第3話
時刻は午前十一時に近かった。
この日は土曜日。
休みの日の影響であろうか。この時間になってくると車の通りも多くなる。
起床時間がいつもより遅い大人たち。
そして無邪気に午前から遊ぶ子供達。
この休日を活用し、仕事・学校により疲れ果てた体をリフレッシュさせているのだろう。
大人の方々、いつもお疲れ様です。子ども達、沢山遊んでおきな!
というような考えをしながら、超能力者である宇都忠は町をパトロールしていた。
彼の趣味は粛正ごっこ。馬鹿正直な正義感あふれる彼は、町を散歩しながら異常などは無いか定期的に見て回っているのだ。
ふと通りがけに公園を見てみると、四~五歳ほどの男女グループが五人ほどで鬼ごっこをして遊んでいる姿を宇都は発見する。
また公園の向かいのアパートでは、一人暮らしをしているであろう四十代ほどの女性が、パジャマのままベランダに出て外を眺めているのが見えた。
これだけの光景を見てみると、この世の中はなんて平和で素晴らしいのだろうと考えさせられる。
「今日は、平和だな」
宇都は一人呟く。
「そうだ、散歩だけじゃなかった」
宇都は思い出したかのように目的地へ駆ける。
目的地とは、盗難にあった銀行であった。
宇都の家から歩いて三十分ほどの距離にある、銀行。
この銀行は、最近ニュースで大きく取り上げられている。
そう。
金庫の中の現金を盗まれるという盗難被害に遭った銀行なのだ。
ほぼ確実に、銀行内での犯行は超能力者によるものと考えた宇都。
彼は事実を確認するためにここへ足を運んだのである。
辺りはまだ捜索中のようで、警察官が大勢で捜査にあたっていた。
せわしなく動き、酷使されている捜査官たちは、これほどまで頑張っても証拠ひとつ掴むことができていない為、苛立ちの色が見て取れることは誰が見ても明白であった。
(それは、そうだろう。だって、透明色を使っての犯行だもんな)
透明色とは、簡単に言ってしまえば自身の姿を透明にするという、何とも羨ましいようで恐ろしい超能力の名称である。
つまり、自身の体を消すことができる。
うふふ温泉とか除き放題じゃないか!
という発言が聞こえてきそうであるが、正義感の塊となっている宇都にとっては、そんなこと一μ(ミクロン)も考えたことが無い。
さて。
犯行はこれを利用して、犯人は侵入したと考えてよい。
これで、監視カメラの目を逃れることができたのであろう。
温度を感知する機会があれば別であるが、監視カメラによっては、その機能はついていない。
機種の古い監視カメラのついている銀行を狙い、透明色を使って侵入すれば、超能力を身につけた人ならだれでもできてしまうという簡単なものであった。
宇都はピクニックに来て、景色でもゆっくり眺める家族の一員のように銀行を見つめていた。
現場の警察たちは、何だあの学生はとじろじろ宇都の方を見てきたが、構う暇もないのか数秒で彼らの職務へと戻っていく。
(さてと、俺も手伝わせてもらいます、か。透明色を使ってね)
姿を消さずに入ろうとすると現場から追い出されるのは必至、かつ犯人と疑われる可能性が高い。
宇都がなぜ透明色についての知識があったのか。
それは、彼もまた超能力者であり、犯人であろうその同級生と同じ超能力カリキュラムを受けたからである。故に、彼がそれを熟知していることは誰が考えても理解することができる。
同級生であろう犯人を改心させるべく、宇都はどんなことがあっても止めさせるという決意をした。
「クローキング発動」
周りを確認した後、人の目に届かない所で宇都は体を消す。
「まずは、探偵ごっこだな」
汗水たらして一生懸命調査に精を出す警察官達を横目に、宇都は銀行の中へと堂々と入っていった。
2015/01/06
調査が終わればバトルシーンです。
もう少しおつきあいください...(笑)
稚拙な文章ですが温かい目で見守ってください。
2015/02/23 更新