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交差する思惑

大変長らくお待たせしました。

正直、書くよりこのルートに決定するまでの時間の方が長かった気がする。

そして最近髪の寝癖がサ〇ヤ人になる事が多くなった ←

「…………さて、玄徳はどう出るか」


 旗をあらかじめ掘り抜いておいた穴に差し込んで固定したあと、数刻ほど静観を決め込んでいた。

 しかし劉備軍には動きが無く、これは今日中に動き出す事は無いと判断する。


「どうですかねーおにーさん。劉備軍の様子は」

「…………早くて今晩……だな」

「私も同意見です。手ごわい敵を相手にした場合は夜襲が定石。もしくは気の緩む明け方にこちらへ攻め入ると思われます」


 俺の後ろで郭嘉が深緑の劉旗を遠目に見ながら助言してくる。


「それで、無風殿。次の策を行うのでしょう?」


 郭嘉が俺の旗に目を移しながら問いかけてきた。

 別に策の為に旗を作った訳では無い。

 これは言わば、"自分の存在を相手に教える"程度の効果だけ。

 それ以上は期待していない。

 

「…………今は言えん」


 策がある訳ではないが、こう言っておけば問い詰められる事も無いだろうと思い、そう口にした。

 が、言った直後に振り返り言葉を付け足す。


「…………まぁ、そうだな。撤退準備をしておけ」

「はっ?」

「おー、敵を目の前にして敵前逃亡ですかー?」

《臆病風にでも吹かれたか?この黒炭野郎》


 明らかに腹話術で喋っていたが、そこを突っ込んだら負け……なんだろうな。


「これこれ宝譿。そんなことを言ってはいけませんよ。せめて黒野郎といいなさい」


 それ、何か変わったのか?

 というかなんだよ黒野郎って。

 そのまんまなのがすごく悲しいぞ。


「…………別にお前らが居ようが……関係ない。俺のやりたい様にやる………だけ」

「わかりましたー。それでは風たちは何時でも撤退出来る様にしておきますねー」


 程昱は半目の状態のままで頷くと陣を敷いてあるところまで戻ってく。

 俺も郭嘉が戻る前に少し出てくると言って足を運ぶ。

 俺と同じく、前線で戦うであろう少女の元に。

 目指すのは太陽の光でより真紅が赤々と燃える様に彩られた旗の元。

 呂 奉先が居るであろう陣地だ。

 陣の前まできて氣を一瞬放出する。

 すると先程まで感じなかった殺気が陣内から溢れ、こちらへ近づいてくる。

 

「何しに…………きた」

「…………最後の命令を下しにきた」


 そう言って腰にぶら下げていた二つある麻布袋のうち一つを投げ渡す。

 それを片手でキャッチした呂布は訝しげな視線で何?と問いかけて来る。


「…………中身はただの飴だ。それを関羽か張飛に渡せ」

「自分でやれ……恋やらない」

「…………こっちも忙しい。渡すか渡さないかはお前の判断に任せる」


 俺の意図が分からず、それに関しては分かったと一言だけ言って終わった。

 次からが本題だと呂布に告げ、言葉を続ける。


「…………劉備軍と戦う時、兵卒相手には武器の使用を禁じr……」


 話をし終える前にまたもや俺の首元に戟が当てられる。


「そこまで指図される覚え………ない」

「そうですぞー!なんの権限があってお前はそんな事を言うですかー!」


 陳宮お前………居たのか。

 全然気がつかなかった。

 というより、呂布の怒気が強すぎて他の氣、特に小さな氣が分かりづらくなっていたからか。

 まぁ今はそんな事どうでもいい。

 これだけはこちらも譲れない。

 こちらも怒気に近い氣を放ちながら戟を気にすること無く呂布に一歩近づく。


「…………これは命令だと言ったぞ。この戦、絶対に人を殺すな」

「っ!…………」


 一歩近づいた事で、戟の刃が俺の首の皮を切り、血が流れ出す。

 だが、そんな事お構いなしに呂布を視る。


「……分かった」

「恋殿!?」


 戟を素早く下げて振り返り、陣の中に戻っていく。

 これでいい。

 あとは仲達に任せればいいだろう。

 これを成功させるには仲達の力が必要不可欠なのだ。

 その仲達に会う時間を作るためになんとか1日到着を遅くした。

 いまだ型にはまった策が多い孔明や士元なら、無駄に動こうとするのを避けて留まっているだろうと判断したが、本当に動いて居なかったとはな。


わんわん!


