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戦後処理①

お久しぶりです

卒論の中間発表が終わり一息つけました。

また投稿を再開していきますのでどうぞよろしくお願いします。

話を書く感覚が随分と衰えてしまいましたのでリハビリを兼ねて数話ほど、まずは投稿して自分で読み直しながら進めていくつもりです。


話が長くなりましたが、それではどぞどぞ~




================雛里視点================


 現在、私達の陣営では静寂が満ちています。

 それは撤退してゆく袁術軍を追撃するべきか追撃せず守りを固めるべきかの二択で軍内部が別れているからです。

 私や朱里ちゃん愛紗さんなどの主要陣営は追撃するべきと主張してはいるのですけれど、他の大多数な文官武官は他諸国が侵略してくる前に守りを固めるべきと言ってきます。

 勿論、周りの諸侯が侵略して来たら今の我が国では厳しい対応が要求されるでしょう。

 しかし、ここで追撃を行わずに見逃してしまえば民からの信用を失ってしまいます。

 そこで沈黙を破ったのは朱里ちゃんでした。


「ここはやはり袁術軍を追撃するべきだと思います。多少の無理を押してでも行動を起こさなければ民は納得しません」


 朱里ちゃんの迫力に負け、殆どの文官は一歩後ずさり武官は後退はしないが反論出来ないでいる。

 しかし、そこで一人の女性武官が前に一歩踏み出し、抗議の声をあげた。


「そうは言うが孔明殿、相手には飛将軍呂 奉先とあの無風殿が付いているのだぞ。迂闊な追撃は仲間を失い、士気を下げるだけに過ぎないだろう?そこの所を詳しくお聞かせ願う」


 講義を口にしたのは簡雍 憲和という女性で、実は桃香様の幼馴染でもあり、桃香様とお付き合いで言えば劉備軍一の最古参です。

 桃香様が旅に出始めた当初は別々の方向に旅をしていたらしいのですが、桃香様が義勇軍を立ち上げたという噂を聞きつけ、義勇軍発足当初から桃香様を支えてきてくれた一人です。

 実情、主君としても付き合いとしても最古参で私達の同期の人物になりますね。

 

「確かに無益な追撃かもしれません。しかし、当初私達が考えていた結果と正反対の事態になっています。袁術軍からの侵攻を受け、結果から言うと死者は出ず負傷者と大量の兵糧を失っただけという結果になってしまいました。民からすれば…いえ、この戦に参加してない人からすれば巫山戯てるとしか思えない結果です。何かしら結果を残さなければ民は納得しません!」

「そんな事は分かっている!しかし、民を納得させる為に自国を失う結果になっては元も子も無いだろう!」

「そうかもしれません。しかし!それは可能性の一つであって確定した未来ではありません!今、袁術軍を逃せば確実に民からの信用を失う未来しか待っていませんよ!」

「ぐっ!?だが……しかしな孔明殿!」

「もう止めて!」


 朱里ちゃんと簡雍さんの言い争いが発展しかけた所で桃香様が叫びました。

 また、場には静寂が訪れましたが今回は長く続きませんでした。


「雛里ちゃん。雛里ちゃんはどうすればいいと思うの?」


 今まで喋っていなかった私を桃香様は指名して問いかけてきます。

 指名された事で朱里ちゃんや簡雍さんだけでなく、この場にいる全員の視線が私を見つめます。

 ほぼ全員の視線を受け手一瞬…本当に一瞬だけ怯んでしまいましたが、上座からこちらを見る桃花様へと視線を固定して返答しました。


「そうですね……上策と下策。二通りありますが、どちらからお聞きになりますか?」

「そりゃー、上策から…かな?」


 ご主人様が首を傾けて難しい顔をしました。


「では、上策から。現状を見れば誰でも私たちが有利な状況下にあります。ここで全軍の内8割を追撃部隊に回して袁術軍の全滅を狙うのです。幸い敵の退路先は呉の領地である呉郡なので、例え名門袁家の者であろうと慎重に動かざるを得ません。つまり敵の退却速度が落ちるのは明白、ここを叩けば痛撃を与えられます」

「そう……だね。確かに袁術軍を叩くチャンス…いや、好機と言えるね」

「もちろん、そうすれば必然的に私たちの君主である桃花様のいるここ……下邳城の守りが薄くなりますが、今回の戦で鈴々ちゃんが負傷したと言う事もあり、療養も兼ねて本城に残ってもらえば、最悪、本城が他諸侯に責められても私たちが帰ってくるまでの時間を稼ぐくらいは出来ますでしょう」

