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セイギノチカラ  作者: 混沌
第二章 冬休み位ゆっくりさせてくれ
12/28

第10話

 買い物をしてまだ1時間ほどなのに、秋芽は荷物をいっぱい抱えて宇都と一緒に歩いていた。


「ちょっと、忠君! 少し持ってくれてもいいじゃない!」

 隣を歩いている秋芽は1人で大きな荷物を抱え宇都に不満をもらす。

「だって、それ全部買ったの君だろ? 故に、君が持つべきだ」

「何その言ってることは正しいけど極悪な要素を含む発言!」


 時刻は午後に差し掛かろうとしていた。

 午後になるにつれ、人も多くなってきており、一層込み具合のレベルが増していく。とにかく窮屈さを感じさせる。

 人混みの中、秋芽は辛うじて宇都の後ろをついてきていた。


「ちょっとー、レディをもう少しいたわってくれてもいいじゃない!」

「君はおばあちゃんか! 嫌なら念力(サイコキネシス)で浮遊させておけばいいじゃないか」

「なんで堂々と手品じみたことをしなきゃいけないの。人集まってくるけどいいの?」


 二人は他愛のない会話を交わし、ショッピングを楽しんでいた。

「あっ、ロッカーだ!!!」

 コインロッカーを見つけた秋芽は、オアシスを見つけた旅人のように急に元気を取り戻し、全速力でロッカーへと近づいていった。


 今、超能力で素早く動いたし、念力を使った気もするが気にしない。

 周りの客も気が付いていないようでよかった。

 宇都は安堵した。やすやすと見せられるものではない。

 超能力は、原則的に一般公開禁止。

 規則を破ったものには死が待っているらしいが。


「お待たせ―、忠君! 次は雑貨屋さんへ行こう!」

 元気いっぱいの兎のように駆け寄ってきた秋芽。

 ポニーテールがゆさゆさ揺れているのが印象的であった。


「ちょ、ちょっと待って。萌。そろそろ昼飯を食べないと」

「あ、そうか。じゃあ美味しい所知ってるんだ。そこ行こう」

 案外、あっさりと秋芽は宇都の言う事を聞いてくれた。

 お腹が空いていたのは彼女もまた同じだったみたいである。


「見て見て、ここのラーメン屋さん。とってもおしゃれで美味しいんだよ!」

「どれどれ?」

 秋芽は無邪気な顔で、自慢の店をまるで自分の管理する店のように宇都へ紹介する。

 二人は二十五階にいた。ヘヴン・ヘルタウンの最上階であり、レストラン階層となっている。

 時刻は昼飯時に近づいていたので、その階層は混み合っている。

 見渡す限りレストラン。どこもレストラン。さすがデパートだ。

 しかし、どこのレストランも満席のように見えるのだが。


 宇都はショウウインドウにあったラーメンをまじまじと見ている。

 アイスクリーム豚骨ラーメン、昆布だしMAXラーメン、味噌汁ラーメン。

 なんだこれは。宇都にとって初めての光景であった。


「なあ、萌。ここって......」

 何か言いかけた瞬間、彼女は店内に入って行ってしまった。

 勝手に行くなよ! と一人で呟き、彼女の背中を追う。

 すると、後ろからこのような声が聞こえてきた。


「アイスクリームラーメンだってー。趣味悪っ!!!」

 どこの誰が言ったか分からないがその発言は宇都の心にぐさっと槍が刺さった。コノヤロウ、何を食べようと自由じゃねえかオラアと叫びたかったが、人目を気にして何とかその気持ちを抑えた。


 時刻は昼になっているというのに、中にいる人はなぜかこの店だけ少なかった。

 席もラーメン屋にしては十分用意されているのに、これでは宝の持ち腐れだ。

 そして、店内は秋芽の言っている通りおしゃれだ。

 きれいなスタンドランプが各テーブルに置かれ、机も高級品なのであろう、ただの木ではないことが見て分かった。

 店内は静かなBGMが流れていて、何とも居心地のよい空間であった。


 しかし。味はどうなのだろうか。

「いらっしゃいませ」

 と丁寧にお辞儀をする店員を横目に、秋芽と一緒に席へ着く。二人で並びたかったのか分からないが、秋芽はカウンター席を選んだ。

「忠君、これお勧めなんだけど、どう?」


 席に着くやいなやメニューを開く。メニューには沢山の商品が示されていた。

 勿論、ショウウインドウに展示されていたものも含まれていた。

 秋芽が指さしたもの。それは。


「超スペシャル、白玉小豆パフェラーメン!!!」

 得意げにどうよ、という雰囲気で宇都にお勧めしてきた。

「いらぬ」

 宇都は即答した。


 ええー、と言いながらぶつぶついう秋芽を無視し、宇都は豚骨ラーメンを注文した。ちなみに秋芽はクリーム豚骨ラーメンを注文していた。

 というか、さっき勧めてきたやつじゃねえのかよ! と1人宇都はツッコミを入れるが口にはしない。


 注文をしてから待っていると、近くに人の気配を感じた。

 その人は、どうも一人で来た男性みたいだが、不思議な雰囲気だ。

 というか、ここに来る人って、常連とか味覚がちょっと特殊なものをお持ちの方なのだろうか。


 その男性の服装。テーマはミリタリーであろう。

 迷彩柄の上下、マスクをして、帽子を被っているのでどんな表情で、どんな顔をしているのか分からないが、その人からの視線を宇都は感じていた。

 その男性はカウンター席から離れたテーブル席を占領していたが、視線を感じ取るには十分すぎる距離であった。


(もしかして、知り合い、か?)

