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103、図書館の2人

 サラお姉ちゃんがドアをスーッと開き廊下に出ると、まだ教室内にいる俺の方を見た。

 俺は手招きをしているサラお姉ちゃんの所へと歩いていった。

 来る時にも見た廊下だが、見れば見るほど前世の学校に似ている。


 クラスに対しての席の数が少ない。

 だが天井は白く、クラスの床は木目調。

 廊下の床は緑色。中央には白線。


 王都には転生者の色が随所に感じられる。

 王都は魔力量が2等級以上の人が多いからだろうか?

 生活に魔法を活用出来ないからかもしれない。

 魔法を使わないで利便性を向上させようと思えば前世の技術を使うのが効率がよかったのだろう。


「ここが図書室。たぶんここに2人いるはず」


 図書室の入り口は外開きのドアだった。

 これは本を載せたカートを押した時開きやすいようになのだろうか?

 引き戸だとレールが必要になり、車輪が引っかかるから? 引き戸は使わないのだろうか?


 クラスのドアが引き戸なのはたぶんドアの可動域が狭く済むからだと思う。

 パタパタとドアが開いたら内開きならドア付近の人にぶつかりやすく、外開きなら廊下を歩いていたら不意にドアが開くという衝突注意になるだろう。危険だ。


 憶測だ。ただの憶測にすぎない。ただ理由を考えた結果、こうなっただろうという予測。

 別に現代の学校を参考にした結果ではないかもしれない、ただ利便性を考えて発展した結果たまたま現代の学校に酷似しただけかもしれない。

 現代の学校に似ているからと言って、全て転生者の入れ知恵とは限らない。


「カクとマル。この図書室の会議室によく居座っている2人組」

「よろしくお願い致します!」


 物思いに入りすぎた。いつの間にか図書館の個室に入っていたようだ。

 見るとサラお姉ちゃんは男の子と女の子の肩をつかんでこちらに顔を向けさせていた。

 サラお姉ちゃんは彼らより1回り背が高いようだ。


 男の子は少し悪知恵が働きそうなタイプだ。邪道を好みそう。緑髪で紫色の眼。

 女の子はメガネの委員長さんタイプ。正攻法で坦々と追い詰めていきそう。金髪で水色の眼。

 幼馴染なのだろうか? 小部屋の中には将棋に似た何かが置いてあった。


「サラ先輩。この子は?」

「私達のクラスの新入生」

「は? 嘘だろ? 冗談にしても小さすぎないか?」

「マル。私もそう思ったが、ハク先生が新入生として連れてきたんだ」


 男の子の方がマルか。マル先輩と呼ぼう。お兄ちゃんはなんだか嫌われそうだ。

 となると女の子がカクか。カクお姉ちゃんと呼んだ方がいいだろうか?

 お姉ちゃんよりか先輩の方がいいだろうか? 公私の区別をつけたそうなイメージ。


「ちびっこ。名前は?」

「リクって言います! マル先輩!」


「猫かぶりだな。ちびっこ」

「ふぇ?」


 マル先輩は腰を落とし俺の眼を見て言った。

 マル先輩の眼は冷たかった。なんか変な声が出た。わざとじゃない。

 けしてわざとじゃない。


「マル? 小さい子をいじめないの。このクラスにこの歳で来る子なんだから猫被っていてもいいでしょ。

 それにその子が猫被っていなかったら対応に困るの私達でしょ? 猫の皮なんて後々剥げばいいの」

「カク? そうは言っても気持ち悪くないか? こういうの」


 目の前で進行している流れにちょっとついていけないんだが、どうしたらいいんだろうか?

 場の流れを持っているのはマル先輩だろう。カク先輩は若干冷たい目で怖い事言ってらっしゃる。

 この年齢の子供ってこうだっけ? 違うよな。物事を達観しすぎていないか?


「ならどうするの?」

「感情を引き出させる。こんな見え透いたぺらっぺらの猫の皮くらい、すぐ剥げるだろ?」


 あぁ、そっか。だから特別クラスの生徒なのか。

 普通の子供とはレベルが違い過ぎる。何か過去にあったのではないか? と思うくらいだ。

 仲間外れにされたとか。そういった事があるかもしれない。


「ふぅ~ん? やってみれば?」

「頭使うゲームとかなら対等か」


 俺の言葉は演技と言えば演技だろう。

 だが処世術といえばいいだろうか? 下手に言葉を尖らせればどこに刺さるか分かったものじゃない。

 刺さった末が俺の孤立という、処分までのカウントダウン、処刑台への階段を昇るようなものだ。

 俺はまだ死にたくない。


「何ならいいと思う? サラ先輩」

「オセロとかいいんじゃない? ルールが簡単で決着も分かりやすいでしょ」


 転生者の文化侵略はけっこうなモノかもしれない。

 現地で発展したゲームとかもあっただろうに。

 いや、ただ今はルールを知らない子供にもわかりやすく、説明を手早くできるゲームとして選んだだけかもしれない。


「オセロのボードはどこに置いたっけ?」

「石と木はあったわ」


 石と木? 白黒で両面を作る手間を惜しんだのか?

 いや、自前で加工技術がないけれど、遊びたかったから代用品を使ったのかもしれない。

 でもオセロなのに白黒じゃないのか。それが間違ったまま広まったとか。


「リク君。さてゲームをしようじゃないか? 楽しい楽しいゲームの時間だ。

 机……じゃ、ボードが見えないか。じゃあ床だな。そこに座ってくれ」

「ゲームですか?」


 ボードゲームなら目で見て判断できるから、説明が簡単にできるだろう。

 それでいて駆け引きとか、思考問題がある。

 そして転生者でもなければ一日の長があるので、有利に事を進められる。


「そうだ。ゲームだ。楽しい遊びの時間だ。クラスメイトとの交流は大事だろう?」

「はい! どんなゲームなんですか? マル先輩!」


 有利に事が進められれば、圧勝する事も、接戦を演じる事もたやすい。

 それにゲームは相手の思考も見やすい。

 どういう風にゲームを進めていくかで、性格が出てくるだろう。


「ルールは簡単。木が先攻で石が後攻。置かれているコマ……木や石の事な。同じ種類のコマに挟まれたら間にあるコマは全部同じ種類のコマに変える。最後に自分のコマが多かった方が勝ちだ」

「そうなんですね……頑張ります」


 マル先輩は胡坐をかいて座るとボードの上で手を動かして説明していた。

 大まかなルールは変わらないようだが、ボードのマスの目がちょっと少ない気がする。

 木と石も数を集めるのに苦労したのだろうか。


 地面にマス目引いて、木と石を使ってオセロ?

 それだったら大した器具を必要としないでできるかもしれない。

 なんだか涙ぐましい努力が垣間見えている気がする。


「それじゃあ、オセロ開始だ」

「開始です! 僕が石なんですね」


 前世でオセロはあんまりしていない。強くはないだろうな。

 せいぜい角を取られないようにしたり、盤面の端の方にいち早く出て、相手のコマの進出を防ぐくらいしか戦略は知らない。

 取られないコマを増やすゲームであり、取られるコマの数は一々気にしないのがコツじゃなかっただろうか?


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