「何を言うのだ雛里!鈴々はまだまだ大丈夫なのだ!こんな傷、唾付けてれば自然と治るのだ」

「何を言う鈴々!お前の傷は自分が思っている以上に酷いんだ。ここは私に任せて安静にしていろ。所詮は袁家の……」

「愛紗こそ何を言っているのだ!袁術なんかどうでもいいのだ。でも、相手には無風おにーちゃんに呂布が……」

「まぁまぁ、二人共落ち着いて。まだ雛里の話が途中なんだしさ」


 愛紗さんと鈴々ちゃんが口喧嘩を初めてしまい、それをご主人様が仲裁をする事で二人が渋々ながらもお互いに距離をとりました。


「話を続けますね?本城には桃花様・ご主人様・鈴々ちゃん・私の4人が残り、他の皆さんには追撃部隊として行動してもらいます。現場での指揮は私より朱里ちゃんの方が向いていますし、的確ですから。…………ただ、この案を採用するのなら絶対に成功して貰わなければいけない事が1つ」


 そこで一旦話を区切り、集まってくれている全員を見回します。

 全ての目と耳が私に向いているのを確認してから、話を続けました。


「それは……"無風さんの殺害"………です」


 この言の葉を紡いだ瞬間、場違いにも不思議な気持ちになってしまいました。

 たった一言二言の単語、しかしその言の葉を理解した瞬間に周囲にいたほぼ全ての武官文官がザワめき出す光景に見とれてしまいました。

 武官の人達は絶望にその顔が歪められ、「殺す前に殺される」「師を殺すなんて無理だ」といった言葉を隣にいた人達と話し合っています。

 文官の人達は黒い感情が入り混じった様な笑みを作り「無能を殺すのなんて簡単すぎる」「あんな屑の生死が何故、条件なんだ」とほぼ全ての人が話しており、その中で顔色が青や白に変色している文官は無風さんの力量を見たことがある人物でしょう。

 そして桃香様や愛紗さんなどの無風さんと特に面識のある人たちは全員が私に向かって「有り得ない!」と言いたげな視線を送られる。

 その反応も予想の範囲内……いえ、確実にそうなると分かっていたので私は至って冷静に次の言葉を紡ぐ。


「今回のことで無風さんは桃香様率いる劉備軍を裏切ったのが諸侯に知れ渡るでしょう。例え『無風』という個人を知らなくても反董卓連合で一番の手柄を持って行き、そこで見せつけた智勇を知らしめた天下の武将。そんな英傑が我々の元から抜けたとなれば、諸侯はこの機を逃すまいと責め立てるでしょうから」

「え……でも雛里ちゃん、私たちに付け入る隙が無いってことを見せつければ簡単には攻めて来ないんじゃなかったっけ?」

「桃香様、少しだけ状況が変わったのです。確かに本物の智者がいる諸侯ならば、裏切ったとはいえ、それを瞬く間に退けた私たちを楽に狩れる獲物だとは思わないでしょう。しかし、見方を変えれば『強者が抜けて戦力の落ちた劉備軍』とも捉えられます。その一面だけを見れば私たちは楽に狩れる獲物だと錯覚しても可笑しくはないでしゅ」


 長々と喋り続けていたせいで最後の部分を噛んでしまい、とても恥ずかしくなって周りの視線を塞ぐよう帽子の鍔を下げました。

 その帽子を下げる仕草を、無風さんが居なくなった事に対して悲しんでいると捉えたのか、周りの人達が黙り静寂が場を支配します。

 しばらくして桃香様以外の全員が意識を現実に引き戻せた様ですが、それでも慌てた様に私へまくし立てた事で静寂は破られる。


「ま、待て待て雛里よ!無風殿を雛里は、し、しし、慕っているのだろう?」

「はい、愛紗さん。私は無風さんを、お、お慕い申しています。」


 流石に全員の前で誰かを慕っていると言うのは凄い恥ずかしいですが、そう問われては言うしかないでしゅ、あぅぅ。

 愛紗さんは私の返答に真っ赤にした顔を更に真っ赤にさせながら迷った声で聞いてきます。


「な、ならば何も無風殿を殺さなくてもいいのではないか?我々とも無風殿とは仲が良かった故、説得して戻ってきてもらうとか、最悪は捕縛して強引に連れ帰る事も……」

「お気持ちは嬉しいですが、明確に言わせて貰いますと"無理"です」


 『無理』という単語が筆頭軍師である私の口から出たことに配下の文官は驚き、言外に出来ないと言う様な台詞に愛紗さんを含め、星さん・鈴々ちゃんなどの武官方が少し険しい顔をしました。