 宇都が考えていると、注文した豚骨ラーメンが来た。

 それと同時に秋芽のクリーム豚骨ラーメンがテーブルに置かれる。

 男の事はひとまず置いておこう。

 ところで秋芽のラーメンだが、脂質とか凄まじそうだが、大丈夫であろうか。

 正直、宇都は秋芽が太らないか心配をしていた。


 しかしながら、ダイエットを気にしすぎていて骨だけの秋芽など誰も見たくないであろうし、そのような風貌を想像したら今のままでいいような気がしてくる。


 秋芽は女子とは思えないスピードでそれを平らげた。

 宇都が唖然としながら食べていると、何見てんだと秋芽からガンを飛ばされた。正直、恐かった。と宇都は何か恐ろしいものを感じ取った瞬間であった。


 あまり会話をせずさっさと平らげてしまった二人は、そそくさと席を立ち買い物の続きを楽しむことにした。

 だべっているとそれだけで夕方になってしまいそうだ。

 会計の料金は二人で二千五百円。少々値が張る気がしたが、しょうがないであろう。というか、高い。どうりで人が来ないわけだ。


「あー、美味しかったあ。さ、雑貨屋さんへ行こうかあ」

 クリームと豚骨を見事克服した秋芽は、心配する宇都など気にしない様子で言った。

「お、おう」

 まあ、味は悪くなかったしいいか。と宇都は一人で自己解決をしてしまった。

 二人は雑貨屋の十九階までエスカレータで降りていく。


 ラーメン屋の中の男性。

 二人が出るのを確認すると、彼もついていくかのように店を後にしたのだった。


 時刻は午後3時に差し掛かっていた。

 人混みは解消されるどころか、膨張する一方である。

 年末近く、且つ休日のデパートというものは大変なものであることを宇都は感じ取っていた。


 秋芽は相変わらず自身のチートスキルを使って人混みをするすると抜けていく。たまに本当にはぐれそうになって、はぐれたら秋芽の策略で迷子のアナウンスで呼ばれるのではないかとマジで考えている宇都。


 宇都は必死に秋芽の背中を追いかけていく。

「ちょっと、萌! 早いよ!」

「えー、忠君が遅いんだよ。ほら、ついたよ」


 やっとのことで着いた雑貨屋。

 人混みは幾分か解消されているエリアのようである。

 秋芽は忠君、これ面白くない!? なんて言いながら頭がカタカタ動く骸骨の人形を叩いて遊んでいた。

「ちょっと、壊れたらどうするの!」

「大丈夫、大丈夫!」


 そんなことをしていると。

 刹那。轟音が響き渡った。

 耳がつんざくような音だ。まるでドラゴンが近くで雄叫びをあげたような音。

 状況が理解できていない二人。大きな地震のような揺れ。

 デパートは頑丈に出来ているものの、ごくわずかだが傾きを感じていた。


「なんだ!?」

「分からない、どうしよう、忠君......」


 辺りは騒然とする。なんだなんだ、と叫ぶ者。状況が呑み込めずただただ立ち尽くす者。大急ぎで非常階段へと走り出す者。

 子供が泣いている。迷子であろうか?

 誰かが倒れている。辺りの商品はばらばらに巻かれ、戸棚に綺麗に収納されていたガラスのコップは床に落ちたことにより粉々に破壊されている。


 すると、デパート全体に女の人の声でアナウンスが響く。

「現在、原因不明の爆発が発生しました。デパートにごくわずかの傾きが発生しておりますが、倒壊の危険性はございません。お客様には大変ご迷惑をおかけしますが、非常階段より外へ緊急避難をお願い致します。なお、衝撃により転移装置は使用ができません。ご了承ください。落ち着いて、避難をしてください」


 そのアナウンスは、冷静さを無理やり作っているような雰囲気であった。

 管理者側も、イレギュラーが発生したため、対応に困り且つ追われているのだろう。


 ちなみに転移装置とは、この時代の科学技術によって作られた、ワープ装置である。超能力者で言う、テレポートを科学装置が可能にしているのである。

 しかし動力源が今の爆発でいかれてしまったため使えないとのことだ。


「......萌、これどう思う」

「原因不明の爆発。下の方からだけど、幾らなんでも急すぎるよね。爆発を仕掛けるにも時間がかかるし、人混みの中だからお客さん、気が付かないわけない」

「つまり超能力者による犯行か?」

「そう考えるのが自然だね」


 よし、と二人は顔を合わせる。

「捕まえよう。そして改心させるんだ。沢山の人を巻き込んだ犯罪。誰かが苦しみ、傷つくような出来事だ。絶対に許されることはない」

「うん」


 二人は爆発現場へと足を急がせた。

 辺りは騒然として、皆非常階段へと我先にと急いでいる。

 そのような混乱な状態の中、勇ましい二人組は事件解決に向けて一歩踏み出していった。

明日バイトで更新できるか不明なので、気分的に書いてしまった......

頑張ります。

次回、急展開が続きます。下手くそでも見守って下さると嬉しいです。 2015/01/10

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