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セイギノチカラ  作者: 混沌
第二章 冬休み位ゆっくりさせてくれ
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第12話

 3000年に行われた超能力開発カリキュラム。

 とある高等学校に通う、無作為に選ばれた35人の生徒が国家からのカリキュラムを受け、超能力を身につけた。

 彼らは国家から同じカリキュラムを受け、同じように学校生活を送っていた。


 しかしながら、その個人が持つ能力に関しては人によって(まば)らであった。

 それはなぜか。

 詳しいことは解明できていないそうだが、現段階で一番有力説としては個人が持つ「才能」である。

 生まれつき超能力に適合しやすい人間が、より強い超能力、応用性を兼ね備えた超能力を身につけやすいと考えられているのだ。


 超能力者、宇都忠。彼もまた超能力を身につけたTFM(サーティファイブメンバーズ)の一員である。

 超能力開発カリキュラムを受けた中で、主席で卒業した。

 つまり、一番強い超能力を所持し、且つ高い応用性が認められた者である。

 しかしながら、とある条件を除いての主席卒業であった。


 それは、覚醒アビリティを持っているか否かというポイントである。

 覚醒アビリティというと、ゲームの中のキャラクターが覚醒し、何らかのスキルを取得するというイメージがあるが、覚醒アビリティとは、まさにそれと考えてよい。

 自分だけの、特別な超能力。それが、覚醒アビリティという名称である。

 故に、他人が自分と同じ覚醒アビリティを取得することは、まず考えられられない。


 その覚醒アビリティの取得方法は、実はまだ解明されていない。

 急に、発現するのだ。

 生活を送っている中、いつでもどこでも、ふとしたタイミングに覚醒する。

 だが、人によってはいつまで経っても、なぜか発現しない。

 宇都忠も、その一人。レベルの高い超能力を持っていながらも、覚醒アビリティは所持していなかった。


 TFMの中でも、覚醒アビリティを取得した後に卒業できたのは十人いるかいないか程度であった。

 自分だけの能力。所持していれば戦闘に大きく有利になる。

 宇都自身も、なぜ発現しないのかと悩んだ時期もあったが、暫くして取得を諦めた。


 時刻は夕方に差し迫ろうとしていたが、外が非常に騒がしかった。

 外の道路はヘヴン・ヘルタウンから避難した客で埋め尽くされ、完全に道を塞いでしまっている。

 道路を走る車は立ち往生し、いつまでも道路から人が立ち退かないことに業を煮やしたドライバーたちは、クラクションをひっきりなしに鳴らしている。

 外は完全に混乱状態に陥り、収拾がつかない状態になっていた。


 ヘヴン・ヘルタウンの六階。コンビニエンスストアフロア。

 各所のコンビニが完膚なきまで破壊されつくし、辛うじて残っているコンビニが数点存在はしていたものの、看板が破壊され何の系列のコンビニかは分からない。


 そして建物が傾いていた。原因は、超能力者による犯行。店内で爆発が、デパート倒壊の危険性を孕ませていた。


 この危ないフロアには、超能力を持つ三人の学生がいる。

 一人は犯行を実行した張本人、四賀憲太郎。そしてもう一人は、犯行を阻止しに来た宇都忠。そしてそのパートナーの秋芽萌。

 宇都は四賀をまっすぐ見つめていた。距離にして三十メートルほどであるが、相手と向き合う覚悟を決めたのか、宇都はまっすぐに見つめたまま視線をそらそうとはしていない。


 フロアには残骸が残っていて歩きにくい状態だ。しかし宇都はお得意の念力(サイコキネシス)を応用し、周りの残骸をフロアの両端に除ける。四賀はコンビニのフロアをゆっくりと見渡し、一人でほくそ笑んだ。


 四賀には、覚醒アビリティがある。宇都自身もそのことに気が付いていた。

 しかし、何の能力かは分からない。迂闊には動くことができないので、宇都はその場から動かず、相手の出方をうかがっている。


「ちょっとー、何なのさあ。攻撃してくるなら来いよお! アハハハハハッ」

 四賀が遠くからゆっくりと宇都へ歩み寄ってくる。不気味な笑みを顔に出し、笑い声と共に一歩ずつ近づいてきた。

 宇都は動けない。下手をしたら攻撃に巻き込まれて即死する可能性がある。

 宇都と秋芽にとって、久しぶりの緊張した戦闘だ。


「うおおお!」

 最初に攻撃に動いたのは宇都。そばに合ったゴミの残骸の中からアルミ缶を取り出し、念力で潰した。そしてそれを三個ほど四賀に投げつける。野球の球で言うと一五〇キロメートル毎時ほど。かなり速い球で飛ばすことにより、即座にけりをつけようと考えたのだ。


 極限まで潰されたアルミ缶は、四賀に向かって一直線で飛んでいった。

「おおっ、さすが主席様ですなあ。応用力が高い。楽しませてくれんじゃあーんっ」

 四賀は両手を前に出した。

 すると。


 その三つのアルミ缶はまたしも一点を中心にして集まり、潰したはずのアルミ缶がさらに極限の極限状態まで圧縮されていった。車が轢いたのではなく、トラックで三台続けて轢いたような大きさになってしまったアルミ缶は、その場で四賀の足元にポトリと空しく落ちた。