「…………ん?」


 突然、犬の鳴き声が響いたと思って呂布陣の方を振り向くと、こちらに向かって猛スピードで駆けてくる小型犬を感知した。


わん!


 アイマスクを外して見ると、口元から頭にかけてと足の部分が白く、ほかの部分は鮮やかな赤茶色をし、呂布よろしく首元に赤いスカーフを巻いた犬だった。

 その犬が俺の足元まで来ると、まるで抱っこしてと言わんばかりに俺の足に前足をかけてこっちを見てくる。


「セキトっ…………っ!」


 犬の方に意識を取られていたが、声のした方へ視線を向けた。

 すると、俺に警戒しながらもなんとかこの犬を連れ戻そうと戦闘態勢でいる呂布がいた。


「セキト………戻って」


 なるほど、最初は聞こえて居なかったがコイツ、セキトって名前なのか。

 俺はその場でしゃがみ込みセキトという犬の頭を撫でる。


「…………戻れ、俺はお前と遊んでられない」


くぅ~ん


 そんなのお構いなしと言うように撫でられて気持ちよさそうな声を出して甘えてくる。

 ま、人間の言葉なんて分かるわけないか。

 年来一緒にいるのなら可能性は無いといいきれないが、俺とコイツは初対面だ。

 まず無理だろうな。

 呂布の方を見るとハラハラと緊張した面持ちでいた。

 これ以上は呂布に悪いな。


「…………帰れ」


 一回抱き上げて180度方向転換させ、呂布の方を向かせて背中をポンポンと叩く。

 首を回してこちらを一度見てきたが、振り返ったのはそれっきりで呂布の元に帰っていった。

 呂布は何も言わずにこちらを見てきたが、それに答える義理もないので、アイマスクを掛け直し自陣に帰る。


 全ての準備は出来た。

 あとは劉備がどんな行動に出るか。

 

「…………失望させてくれるなよ」


 歩きながら誰に言うでも無く呟く。

 言葉はどこにも届くことなく虚空に消えていった。



================雛里視点================


「この戦、一度撤退しましょう!再起を図りましょう」

「何を言うか!そんな時間ある訳なかろう!呂布・無風なんぞ取るに足らぬ!全軍で突撃を」

「呂布はともかく、無風将軍の実力も知らぬ癖によく言う!あの化物は並ではありませぬぞ!ここは素直に降伏した方が身の安全のためです!」


 今、私たちは全員本陣に集まり軍議を開いています。

 最初は、袁術軍が兵力にものを言わせた物量戦で(けしか)けてくると踏んで警戒していましたが、一向に攻めてくる気配がないところを見る限り逆に兵力で勝っている事で余裕を見せているんだと色々な案が飛び交っていましたが、鈴々ちゃんの一言で全員が納得しました。


