九冊目:森の中の密会2
「連れてきた。それでは今後の行動について語ろうか」
黒は開口一番にそう言った。
が、黒以外には猫の姿が見当たらない。
「連れて来た?姿が見えないんだけど?」
朝徒は軽く周りを見渡すが猫の姿など一つもない。
黒は自分の影を小突いて呼びかける様に答えた。
「起きろ、姿を見せてやれ」
すると黒の影がモゾモゾと動いた途端、無数の黒い玉がふよふよと出て来た。
黒い玉は次第に集まり猫の形になった。
否、それは猫の形をした立体の影だった。
「はじめまして人間、私は神を喰らいし猫の一匹…こんな姿でも元は黒猫だから。まぁ、どうでもいいんだけど」
「えっと、はじめまして朝徒です。よ、よろしく」
黒猫は朝徒を見つめた。(とは言え影なので目は無いが)
「ふ〜ん、この人間が兄様と一つになるんだ…大丈夫なのコイツで?」
黒猫は興味をなくした様に朝徒から顔を背け黒を見た。
「問題ない、それよりも猫側の状況はどうなってる?」
黒猫は興味なさげに答えた。
「私達はこの土地から人を消すためにまず、人を一人残らず惨殺する事にした」
「惨殺…けどどうやって」
惨殺と言う言葉に朝徒は狼狽する。
焦る朝徒を一度見て黒猫は話しを続けた。
「方法に蠱髑を使う。蠱髑の準備はもうほとんど完成してるよ兄様」
「そうか、なら我々も急がなくてはな」
「蠱髑って?…って、それより兄様!?黒が!?」
朝徒は黒と黒猫を交互に見た。
正直、今までの中で一番のびっくりだ。
「兄って黒は犬だし…アレは猫だろ?あれ?」
「ナニよ人間!私と兄様が兄妹じゃ変だと言いたげ?」
「イヤ、だって、えっ?」
黒猫はため息をついて黒に聞く。
「ハァ、マジでコイツで大丈夫なの兄様?」
「うむ、どうだろうな」
「駄目かも知れませんねぇ」
「っ、魔鬼さんまで!」
そんなやりとりを交えつつ、森の中の密会はまだまだ続くのだった。