「キャキャキャ。楽勝だねえええ」

 レベルの高い攻撃に興奮したのか、四賀はまるで暴れまわる五歳児のように両手をバタバタと動かしていた。

「攻撃が、通らない!? 何だろう、あの能力は」

 秋芽は目を丸くする。宇都もまた驚愕する。


「知りたいかー? ハハッ、教えたところで君らに勝機があるとは思わないけどなーフヘヘヘ!」

 何がそんなに楽しいのか宇都と秋芽には分かりかねないが、四賀はひっきりなしに笑いながら会話をしてくる。過呼吸にならないのであろうか。


「萌、あいつの攻撃、どう思う?」

「まだ分からない。けど、何かヒントがあったみたい。攻撃はすべて回収され、とある一点を中心にまとまってしまう。そしてそれを爆発させたり、一気に解放させることができるみたいだけど、何の能力化はまだ分からない......」


 宇都はそうか、と言って四賀に対しまた攻撃を始める。

 そばにあった石を十個ほど投げてみたり、逢沢の戦いで使われていたビー玉を連続で投げてみたりした。

 が、攻撃は通らない。

「無駄だよお。意味ねえって言ってんだろ。学習しなよ、馬鹿なのかなあ?」

 四賀は余裕の余裕という表情で二人を嘲笑う。


 攻撃が通らない。これほど苦しいことがあるであろうか。

 宇都は軽く舌打ちをする。こんなに覚醒アビリティがこんなにも厄介だったなんて。

 覚醒アビリティの恐ろしさを痛感した瞬間であった。


「さて、そろそろこちらから行かせてもらおうかねえ」

 四賀はまたもその場からゆっくりと歩み寄ってきた。

 距離にして現在二十メートルほど。一歩ずつ、一歩ずつ何かを踏みしめながら歩く。

 四賀は太っている体型なので、運動はまず苦手であろう。

 ゆっくりと動く彼の図体は、心なしかフロアを揺らしているような感じであった。


「萌、これはまずくなりそうだ。先に逃げてくれ!」

「できないよ、そんなの! 私だって戦えるのに」

「だけど、さすがに危なすぎる!」

「大丈夫、パートナーを信じてよ」

 秋芽は取り繕った笑顔を宇都に向ける。恐怖心は凌駕できていないのかもしれない。

 宇都は少し考えたが、秋芽と共闘することを決意する。


「なにやってんのかなあ。ハハハッ、ほら逃げないと死ぬよ?」

 四賀との距離はおよそ十メートルになっていた。何かを察した二人は全力でテレポートを使用して五メートル後ろへと移動した。

 その判断は正しかった。一歩間違えたら即死していたに違いない。

 五メートルほど前での出来事。残骸が次々と回収されていったのだ。

 また、四賀の能力だ。巻き込まれていたかもしれない。


 志賀は大きな舌打ちをした。

「あーあーあーあーあー!! 二人カップルまとめてぶっ殺そうとしてやったのによっ! ウククク」

 ゲームで思うようにいかなかったときに逆上するゲームのプレイヤーのように、四賀は怒鳴り声をあげ、不気味な笑い声をあげている。


「もおいいや、つまんね。教えてやるよ、僕の覚醒アビリティ」

 四賀はつまらなそうな顔をし、攻撃をやめる。一点に集まった残骸は、壁独特の音を立てながら次々と床へ散乱した。


 四賀がまっすぐ二人の方を向いて語りだす。

「僕はね、物体なら何でも圧縮・収縮させることができる能力を身につけたんだよ。素晴らしいだろ? フフフ。その名も、圧縮者(コンプレッサー)。勿論、一個のものだろうと、複数存在するものだろうと、数は限りなく圧縮できるんだ。まあそうだな、パソコンの圧縮ファイルとかあるだろう? それと同じさ。何でもかんでも圧縮させ、潰して一つにまとめることができるのさ。ハヘヘヘヘッ!!!」


 自分自身の能力に酔ってい故に興奮しているのか、四賀は下を向いて体を震わせながら笑っている。

 外から見たら異様な光景だ。

 宇都が納得をした様子で秋芽と顔を見合わせ、続けざまに質問をする。


「じゃあ、お前。その圧縮した物を、いわゆる解凍する事もできるのか?」

「そうだ。凄いだろう!? パソコンでいう圧縮ファイルを解凍することもできるのさ。ウクククク。さっきの爆発も、それが原因さ。圧縮した物を、一気に解放させて爆発を起こしただけさ。ゴムボールを極限まで縮めて、一気に手を放して元の大きさに瞬時に戻す、故に爆発が起きるといった所かなあ」


 圧縮者、四賀憲太郎。

 覚醒アビリティとそれを持たない者同士の戦い。

 ハンディが大きいものの、秋芽と宇都は四賀を倒すために作戦を練り始めたのであった。

久々に書けた。

まとまった時間がほしいのですがねえ。難しい。 2015/01/15

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