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102、1人目のクラスメイト

 学校の校舎。いつもの謎なプラスティックの白い外装で壁や柱は覆われていた。イスと机も謎なプラスティック製でちょっと触っても、金属と違って冷たくない。

 建物の中に鉄骨などは入っているのだろうか?

 床までこの謎なプラスティックで出来ている。表面だけ茶色の木目模様にしているようだ。


 白い照明。あまり触れてこなかったが、魔法でつけられている照明なのだろうか?

 魔法で作られた照明を天井に張り付けているのかもしれない。

 部屋の中を白く染め上げるような白さは現代のLED電球とさして変わらないかもしれない。


 そんな部屋の中、サラお姉ちゃんは黒髪に天使の輪(キューティクル)を光らせて、ハク先生という係員さんを見送った。

 サラお姉ちゃんは将来、ちょっと人を寄せ付けない雰囲気を漂わせて、孤高を気どり、周囲から黒薔薇の君とか黒姫とか呼ばれてもおかしくないだろう。

 ラノベだとそう言われてもおかしくない雰囲気を既に漂わせていた。


 サラお姉ちゃんは少し興味を持った猫のような眼で俺を見た。

 少し口元を緩めると中腰になり、俺と目線の高さを合わせると、とても落ち着いている女の子の声でサラお姉ちゃんは俺に語り掛け始めた


「このクラスはこの学園の小等部では教える事がない生徒が中等部にあがるまでに過ごす自習室のようなクラスなの」

「そうなんですね」

「だからここでするのは中等部にあがるまでにどれだけ知識を蓄える事が出来るか、中等部に上がる時にまた特別クラスに入れるような成績をとれるように出来るか、そういった勉強になるわね。

 通常クラスだと宿題だ、課題だ、テストだ、なんだって騒がしいから、特別クラスの緩さがすごく心地良いわ。このクラスは定期的にある学力確認のテストさえクリアすればいいの」


 簡単に飛び級と同一の仕組みではないのか。

 算数の時間、国語の時間、体育の時間と科目毎に時間分けされていて、生徒はその時間にそれぞれのクラスへと移動するとかそういう仕組みがあったりするのだろうか?

 そしてその枠組みは学校毎に分かれているから、学習習熟度からクラスを分けていくのだろうか?


 テストによってクラスの浮き沈みがあり、クラスメイトもどんどん代わっていく?

 進学できる学校なども変わっていくのであれば、本気で勉強をする子も多いかもしれない。

 最後どのクラスにいたのかか、それとも平均的にどのクラスにいたのかか、それによって進路が決まるのだろうか?

 コンスタントに結果を出している人の方が仕事の上でも信頼できるだろうし、平均的にどのクラスにいたのかが問題になりそうだ。


「何か質問はある?」

「サラお姉ちゃんは読書しているけど、その本はどこで入手できますか?」


 読書。それは印刷技術がなければとても高価な物になる。

 機械がなければ1つ1つ手作りになるのだ。1つ1つ手で書き写す作業だ。時間も労力もかかる。

 この世界では車があるくらいだから、輪転機を作るのも簡単かもしれない。


 いや、むしろ印刷技術がもたらされたから機械に関して見直しが起きたのかもしれない。

 移動などは初めのうちは動物に乗って、魔法を使っての方が速いだろう。

 だが印刷に関しては判子の技術から想像を広げさせて、活版印刷に視野を広げさせ、機械にすれば1ページにかかる時間が大幅に短縮できると伝える事は容易じゃないだろうか?


