと考えてみると面白くなる。

 雷の仕組みを理解し電気を作り出したら、歯車や機構と組み合わせて機械が出来たように。 


 電気は使いやすいエネルギーだ。

 導線を伝いどこにでも移動でき、火力水力風力などのあらゆる方法で作り出せ、モーターという動力を回すだけではなく、コンピューターの信号にも使える。

 だが魔力はどうだろうか? その辺りの認識すらまだ俺はあやしい。知らない事が多すぎる。


「そう、けっこう考えてるのね」


 なんか呆れた声を出された。サラお姉さんは若干引いた目をしている。

 そういえばここまでの長文を口で言ったの転生後、初めてかもしれない。

 しゃべると思っていても、ここまでしゃべると思っていなかった、そういうことかもしれない。


 いや、そもそも3歳児がこんなに話していたら、前世の俺もビックリするか。

 いくら前情報で賢いと知っていても、そこまで異常という表現が似つかわしい程しゃべるとは想像していないだろう。

 ただ本当の天才児は未来まで考えて行動するだろうから、ただ知識だけ多いがり勉君とは根本的に違うだろう。


「考えないと僕は生きていけない」


 何が地雷になるかわからない。環境や命を左右する地雷だ。

 人の反応1つ見てもそこから読み取らなければ何がもとで死ぬかわからない。

 今回の地雷は俺が転生者である事。ただ嫌われる地雷とはわけが違う。


 俺は死にたくない。もう前世みたいにただ出来なかった事を悔んだりしたくない。

 前世は何が出来なかった? 束縛が多かった。勉強も人付き合いも何もかもが遠かった。

 そして結局何もできなかった。何1つ思った事ができなかった。


 生きていれば、働けば、そう思っていたが、結局何もできなかった。

 ワーキングプアと言ったか。あの状態は本当に先がない。体力がなかったから本当に先がなかった。

 だから今回の人生ではもう経済的にも体力的にも束縛されたくない。


「僕は自由が好きです。1人で行動するのも好きです」


 体力があれば、経済力があれば、あの環境からは抜け出せたはずだ。

 物欲なども持てなかった、タバコやお酒もしてなかった、ただ生活だけで精一杯になっていた。

 人に頼る事もできなかった。これは俺自身の業だ。友人と呼べるような人を作れないのは俺なのだ。


 考えている言葉の1割も俺は言えないだろう。

 人に話せる内容ではないというのが大部分だが、なぜ人に話せないかといえばこんな内容を話せるほど人と仲良くなれないからだろう。

 この内容で話せる人とはいったいどんな奴だ? むしろ気になる。


 俺と俺に似た奴だったら、確実に冷戦のごとき無言の探り合いになるだろう。

 どちらが先に心を病むか、離れるかになる。利益にならないからケンカはしないだろうが。

 闇だけが深まっていく暗黒空間になるぞ。


「でも1人ではできない事が多いことは知っています」


 別に格段に頭がいいわけではない。それでも見るだけでたいていのモノは分かる。

 正確に言えば見える範囲内の情報から予測できる内容が理解できるだけだ。

 大した事じゃない。人が誰しも少なからずやっている事だ。


 アイスを見て白かったらバニラかな? と思うくらいの内容だ。

 それも憶測でしかない以上間違っている可能性が高い。バニラじゃなくてホワイトチョコかもしれない。

 間違っている前提でそれでもあえて予測するなら。そんな内容しかわからない。


 ただ自分を納得させるための理由を見つけていくので、多少は人を納得させるような内容にはできる。

 事実はいつだって荒唐無稽だ。誰しもが納得できるような理由がそこにあるとは限らない。

 だから自分が納得できるような理由程度で全ての物事が語れるわけがない。


「だから僕は仲間が欲しいです」


 感覚が違い過ぎて異世界の生き物を見るような目をされるから、どう接すればいいのかがわからない。

 いつだってそうだった。挨拶はするが、それ以上の話をしない同僚とかたくさんいた。

 近寄るに近寄れなかった。話す内容があるわけでもないが、仲良くするという事は難しかった。


 今世ではそうはなりたくない。もう不自由はしたくない。

 ただ人生を全うに生きたいのだ。人は人と人の間にいるから人間なのだろう?

 前世の俺は人間じゃなかった。今世では人間として自由に生きたい。


 俺はできる事は何でもやりたい。


「ふぅん? そうじ「はーいっ! こんにちは! 君がリク君かな?」」



体調崩しやすい時期ですね。皆様もお気をつけください。

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