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清き懺悔の心

前回のあらすじ

・愛紗かわいいよ愛紗

・鈴々の方がお姉さん!?!?

・みかんが箱で4つも送られてきたけど、食いきれねぇ ←


================愛紗視点================


 既に何合打ち合っただろうか。

 呂布に勝負を挑んだまではいいが、10合ほど武器をぶつけ合っただけで呂布と私の実力差を実感した。

 このまま続けていても徐々にこちらが不利になってゆくだけ。

 ただ幸いなのが、舞の型の変幻自在に攻撃を打ち出せるという利点のお陰で呂布はまだ探るような攻撃しかして来てないことだろうか。

 だが、それも万能では無い。

 変幻自在に動けると言っても、着実に体の節々へその負担が蓄積されてゆく。

 事実、右腕が少しずつ痛くなってきた。

 今はまだ違和感程度だが、それも時間の問題だろう。

 そして恐ろしいのが、何処から打ち込まれるか分からない筈なのに呂布は私の攻撃を一撃一撃全て受け止めているのだ。

 

「面白い攻撃………恋も」

「っ!?」


 後ろに跳躍し、呂布から距離を取る。

 次の瞬間、私が立っていた所に無数の斬撃が通過するのを目で捉えた。

 私もそれなりに武に生きる人間なだけあって、今のは見ただけで理解してしまう。

 自分よりも型の完成度が高い!?

 まるで無茶苦茶に戟を降っている様に見えるが、速度、威力のどちらも見惚れるほどのものだ。

 そして呂布も似たような動きで翻弄してくる。


「くっ……!?」


 舞の型の利点は自由な上下攻撃により相手の攻撃を封じる事に繋がってくる。

 しかし、両者が舞の型で討ちに掛かれば自然と技術が上の人間が勝るのは定石。

 正直、攻撃に出る事へ躊躇いが私の中で募り始めていた。


ガィィィン!!


 武器が鍔迫り合い状態でぶつかり合い、呂布と至近距離でにらみ合う。


「流石は飛将軍呂布殿だな」

「恋……その名前………嫌い」

「なに?……っ!?」


 呂布とお互いに武器を押し付けあう様に力を入れ、その反動で距離を取る。


ドゴォォォォォォオオオオ!!!


