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赤と青の壁は覇王の盾

投稿したと思ってたら夢だった。

何を言ってるか分かんないと思うが俺もわからん。

したと思い込んでいた。

 残りの残党二百人くらい倒したら、向こうで戦っていた少女たちもあらかた片付いたみたいで、初めてこちらに気がついたらしく、一人は警戒心もなく近づいてきてもう一人は

友達を置いておくことができずに警戒しながらもこちらに近づいてきた。

 木刀を腰に戻し戦で舞い上がり付着した砂を手で払い、少女が近づいてくるのを待つ。


「盲目の兄ちゃん凄いねぇ、この人数を一人でやったの?」

「季衣!盲目だなんて面と向かって言っちゃ失礼だよ。あの…失礼ですが賊の方じゃないですよね?」


 体に黄色い布どころか、全身真っ黒の服装だが賊の可能性もある。

 特に乱世の兆しがある今の世の中では賊に紛れていれば見た目で判断せず、まずは疑ってかかる少女の反応は正しい。

 なので、相手に賊でない事を示すことは出来ないが敵意が無いことを示すために両手を上げて答える。


「…………あぁ」

「そうですか、すみません。いきなり疑ったりして」

「流琉も心配性だなー、どっからどう見ても敵には見えないじゃん。それに賊よりは強いみたいだけど僕たちよりは弱いから襲われても大丈夫だよ」

「季衣!男の人に面と向かって弱いなんて言っちゃ駄目だよ!すみません、親友が」

「ぶー、なんだよー。どうせ流流も同じように考えてるから警戒しても伝磁葉々(でんじようよう)を持つ手に力入ってないじゃないか」

「季衣っ!?」


 少女たちがギャーギャー騒ぎ出したので、止める意味を込めて自己紹介をする。


「…………俺は………無風 雛だ」

「…えっ?あ!すみません、私は典韋っていいます」

「僕は許褚っていうんだー、盲目の兄ちゃんは変な名前だね。どこから来たの?」

「…………遠く海を超えた島国から……来た。…………それと盲目じゃ………ない」


 いつまでも盲目だと勘違いしているので目隠しを取って二人の視線を受け止め見つめ返す。

 許褚と名乗った少女はピンクの髪を後ろで斜め上に縛っていて、典韋と言った少女は薄いエメラルド色のショートヘアで、前髪が顔にかからないようヘアピンの代わりにリボンをつけていた。

 "把握"はしていたが実際に見ると孟徳よりも若く、実際に戦っているのを見ていなければ信じてもらえないくらいだ。

 彼女たちの武器は鉄球とヨーヨーで、どちらも大型の武器らしい。

 

