第2話
「次のニュースです。現在、銀行の金庫の中から現金だけ抜き取られるという事件が、相次いで発生しています。この事件に関しては警察も全く手がかりを掴めていない状態であり、情報提供を各地で呼びかけております。情報提供の方は、以下のダイヤルへ発信をしてください......」
超能力者、宇都忠。
この日は大学も休みであり、特に何もすることが無い宇都は部屋の中で一人テレビとにらめっこをしていた。
それにしても、この不可解な事件。
超能力者の仕業であることは明白であった。
成績も平凡である彼は、勉強が特に得意でなくても、この位のことは理解できた。
「最近見たニュースでは連続殺人や、連続強盗、それに超能力を使用しての仕事。どれもこの世で存在していいものなのか」
宇都は一人考え込む。
実は、たびたび起きているこの事件の特徴は、すべて完全犯罪であることであった。
いずれも事件現場には指紋も残されておらず、現場には証拠ひとつ残らない。
あまつさえ監視カメラにも映らないほどの、完全犯罪。
まるで、超能力のよう。
とてもではないが、相当頭が良くなければ超能力を身につけていない生身の人間が、完全犯罪の実現は不可能であろう。
しかしながら超能力を身につければ話は別だ。
が、国家機関において超能力に関しては内密に話が進められているので、警察に圧力をかけている可能性がある。
この事が公になればマスコミも黙っているはずがない上、国全体としての問題と発展することだってありうるのだ。
宇都はこの完全犯罪が相次いで発生している状況を、見過ごすわけにはいかなかった。
正義感の塊とも言い換えられる彼は、この状況を打破するために動き出そうとしている。
確定とは言えないが、超能力による事件、犯罪は本来あってはならないものである。
そう。
科学技術を発展させ過ぎた故に、核兵器などの問題も同時に生じてしまったかのように。
力を得ると、同時に問題も発生するのである。
「うっし。考えても仕方ねえな」
宇都はゆっくりと部屋の中で一人立ち上がった。
時刻は午前を過ぎたばかり。
時間には余裕がある。
止めなくては。
この犯罪の嵐を。
宇都は一人決意をする。
いつか、犯罪者たちの悪事を止める。
その為には自分が傷つくことを恐れてはならない、と。
「せっかくの休み。有効に使わなきゃな」
宇都は一人、閑散とした部屋の中で独り言を言う。
宇都の趣味とも言える日課は、粛正ごっことも言えるお遊戯であった。
休みの日に悪事を働く者を見かければ、超能力で粛正したり口頭で注意をしたりするという、何とも学生らしい趣味から離れたお遊びであった。
超能力を身につけてからも、そのお遊びは終わらず、超能力を使って粛正することはめったになかった。
というよりも、超能力を使って目立ってしまったらそれこそ大ごとになる。
彼は、正義感の塊とも言い換えられる存在。
それは彼の欠点でもあり長所でもあるのだ。
彼はゆっくりと身支度を始め、必要な荷物を整えて施錠をする。
ガチャリという音を確認するとともに彼は一人つぶやいた。
「全員、改心させてやるよ」
2015/01/06
焦らず楽しんで執筆します。
バイト後の楽しいひと時。
2015/02/23 更新