 ちょうど私と呂布が立っていた所に大穴が空いた。

 比喩ではなく、文字通り大岩が落ちてきたと言われれば納得してしまいそうな大きさの穴だ。

 信じられない事に、その反動で小さな地震が発生し近くに居た両軍の兵士が戦闘を中止している。


「愛紗ー!ここからは鈴々に任せるのだ!呂布、尋常に勝負しろーなのだ」

「あ、ああ」


 目の前で起きた現象に驚きすぎて思わず生返事をしてしまった。

 なぜならばその大穴の中心に私の義妹である鈴々が立っているからである。

 確かに鈴々の蛇矛による攻撃は凄まじい威力だったし、実際地面を少し凹ませる事ぐらいなら鈴々も私でも出来た。

 しかし、目の前にある穴は隕石か何かと間違えかねない程の大きさだ。

 ここまで非常識な事をする人間は一人しかいない。

 無論だとは思うが、無風殿の事だ。

 恐らく彼の入れ知恵だろう事は予測がつく。

 少なくとも私の知る鈴々はこのような事が可能では無い。

 そんな事を考えてる間にも鈴々と呂布の戦闘は開始された。

 だが、一合打ち合いを見ただけで結果は見えた。

 "あの"呂布が鈴々の攻撃を受けた瞬間、武器が大きく弾かれて呂布も後方に吹き飛ばされたのだ。

 空中で体勢を立て直した呂布は着地と共に前へ走り出し鈴々との距離を詰める。


「行っくのだー!」


 鈴々も好戦的な笑みを浮かべて呂布に向けて水平に"飛んだ"。

 そう、飛んだのだ。

 私はその場から動いて居ないので穴を挟んだ向こう側にいる鈴々とは少し距離がある。

 しかし、鈴々が飛んだ際に蹴った砂が私の足元にまで飛んできてピシピシと砂が足に当たる感触がする。

 こんな時に砂を掛けてくる馬鹿が居るはずもなく、しかも砂をかけて攻撃するにしても足ではなく目を狙うはず。

 つまり砂が飛んできたという事実だけが残る。

 鈴々はそのまま水平に飛んで蛇矛を横殴りに振りかぶった。

 呂布は交差する一瞬で蛇矛を下から打ち上げ、隙を作ろうとするが……


「甘いのだ!」


 蛇矛は戟の攻撃を真下から受けたが、少し浮いただけで終わり蛇矛の棒部分に当てられ呂布の体が横にすっとばされた。

 次元が違う。

 もう、それしか私には言いようがない。

 私の力を持ってしても呂布には一切歯が立たなかった。

 それをどうだ。

 鈴々と呂布のやり合いは、既に鈴々の一方的な攻撃が続いている。

 凄いと思うが、同時に心配にもなった。

 今の鈴々は異常だ。

 それは恐らく無風殿のせいだろう。

 確かに彼の教えてくれたものは私達を飛躍的に強くした。

 しかし、それらには副作用もある。

 彼自身、それを含めた上で教えてくれた。

 事実、舞の型を長く使った上に相手は呂布。

 力でも負けていたために腕への負担は大きく、疲労が激しい。

 この分だと明日は酷くなりそうでもある。

 私でさえ若干満身創痍な状態であるのに、鈴々は呂布相手にずっと攻勢が続いている。

 無理をしてないか心配で仕方がない。

 

「もうおしまいなのかー?呂布も大したことないのだなー」


 呂布と距離を取って立ち止まった鈴々は挑発し、呂布からの攻撃を誘う。

 あんな馬鹿にされる様な言い方、挑発だと分かっていても乗らない訳にはいかない。

 呂布を怒らせてどうするつもりだ鈴々……


「余裕……無くす!」


 未だに土煙が立っている中から勢いよく呂布が鈴々に向かって走り出す。

 幾度となく内蔵に響く様な武器同士のぶつかり合いを繰り返している内に一つ気づいた。

 鈴々の奴……怒っているのか?


ガィィィィィィイイイイイイン!!!!!!!


 お互いにデカイ一撃をぶつけ合い、その反動で両者が飛び退き距離が空く。

 そして再度二人が接近仕掛け………



ピシャァァァァァァァアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!



 合うかと思われた瞬間、文字通り雷が二人の間に落ちてきて両者とも吹き飛ばした。

 今度こそ周りで戦闘を行っていた全ての兵士が戦闘を中断して雷の落ちた場所を唖然と見ている。


「………はっ!?り、鈴々!大丈夫か!?」

「いたたた、な、何が起こったのだ?」

「よ、良かった。無事だったか。私にも分からぬ。雷が落ちたとしか………」


 そして鈴々共々雷の落ちた中心を見ると、驚いた事に一人の少女が立っていた。 

 しかも、その姿は見紛う筈もない私の隣で戦況を眺める双龍の片割れ………



「両軍、直ちに戦闘を中止。これ以上の戦闘はお互いに不利益です」



 雛里だった。

 しかし、よく見ると姿は雛里のそれだが、全体の色が違う。

 雛里とは真逆の赤を基調とした服装、それに銀髪、あとは……目が少し変?