「兄ちゃん目が見えてるのに、なんで目隠ししてたの?修行か何かなの?」

「季衣、もうそれくらいでやめとこうよ。流石に失礼すぎるって。」

「もー、流琉は心配性だなー、兄ちゃんも言ってやってよ」


 二人は今の今、戦をしていたとは思えないほどのんびりとした会話を続けている。

 俺も孟徳率いる本体が到着しないと話が進まないのでふたりの会話を聞きながら空を見上げてのんびりする。


================流琉視点================


 賊の人たちを殲滅して、見て確認した数より大分殺した数が少ない気がして不思議でした。

 季衣も私とそれほど違わないだろうし、逃げたのかと思って、初めて周りを見回しました。

 すると少し離れたところで全身真っ黒な人が立っていて、私たちよりも多くの賊を殺していました。

 季衣も気がついたようで警戒心なく近づいていきます。

 季衣は警戒心が無いわけではない。

 警戒すると相手も警戒することを分かっているから、態と警戒しないのです。

 自分が殺られずに相手を自分の射程圏内に入れて殺すには己の警戒心を捨てるというのが季衣の昔からの方法でした。

 そして、あえて私が警戒して近づくことで季衣の警戒心の無さを引き立てる。

 別に私と季衣が話し合って考えたわけではなく、昔から一緒にいる親友だからこそできる二人の策なのです。

 案の定、この男性は警戒心を持たずに季衣と喋りだしたので、本性を見極めようと私も話しかけます。

 そしてこの男性が本当に賊で無いことが判ると、初めて私も季衣も自分の臨戦態勢を解きました。

 自己紹介も済ませてこの男性、無風さんはとある軍の客将だといい、その軍から賊の討伐を言い渡されてこちらに来たと、私たちに説明しました。


「…………空はやっぱり青い」


 その軍が到着するまで季衣と喋って待っていると、不意に無風さんが空を仰ぎ見ながらそう呟くのが聞こえました。

 賊のことももあり、のんびりと空を見上げることが無くなっていて、久々に見上げる空は青く澄み渡っていて、とても清々しい気持ちでした。

 季衣も同じ気分になったのか、空に向かって思いっきり伸びをして、ゆっくりと一回体の力を抜くように深呼吸していました。


「たしかに空が青くて気持ちいいねー、身近にありすぎて忘れてたよー」

「そうだね、私も暫くゆったりとした気持ちで空を見たことなかったかも」


 そう思いながら無風さんを見て不思議に思いました。

 賊が蔓延る今の世の中、初対面の人とのんびりと空を見上げてこんなにもゆったりした気持ちになるなんて思わなかった。

 黒衣の男性を見ているとこんどは目を瞑り、太陽の暖かさを全身で浴びて、すごくゆったりした顔をして今にも寝てしまいそうです。

 私たちの周りには未だにたくさんの賊の死体が転がっています。

 その中でこの黒衣の男性は穏やかな顔で日光浴をしていて、一見してみると異常ですが、一生懸命生きてることを実感しようとしているようにも見えます。

 本当に……不思議な人


================無風視点================


 3人でのんびりしていたら、遠くに砂塵が見えてきた。

 こちらの砂塵が収まっているのを確認してから来たのだろう、予想より来るのが遅かった。

 恐らく文若が念を入れてのことだろう。

 次の瞬間ただならぬ殺気を近くで感じた。

 ここで意識のあるものは横にいる二人の少女たちだけ、つまり二人から出てくる殺気であった。

 

「兄ちゃん………兄ちゃんが客将として居る軍って………官軍のこと?」


 許褚の言葉にコクッと頷く


 その肯定を見て、許褚は顔を暗くする。

 典韋は無表情でいるので、何を考えているのか分からない。

 そうこうしている間に孟徳はこちらにたどり着き、幹部3人を引き連れて歩いてくる。


「どうやら終わったようね、無風。戦況の報告をしてちょうだ…っ!」


 孟徳が俺に話しかけてきた瞬間、孟徳に鉄球が飛んできた。

 

「華琳様っ!」


 そこに誰よりも先に元譲が孟徳の前に立ち、七星餓狼で鉄球を受け止める。

 だが、流石に相手の獲物を流すのに後退せざるを得ないようで、元譲が下がる。

 流した後すぐに攻めようと距離を詰めるが、また鉄球が飛んできて後退する。

 その繰り返しである。

 許褚は賊相手であれば、攻めに転じることもできるだろうが、彼女らの本領は攻めではない。

 幾度となくやってくる賊からの防衛、防御に特化した戦い方が許褚の本領だろう。

 それも実践で鍛え磨かれた言わば防壁だ。

 訓練で型を覚えても実践でそれが必ず役に立つとは限らない。

 そういった意味で彼女は守りに関して強い。

 しかし、そのままではジリ貧なのは必然。

 その問題を解決するのが…


「させません!」


 ヨーヨーを横から元譲に向けて放つ。

 妙才の弓では止めることは困難、なので俺がそれを蹴りで弾く。

 そう典韋の存在である。

 一人では防御、二人では防御と攻撃を二人で分担することで今まで賊を殲滅、もしくは敗走させてきたのだろう。


「すまない、無風。」

「…………油断するな」

「兄ちゃん!何するのさ!そいつらが今まで何をしてきたか分かってんの!?」


 突然許褚が俺に怒鳴ってきた。

 言葉に怒りを、悲しみを、憎しみを込めて…


「官軍は何にもしてくれなかった!隣の村が賊で襲われても!僕の村が襲われそうになっても!!それなのにそいつらはさらに税を高くして奪っていく!民のことなんて何にも考えてない奴の軍