「別に愛紗さん達がそれを出来ないとは言っていません。実際にやれば逃げるのが下手な無風さんはすぐ捕まるでしょうし。けれど、無風さんの性格を思い出してください。あの人が"私が慕っている"という……ただそれだけの理由で戻ってくると思いますか?あの人が自分から動いた時に一度でもそれを曲げた所を見たことがありましたか?」


 私がこの場にいる全員に聞こえるほどの声で呼びかけます。

 すると先ほどまで不満顔をしていた愛紗さん達は今度は渋顔になり瞳は悲しみを湛えていた。


「きっと、今の無風さんなら死んでも私たちの軍門に戻る事はないでしょう。ならば、殺すしかないのは自然な流れです」

「しかし、それでは雛里」

「愛紗さん。時には大を生かす為、小を切らねば成らない時もあります。まぁ、まだ草案を述べてるに過ぎませんから、そんな絶望に染まったような空気は止めてください」

「そ、そうだよね!まだ決まった訳じゃないもんね!」


 桃香様が無理矢理に場を明るくしようと笑顔を振りまき、それに釣られる様に周りも幾分か明るい雰囲気が戻ってきました。

 機を逃さないご主人様らしく、会話を振ってきます、流石ですね。


「これが上策だとは思えないんだけど、じゃあ次は下策の方を聞かせて欲しいな」

「はい、下策の方は至って単純です。このまま追撃は一切おこなわずに通常業務に戻っていただくこと」


 言い終える前に再び議場がざわめきました。

 しかし、そこで簡雍さんが朱里ちゃんに抗議した様に私にも抗議の声を上げます。


「待ってくれ士元殿、確かに私は孔明殿に対して迂闊な追撃は意味が無いと言ったが、全く追撃を行わないのは如何なものかと思うのだが?」

「簡雍さんの言いたい事も分かります。しかし、今回の戦はほぼ兵の消費は皆無に近いです。更に敗走した訳でもない敵兵は士気も低くない。ここでの追撃は先程申しましたが、大規模なモノにならざるを得ません」

「むっ……しかしだな」

「それに簡雍さんも言っていたでは無いですか。敵には無風さんに呂布がいる…と。恐らく過去最大の難敵を相手にするには時間が足りません」


 これには簡雍さんと追撃するべきだと言った朱里ちゃんも苦い顔をしています。


「朱里ちゃんの言いたい事も分かるよ?確かに兵にも、民にも納得がいかないと思う。でも、今回はそこまで大事に捉えなくても大丈夫だと思う」

「なんでそう言い切れるの雛里ちゃん。私たちの勢力は桃香様の理念に基づいて方針を決めないと駄目。民の心が離れていってしまったら劉備軍は瞬く間に瓦解しちゃうよ」


 朱里ちゃんの言いたい事は十二分に分かる。

 確かに皆が笑顔になれる様な"理想を抱く事"は大事だと思うけど、それで"現状を把握する事"を放棄してはいけない。

 桃香様には皆を惹きつける魅力がある。

 その魅力に惹きつけられ、実際に桃香様の理想に共感して私たちは理想実現の為に桃香様とご主人様に従える事に……仲間になった。

 そして、その理想を実現する足掛かりとして徐州牧に桃香様がなり、やっとこの下邳城にて徐州の状況を把握した……と思った所での今回の戦。

 未だに民へ施した事など皆無に等しい。

 つまり、民の私たちへ対する期待は"まだ"底辺に近い状態。

 これから幾らでも挽回の機会はある。

 だから私は民の離反は、朱里ちゃんが気にする程の大事とは思っていない。

 

