10、魔法の力
水晶の中で褐色の光が強まっていく。
そして俺の体が軽くなる感覚がある
魔力が力強くうごめく感触がする。
そして体全体が淡い褐色の光を放っていた。
「すごい……」
「……こんなこと、魔力の鑑定の場で見たことないです……」
母さんとシスターが呟いた言葉がとてもよく聞こえた。
あまり近くにはいないというのに。
普段なら聞き逃していただろうその距離。
今の状態の俺にはよく聞こえていた。
感覚も強化されているのだろうか?
「シスターリン!あの、この、えぇと、リク君は大丈夫なんですか!」
「わかりません……。こんなこと私も初めてなんですっ!」
慌てたような、母さんの心配の声が聞こえた。
シスターの困ったような声が聞こえた。
「ただ英雄ハク様の身体強化の魔法と似ているように見えます!
魔法を使った彼女は大海嘯で王都に襲ってきたドラゴンの尾をつかんで振り回し空高く投げ飛ばしていました!」
ドラゴンってどのくらいの大きさなんだろう?
空を飛ぶとしたら骨の中とか中空になってるのかな?
それとも魔力で空を飛べるのかな?
母さん空飛んでいたし。
「身体強化の魔法みたいなのね?……リク君っ!体!痛くない?」
「大丈夫!体が軽いだけ!痛みとかないよっ!」
「リク君!もう土属性の魔力だってわかったから戻ってきて!」
「はーい!」
同属性は互いに力を強めあう。
さながら共通する話があり、互いに共感できる2人が出会うかのように。
だから水晶も俺も励起したことから土属性だってことが母さんにわかったのだろう。
俺は慎重に体を動かした。
力の加減を覚えるため。
少しバランスが崩れそうになるけど体幹を意識。
上から釣り上げられているように意識して背筋を伸ばした。
足は軽く曲げて衝撃に耐えられるように、バランスが崩れても立て直しやすいようにする。
足をあんまり高くあげるとバランスが崩れるのですり足を意識。
「リク君!大丈夫?」
「大丈夫です!母さん!」
歩き方が変われば心配になるのだろう。
母さんは不安そうな顔をしている。
できるだけもっと自然に歩けるようにならないといけない。
普通に歩いてるように装いながら、背筋、膝、すり足を意識。
バランスが崩れてもすぐに対応できるように態勢を整えながら、俺は母さんのところまで歩いて行った。
「リク君?大丈夫?」
「はい!ちょっと力加減が難しいですが何とかできるよ!母さん」
「あの……つかぬことをお聞きするんですがリク君って今何歳なんですか?」
「リク君は今、2歳ですよー、ねぇ、リク君」
「はいっ!」
「……リク君ってとってもお利口さんなんですね」
シスターは微笑んでいた。
その裏側にどんな感情を隠しているのかはわからないけれど。