だって知っててそこに居るの!?答えてよ!!」


 許褚の怒りや悲しみが伝わってくる。

 典韋は俯いていて表情が見えないが、足元には水の後があった。


「官軍なんて……兄ちゃんなんて……大っ嫌いだぁぁぁ」


 今までで一番スピードの乗った鉄球とヨーヨーが向かってくる。

 俺は元譲を後ろに突き飛ばし、彼女たちの武器をモロに受け止める。

 氣で体を強化したが、それでも足りなかったらしく、体のあちこちで血管が潰れ、肌から霧吹きのように血が噴き出す。

 ダメージはそれほどでもないが少し血を失いすぎたのか、若干目眩がする。

 許褚と典韋の二人は、そんな俺の行動に真っ赤にしていた目を見開き、慌てて武器を引いて倒れかける俺を支えた。


「兄ちゃんっ!」

「無風さん!」


 二人が俺を心配そうに見上げてくる。

 安心させるかのように二人の頭を撫でて慣れてない笑顔を向ける。

 それを見て、また二人は目から涙をポロポロと流し馬鹿馬鹿言いまくってくる。


「なにやってんのさ!一歩間違ってたら死んじゃってたんだよ!どうして受け止めたりなんてしたのさ!」

「無風さん!あんな無茶しないでください!もしものことがあったら、私、私!」


 全ての負の感情を流すように、今まで押し殺してきた自分を取り戻そうとするかのように二人は泣き続けた。

 二人が泣き止むのを待っててくれた孟徳は、俺の両横に並ぶように立っている許褚と典韋の二人に向かって謝罪をした。


「ごめんなさい。私がもっとしっかりしていなかったために貴方たちにも、貴方たちの村の人にも悲しい思いをさせてしまった。」


 まさか郡の太守が謝罪をするとは思ってもみなかったのだろう。

 どうしていいのか分からずに俺に助けを求めるような視線を送ってくる。


「…………謝罪は素直に受け取ればいい。…………あと、お前たちの言っていた官軍の大将は河南郡の大将のことだろう?」


 本当に俺は長い文を喋ると高圧的で自分自身嫌になる。

 自分で自分に嫌悪感を抱きながらも二人に確認する。

 彼女らはそれに頷き、肯定の意を示す。


「…………孟徳は………陳留の太守だ。」


 その俺の言葉を一瞬理解することができてない顔だったが、次の瞬間すべて理解したのだろう。

 謝罪された先ほど以上に慌てた。


「すみません!隣の太守様でしたか、たしか隣の陳留の太守は善政で素晴らしい太守だと聞いています。」

「僕たちの勘違いで襲ったこと、誠に申し訳ありません!」


 なるほど、勘違いで攻撃してしまったことに焦っていたのか。

 まさかそんなことで罰するわけなかろう?という視線を孟徳に向ける。

 視線に気がついてくれた様で笑って頷いてくれた。


「いえ、貴方たちの怒りや悲しみを救ってやれなかったのはこちらの責、謝るのはこちらのほうよ、でもこのままでは埒が明かないからお互いもうこの話はやめましょう」


 やっと孟徳が話の終止符を打てくれたので、謝罪大会と化していたこの場がなんとか収まった。

 後のことは二人に押し付け…もとい任して元譲と妙才の所に行き、彼女たちのあの二人に対する意見を聞こうと思った。


「無風、貴様!さっきはよくも蹴り飛ばしてくれたな!そこに直れ!ぶん殴ってやる」


 …叩き切るからぶん殴るにランクダウンしたのはいいが、やっぱ来なけりゃよかった。


「まぁまぁ、姉者。無風のおかげで丸く収まったのだ。ここは良しとしてやってくれないか?」

「むぅ…秋蘭がそういうのであれば致し方ない。今回は許してやろう。」

「ありがとう、姉者。…で、無風よ。何か用があって来たんじゃなかったのか?」


 先ほどの一件から、妙才が俺に対して前よりは柔らかくなってくれた事に嬉しい限りである。

 ギスギスした関係は仕事だったとしてもいい気分ではないからな。


「…………許褚と典韋。…………彼女たちはどうだ?」

「ふむ、やはりその件か。正直私はなかなか光るものがあると見た。」

「あぁ、あの許褚とかいう少女、なかなかの腕前だった」


 いや元譲、お前が弱いだけだ。

 もっと強くなってもらわねば困る。

 口には出さない。面倒事が目に見えている。

 そういえば……


「…………文若はどうした?」