「ここの図書館で借りられるわ。案内しましょうか?」

「サラお姉ちゃん、お願いします!」


 図書館があるのか。だという事は本は貯蔵できる程にあるという事。

 娯楽本が小学生レベルでも借りられる程、流通しているともいえる。

 もしかしたら現代に比べても本の価格が安いかもしれない。

 紙やインクなどの素材が現代よりも遥かに安価で入手できるなら、十分考えられる事だろう。


 そもそもだ。2等級以上は街中での魔法使用禁止という事は、生活にそこまで魔法を利用していない可能性が高い。

 特殊技能として魔法はあるものの、基本的な感覚として魔法は本当に必要な時にだけ使う奥の手であり、痒い所に手を伸ばすために使う孫の手感覚では使わない物なのかもしれない。

 むしろ3等級が日常的に魔法を使えて、日々を便利に暮らせる最高の魔力量かもしれない。

 母さん、ミルクを作るのにも魔法を使っていたり、空飛んで移動してたな……。


 高魔力量の人はその魔力量を使って、その人にしか作れないモノや出来ない事をする分高給取りだが、魔法を日常生活に使えない分、不便なところが多い。

 その不便を補うために、稼いだお金で色々なモノを買い漁り、お金を使って経済を回す……とか?

 出来る事をやり、人とタスクを分ける事で、能率を上げてより文化を発展させていくとか……あるかもしれない。


「特別クラスの隣に図書館はあるの」

「借りたいときはすぐに借りれますね」


 サラお姉ちゃんの机の上には山ほど本がある。

 すぐそこだというのに。シリーズなのだろうか?

 シリーズものなら一気に読みたいだろうし、途中で次の巻が借りられるという悲劇は起きないだろう。


 そういえばお姉ちゃんと呼ぶと、呼びかけた相手の方が幼く感じる。

 ちゃん呼びだからだろうか。身近にも感じるが、幼くも感じるのだ。

 まぁ、年上だけども子供だからちゃん呼びが妥当なのか。


「リク君はどこまで字は読めるの?」

「基本的なモノは全部読めます!」

「そっか。特別クラスだもんね。どういうのが読みたい?」

「神話とかけっこう興味があります!」

「ほぉ~。神話にリク君は興味があるんだ?」

「色々な話を聞いているんですが、その中に神様の性格がよく表れていて、とても面白いんです」


 この世界の魔法は神様の代理として魔力が個々に働いて作っている。

 神様を知る事は魔法を使う上でとても重要な事だ。

 人は設計図を描いても、作るのは魔力であり、ひいては神様である。


 細かな設計図を描ければ、材料の供給が上手く行けば確かに魔法は作りやすい。

 だが根本的に作るのが魔力と神様の段階で、人は1人で魔法を作っているわけではない。

 魔力と神様の存在を無視して、魔法を形作る事はできない。だから彼らを知る事はとても重要なのだ。


 今まで聞いた神話では魔力の存在は触れられていなかった。

 だがニーナやネネといった存在が魔力という存在を知らせていた。

 彼らの存在はどこから来たのだろうか? 何故神話で触れられていないのか?


 ただ知らなかっただけかもしれない。魔力について書かれた神話を。

 魔力は存在としてあっても、歴史の表舞台に立つような事はなかったのだろう。

 大臣の名前やその活動は広報されても、部下が何をしているのかに触れる事は滅多にないんじゃないだろうか?


「そっか。確かに君は特別クラスだね」


 どういう意味だろうか? 小学生レベルの発言ではなかったという意味だろうか?

 サラお姉ちゃんはといえば楽し気に手を口元に当て笑っていた。

 あまり声を出さない、お淑やかなお嬢様の笑い方だ。


 3歳児らしくない発言だったか。

 だがごまかしたところで近くにいる人にはわかるものだろう。

 むしろごまかしたらいらないところに火をつけられるかもしれない。


 興味の火は1度火がつけば望んでいるモノがすんなり出てきたとしても満足しない。

 むしろ燻り、違うボロを見つけ出し、大きく燃やしていく。

 その過程で転生者であるという証拠を握られたら? 監禁される可能性が高いじゃないか。


「サラお姉ちゃん。サラお姉ちゃん以外に特別クラスの生徒はいないのですか?」

「他の人? そうね。今どこにいるかしら? 学内にいると思うから探してみましょ」



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