「でもね朱里ちゃん。民の心を繋ぎ留めるのも大事だとは思ってるけど、それを繋ぎ留めて桃香様の心に近づけるまでに他国から邪魔されてたらそれどころじゃないよ」

「うっ、確かに」

「だから私はここで警戒状態を解いて通常業務に戻して『噂』を流せばいいと思う」


 噂?と朱里ちゃんと優秀な文官さんを除いた全員が頭を傾げるか、分からないという表情をしました。

 ただ私の真意に気がついた朱里ちゃん達少数の人は納得がいったという表情をする。


「雛里ちゃんが何をしたいのかやっと分かったよ。…でも、かなりの博打だよ?」


 朱里ちゃんが心配そうな顔でこちらを見てくるけど、私は笑顔で答えました。


「うん。でもこれが成功すれば民の心を大きく引き寄せる事ができると思うの」

「ね、ねぇ?私たちにも分かりやすく教えてくれないかな?」


 桃香様が両手の人差し指を両のこめかみに当てウンウンと私たちの会話を理解しようと必死になっていますが、降参したみたいです。

 鈴々ちゃんを見ると私の視線に気づいた鈴々ちゃんがこちらへ顔ごと視線を向けてきていつもの力の抜けた「にゃー」という言葉とともに笑いかけてきました。

 その笑顔に笑顔で返して桃香様へ顔を戻します。


「私たちが通常業務に戻った所で民にこう噂を広げさせるのです。『敵が来ても冷静に対処し追い返した』と」

「ただ噂を立てた所で民は信じようとはしません。しかし、本当に城に務める人間が普段と変わらぬ姿で仕事をしていれば……どうなるか」

「民は私たちを見てこう思う筈です。『敵を敵とも思わぬ軍』だと」

「勿論これは大きな博打です。民は抽象的に敵が来たとしか認識できてないというのが前提ですし、兵は実際に戦ったのに褒美が無ければ不満を募らせます。もしかしたらこの噂をただの強がりと見て諸侯が攻めてくるかもしれない」