「もう日の出が見えてきてます。これ以上の戦闘は無意味、両軍共自分の陣へお帰りください」


 言われて初めて地平線の彼方を眺める。

 確かに水平線の向こう側は既に明るくなっているし、言われてみれば色が識別できている時点で気づくべきだった。

 つまりはそれだけ周りが明るくなっている証拠だ。


「り、鈴々はまだ戦えるのだ!もう少しで呂布を打ち取れるのだ」


 鈴々がまだだと雛里(?)に叫ぶ。

 しかし、彼女はチラリと私たちの方を見てため息を吐いた。


「止めて置いた方がいいです。それ以上その力を行使……いえ、酷使し続けると貴方の手が終わりますよ」


 言われて初めて私は鈴々の掌を見た。

 

「り、鈴々!?どうしたのだこの手は!?」


 鈴々は手に布を巻いているので分かりづらかったが、その手は掌の部分だけ紫色に染まっていた。


「氣の割り振りを全て攻撃の為"だけ"に回していたら、先に体の方が悲鳴を上げるのは必然です」


 それだけ言って雛里(?)は呂布のいる方へ歩いて行ってしまった。


「まだ、まだなのだ!まだやれる!」

「止めろ鈴々、今はお前の治療が先だ。お前が倒れたら兵の士気にかかわる」


 嘘。

 本当は鈴々の事が心配で仕方がないだけ。

 しかし、それでは鈴々は返って暴走しようとする。

 だから"らしい"理由を出して説き伏せるしかない。


「ぐっ………うぅ…」


 本当は相手を追いかけたくて仕方がないのだろうが、鈴々が最初に言っていた様に自分たちが仮に負け士気が落ちれば最終的にご主人様たちの命にかかわる。

 ようやく鈴々は体の力を抜いて項垂れた。

 追う意思が無いのを確認してから近くにいる兵士へ指示を飛ばす。


「すぐに退却する。隊列を整えろ。それから、後方に星……趙雲が居るはずだからあとはそちらに指揮を任せる。無いとは思うが追撃に備え、待機していた公孫賛殿に殿を。迅速に頼む」

「承りました」


 激戦をやり過ごした後で申し訳ないとは思うが、今は周りの事より鈴々の方が心配だった。


「…大丈夫か、鈴々」

「…………」

「…………」

「やれたのだ……」

「…………」

「鈴々一人で呂布をあそこまで追い詰められた」

「そうだな、姉として私も誇らしく思うぞ」

「"あの時"鈴々も追っていれば無風お兄ちゃんは痛い思いをしなくて済んだのだ」


 あの時とは恐らく………反董卓連合での無風殿と呂布の戦いを意味しているのだろう。

 だがそれは………


「仕方がない、あの時は鈴々と無風殿以外、皆戦意を失っていたんだ。あそこで鈴々が軍からいなかったら………」

「わかってるのだ。でもそうじゃない」

「…………」

「鈴々がもっと強ければ、そうすれば皆があんな事になる筈も無かった」


 違う。

 あれは『誰が』という問題じゃない。

 あの場にいた『劉備軍』全体の問題だ。

 だが、鈴々はそれを自分のせいだと思い込んでいる。

 もしかしたら無風殿が軍を抜けたのもそれに拍車をかけたのかもしれない。


「鈴々は……悔しいのだ。何にも出来ない自分に……無風…お兄ちゃんにばっかり迷惑をかけてる自分に!」


 無言のまま鈴々の頭を撫でる。

 私はまた一つ間違いを犯してしまった。

 無風殿が来てから、鈴々は本当に出来た妹で、その印象が強かった。

 でも私は知っていた筈だ。

 鈴々がこういう性格で、とても純粋な気持ちのか弱い私の妹だと。


「り…鈴々は……ぐやしぃ…のだ。じぶ…んがなさ……グス…うぅ……情けな゛いのだぁぁ」


 うわぁぁぁと叫ぶ様に泣いて抱きついてくる鈴々を抱きしめる。

 心の中で何度も何度も謝りながら、何も言わず。








 鈴々が泣き止むまでずっと、抱き続けた。










はい、という事でup主です。

今回は短めに……


すみません。

リアル忙しすぎて更新が遅れに遅れてます。

ネタ用のメモ帳が遂に2冊目に突入しとるのに書けないというね。

最近そんなんでストレスがロイヤルストレートフラッシュです。


次回も頑張ります。割と真面目に(更新早くなるかは未定

それでは皆さん、でわでわ~

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