「ん?あぁ、戦後処理とお前の『気絶させた』賊の回収に追われている。」


 そう、俺は自分で倒した敵は全員気絶させただけである。

 獲物が木刀ではあったが、殺そうと思えば急所を狙うなり背骨を折るなり出来た。

 しかし殺さなかったのは戦慣れしていないのもそうだが、一つの要因としては自分の兵に出来ないかと考えたからだ。

 あとで文若に怒られるんだろうなと思い、気が沈むが試したい事もあるし、自分の兵を少し持つくらい孟徳も許してくれるだろう。


 そして俺は”一人気づかれないように”一度陳留の街に戻った。

 俺の最後の仕事を終わらせるために……

 そして陳留と軍とを何往復かして疲れて帰還中の馬車で眠っている頃……


================桂花視点================


「やっと戻って来たわね、桂花。賭けはあなたの勝ちよ。まさかピッタリと兵糧が尽きるなんて流石だわ。これからもその調子で頑張ってちょうだい」

「………はい。華琳様」

「あら、元気ないわね。まぁ、一歩間違えれば死んでたものね。」


 そう言って華琳様は前を向く。

 正直私は死んでいた。それは、まさかアイツ一人で賊討伐を終わらせるとは思っていなかった。

 しかも減ると思っていた兵士が減らず、アイツが自分の兵としたいなんて言って逆に人数が増えた。

 増えたことは問題ない。それは元の兵数だけでも兵糧が足りないと戦後処理を行っていた時から気がついていた。

 ああ、私死ぬかも知れないと思いながら陳留に向かって帰還していた時に違和感に気がついた。

 何故、兵は兵糧が少なくなっているのに普段通りの量を食べているのか。

 私でなくても兵糧を運ぶ兵士が兵糧の残りを見て、量を減らしてもおかしくない。

 そんな違和感があったが、直に無くなってしまうだろうと思っていた。

 なのに丁度で兵糧が切れる頃に陳留に着いてしまった。

 おかしい、明らかにおかしい。

 私が兵糧の残りを計算し間違えた訳が無い。

 何度も見返したのだ。なのにピッタリと兵糧が尽きるまで残っていた。

 頭の中で何故だ何故だと考えたが答えは一向に分からない。

 そんな時に華琳様が陳留の前まで来た所で、私の答えを導き出す言葉を口にした。


「それにしても、無風は体力ないわね、あの戦闘に一人で行って終わらせたのは凄いけど、それから姿が見えないと思ったらいつの間にか馬車でぐっすり眠って居たのよ。本当に呆れるわよね、桂花」


 体に雷が落ちたような衝撃が私を襲った。

 まさか、いやアイツなら、だけど。

 あまりに有り得ない事だったが、そうとしか思えない答えにたどり着いた。

 つまりは兵糧が"増えた"のである。

 あいつ一人でこの軍全員分の兵糧をだ。

 そんなの並大抵の体力の持ち主では不可能だ。

 しかし、そうとしか思えない。

 その答えにたどり着いた時、ものすごい屈辱を受けた気がした。

 男のくせに、客将のくせに私を哀れんで助けたのか、もしそうならアイツを殺して私も死んでやる。

 しかし、それは本人に聞かなければ分からない。

 アイツが持ってった兵糧の証拠隠滅をしてやる。礼を言わない代わりだ。

 私は、一番後ろでノロノロと動く馬車を一瞬睨みつけた。


================無風視点================


 その後、結果から言うと許褚と典韋は仲間になり、元黄巾党だった賊220名を部下として持つことを許可してくれた。

 そして文若からは7時間の説教と罵詈雑言の雨あられを喰らいました。ミドリムシになりたい……。

 あと何故か典韋がしょっちゅう俺に付きまとってくる。

 


 あぁ、空が青いなぁ……



はい、ということで賊討伐一旦終了です。

今回のはほんの少しでも季衣と流琉の悲しみを感じて下されば幸いかな

中盤の流琉視点は拠点移行のための好感度上昇イベント?程度に見てください。お願いします。なんでもはしませんのであしからず。

次回から拠点パートやります。

基本は√の人物視点でやろうと思ってますので、どうぞよろしくお願いします。

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