 私と朱里ちゃんが交互に喋り桃香様とご主人様へ説明をしていきます。

 何か手柄があれば、博打に出なくてもいいのですが……。

 私がその"何か"を用意出来ないか考えていると兵士が数人ほど軍議の場に入場してきました。


「ご報告を申し上げます!」

「発言を許す。申してみよ」


 愛紗さんが全員を代表して兵士へ問い返します。

 その言葉を聞いた兵士が片膝をつき、抱拳礼をしたあとに顔を上げました。


「はっ!撤退する敵兵に追撃を行っていたのですが、敵の一部が降伏をしましたのでご報告にと」

「はぁ?そんな事で一々報告に来るな!後で纏めて「ちょっと待ってください!」……雛里?」


 愛紗さんが兵士の皆さんへ叱咤しようとするのを遮り、報告の為に数人の中から一歩進み出た兵士の目の前へ行く。


「それで、一体『誰が』降伏したのですか?」


 私は『誰』という部分を強く協調して兵士に問いかけます。

 兵士さんは私が目の前に居る事を考慮して声を張り上げる様な事をせず声量を抑えてくれました。

 ただ単に筆頭軍師という名に萎縮しただけかもしれませんが。


「降伏してきたのは……真紅の呂旗」

「!!………呂……奉先…!」


 三度、場がざわめき立つ。

 私は朱里ちゃんへ顔を向けると、コクンと頷いてくれました。

 そして私の代わりに朱里ちゃんが議場にいる全員へ向けて大声を張ります。


「一度解散します。こちらも情報が纏まり次第、再度招集をかけると思いますので待機しておいてください。桃香様とご主人様はここで待っていてください」


 有無を言わせぬ強い口調で宣言する朱里ちゃんは違和感しかありませんが、これぐらいの口調で言わなければ逆にこちらが舐められるので致し方ありません。

 本人もむず痒い感じがしているのでしょう。

 顔がしかめっ面の一歩手前まできています。


「本人か確認を取りに行きます。愛紗さん、鈴々ちゃん、星さんは私と共に来てください。白蓮さんは桃香様達の事を頼みます」


 次々に官僚の皆さんへ指示を出していきます。

 唯一指示が無かった私は桃香様とご主人様のお側で待機。

 筆頭云々は置いといて軍師が全員、君主から離れたら万が一に対応出来ませんから。

 言葉を交わさなくても分かる事ですね。


「ねぇ、雛里ちゃん」

「何ですか?桃香様」


 軍議の堅苦しい雰囲気が霧散して一つ深呼吸した所で桃香様が声をかけてくれました。


「もし……もしもだよ?私が雛里ちゃんの言っていた上策を選んだら………」

「無風さんをどこまでも追いかけて殺すだけです」


 私が切り捨てる様に言った事で桃香様が悲しそうな顔をします。


「桃香様、勘違いはしないでください。私は無風さんを慕っていますし死んで欲しいなんて願うはずもありません」

「なら…「でも!」…っ!」

「私の想いを守る為に徐州に住む全ての命を危険に晒す事など……出来ません」


 軍師であるが故、余計にそんな事できませんと最後に付けて。


「それは……」


 桃香様も口を噤みました。

 恐らく桃香様なら「無風さんなら、きっと話を聞いてくれるよ」「一生懸命説得すれば分かってくれる」といった言葉を口にしたいのでしょう。

 しかし、それはほぼ無いに等しい可能性。

 正直、甘すぎる妄想。

 更に言えば桃香様が口を挟もうとしているのは私と無風さん二人だけの領域。

 我らが君主と言えど、その領域に侵入する事は許されません。

 そう言いたかったのですが、桃香様は私たちだけの領域に侵入して来ることはありませんでした。

 その行動に私は安堵しました。

 桃香様の中で無風さんの影響が現れている事を実感できたからです。

 瞬きするほど短い時ではありましたが、心の底が暖かくなりました。

 そして、次の瞬間には身も凍るような青い炎を内に灯す。

 桃香様・ご主人様・白蓮さんに私の近くへ集まるよう声をかけ、小声で話し合う様に促しました。


「なんだい?雛里」

「どうかしたの?雛里ちゃん」

「ご主人様・桃香様、それに白蓮さんにも耳に入れておいて欲しいことが」

「わ、私もか?」

「はい、白蓮さんは桃香様と昔からの親友と聞きます。なので"裏切る事はない"と思いまして」

「おいおいおい!?どうして私が桃香を裏切るんだよ!」

「白蓮落ち着いて、雛里は裏切り者なんて言ってないよ。ただ、その可能性がないと言ってるだけだって」

「つ、つい頭に血が昇ってしまった。謝罪する、すまない」

「いえ、私も紛らわしい言い方をしました。こちらこそ済みません」

「で、なんでそんな話が出てきたんだ?」

「…もしかしたら、"裏切り者"が私達の軍内に居るかもしれません」

「「「!?」」」

「それに気が付いたのは鈴々ちゃんの一言でした」

「鈴々ちゃん?」

「戦が始まる前、呂布を相手にどう戦力をぶつけるのかを話し合っていた時、鈴々ちゃんが言っていたんです」


 呂布との激闘で負傷した苦痛の叫び声をしていたと兵から報告された鈴々ちゃんの話をしました。


「何それ!私なにも聞いてない。朱里ちゃんや雛里ちゃんでも?」


 桃香様が驚いた表情で私に詰め寄ります。

 私は大きく頷きながら全員の表情を密かに伺う。

 信用はしていますが何事にも疑いを持たなければいけないのが私達軍師の役目です。

 そのことに後ろめたさを感じながらも見ていると驚愕の表情をしている皆さんの中で"ある人物"が一瞬だけ口元を苛つかせた様に歪めた。

 "あなた"が……情報を秘匿していた!?

 口を歪めた人物へ気づかれない様に視線を送りながらも心n中では人生で一番の驚愕に襲われていました。

 何故、無風さんの情報を止める必要があったのか検討もつかなかった事と、まさか"あなた"に裏切られるとは思ってもいなかった事で私の胸中は混乱している。


「……この情報はまだ推測の域を出ていません。なので皆さんは今回聞いたことを胸の内に隠しといてください」


 "あなた"に無闇矢鱈と動かれては困りますので…

 最後の言葉は心の中で呟き、これからのことを考えないといけませんね。

 私のためにも、愛しき人のためにも。


up主「急展開につづいての急展開!」

華琳「そうね」

up主「まさかの呂布参戦に裏切り者発覚!?」

華琳「そうね」

up主「そして小を捨て大を取る雛里ちゃんの健気で可愛いところ!」

華琳「そうね」

up主「……あの、怒ってます?」

華琳「ええ」

up主「ど、どーして怒っているのか聞いても?」

華琳「分からないの?」

up主「いえ、恐らくコレだろうなーという想像はできるけど」

華琳「自信を持っていいわ。それよ」

up主「あれか。だからごめんって機嫌直してよ」



獅弩「なにしてんだ、あの二人」

シャオ「なんでもー、用事に遅刻しかけて朝のキス忘れて飛び出してったらしいよ?」

獅弩「はぁ?そんな事で起こってんのか?あの女」

シャオ「そんな事じゃないよ!これは女性にとってジューヨーな事なの!」

獅弩「そ、そうなのか?」

シャオ「女ってのはね!愛してるって証拠を常に欲しがる生き物なの!」

獅弩「そんな可愛げのある女なんて男の妄想の中だけだろ」

シャオ「あー!獅弩、シャオのこと信じてない!酷い、シャオのこと信じてくれない獅弩なんか嫌い!大嫌い!うわぁぁあああん」

獅弩「うぉ!?ちょ、ちょっと待てよシャオ!分かった、俺が悪かった」

シャオ「うぇぇえええええん」

獅弩「こっちが泣きてぇよ」


up主「何してんだろ、獅弩のやつ」

華琳「さぁ?それよりも、ほら、もっとこっち来なさい」

up主「ぬわぁ!?急に引っ張るなよビックリしたな」

華琳「うふふ」


北郷&無風(何だかんだ言って仲いいよな、あいつら)



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