十二冊目:赤き夢
赤、紅、緋…
真っ赤に彩られた世界。
木々は焼け、家は燃え、周りを赤くてらつかせていた。
下を見れば赤い液体が広がっている。
周りを見れば真っ赤に染まったモノが幾つも転がっている。
先ほどまで動いてたモノ…人、猫、死体。
どれも真っ赤に染まり赤い液体を滴らせている。
自分を見れば腕、足、体、どれも真っ赤に染まっていた。
手に持つ刀も赤く彩られている。
前を見た………其所に見えるのは最愛の人。
ただ、その瞳は私の知っている瞳ではなく…紫がかった桃色の瞳だった。
彼女は私を見ると、さも可笑しそうにケラケラと笑う。
私はただソレを睨む様に見ていた。
一通り笑うと彼女は私に問いかけた。
「お互い人じゃなくなったね?」
私は答える。
「えぇ、そうですね」
彼女は訊く。
「ねぇ、朝徒は今楽しい?」
「…」
「私はとても楽しいよ。今も感情を抑えるのが辛いほど、ふふふ」
「…」
「アハハ、もうそろそろ限界かな…最後に聞くね。コレが朝徒の見る現実?」
私は最後の問いにはっきりと答えた。
「いいえ、夢です」
………
……
…
朝日が昇る前に朝徒は眼を覚ました。
体が汗ばんでいる…なんだか嫌な汗だ。
「…とても嫌な夢を見ていたような………」
朝徒は窓を開けて外の空気を吸い込んだ。
「今夜が満月…長い一日になりそうだ」
朝徒は支度をし、黒達の待つ森へと向かった。
―――今宵、満月の下で猫と人の宴が始まる―――