「皆難しい事ばかり考えるのだな~。そんなの相手が袁紹の従姉妹の袁術だからに決まってるのだ」


 それで何故かはわかりませんがとてもその言葉に納得してしまい、ここは策を練り直そうと本陣に帰って来ているという状態です。

 無風さんの旗も動く気配を見せないので、恐らく私たちが動くのを待っているのでしょう。

 希望的観測ですが、もしかしたら袁術が動くのを無風さんが止めて、待ってくれてるのかもとか考えもしましたが、そこまで甘い人で無いのを思い出しその思考を捨てます。

 今はこの軍議をどうするか。

 折角考える時間が出来たのだから有効に活用しなくては今のままでは敗色が濃厚です。

 現在、目の前では複数人の文官・武官の方々が言い争いをしています。

 武官は大抵が無風さんの実力を訓練で見たり戦ったりで知っている人が多いからか撤退もしくは投降の意見が多い。

 対して文官の方も無風さんを知っている人は多いですが、文官の人が見ている無風さんは大抵が真昼間からお酒を飲んでぐうたらしている姿ばかり。

 それに加え生意気な態度で接されてきた鬱憤もあってか、ここで無風さんを倒すべきだと主張する人が大半。

 個人的に言わせて貰えれば無風さんが裏切ったという前提が間違っていると主張したいです。

 だって、こんな所で裏切る必要がありません。

 裏切るのであれば連合の時に既に裏切っていますし、"あの人達"を私たちに預けもしなかったでしょうから。

 しかし、裏切ってないという明確な物が無いのも事実。

 軍師としても、不明瞭な物だけで判断するのは難しい。


「はわわ、皆さん落ち着いてくだしゃい~」

「あわわ、朱里ちゃん噛んでるよ~」


 私の横で朱里ちゃんが顔を真っ青にしながらも文官の方々を抑えています。


「そうだ、お前らも一旦落ち着け!」


 桃花様の横にいた愛紗さんも眉根に皺を作って、厳とした声で武官の人たちに喝を入れました。

 二人の、というより愛紗さんの喝によって軍議の場が静寂に包まれ、ご主人様が機を逃さずに話を進めます。


「兎に角、このまま闘論しても埓があかない。ここは筆頭軍師たちの意見を聞こう」


 この場にいる全ての人が私と朱里ちゃんに視線を集め、その収束された視線の威圧を受けて帽子を軽く下げ、周りの視線を見ないようにしました。


「朱里は何か策があるかい?」

「はわわ、そ、そうですね。相手が手ごわい事は確かです。しかし、前提として戦は個で戦う物ではありません。呂布・無風さん共に恐らく最強の部類に入る程の強者です。ですが、私たちの敵は袁術軍。袁術さえ撤退させてしまえば流石の呂布や無風さんも撤退を強いられます」

「つまり……どうすれば?」

「……呂布には鈴々ちゃん・愛紗さんを、無風さんには星さんにお願いします。そして白蓮さんの遊撃騎馬隊で袁術軍を翻弄、混乱した所を全軍で当たる。これが妥当かと思います」


 朱里ちゃんの策はいわゆる基本に忠実な物、確かに袁術さえ何とか出来ればこちらの勝ちは決まります。

 しかし………


「朱里ちゃん。それだと時間が掛かりすぎるよ」

「…やっぱり雛里ちゃんもそう思うよね」


 呂布は分からないが、無風さんがそんな簡単にこちらの策を実行させてくれるとは思わない。

 相手も馬鹿では無い。

 半分上手くいけば御の字。

 そんな私たちのやり取りに桃花様が首をかしげる。


「時間かけ過ぎちゃ駄目なの?」

「桃花様、最初も申し上げましたがこの戦は時間が鍵なんです。今ここで時間を喰えば諸侯の餌食として狙われてしまいます」

「あ、そっか。隙を見せちゃいけないんだったね」

「この戦、最低でも10日以内に終わらさなければ現在の情報拡散具合からすると危ういです」


 朱里ちゃんが桃花様の疑問に答え、昨夜私と朱里ちゃんで計算した、この戦に掛けられる時間を告げる。

 実際、10日も時間を裂くことはできない。

 最初、7日以内を想定していたが謎の部隊という不安要素のために余分な時間を取った。

 どうしてこんなに少ない時間しか取れないのかは桃香様の勢力の成長速度が異常である事から来る。

 黄巾の乱で平原の相、反董卓連合で徐州の州牧、ここまで急成長をした勢力は他に居ない。

 それどころか私たちと同等以上の褒美を貰った勢力を私は聞いたことも無いが故、他の諸侯からすれば警戒されるのは必至。

 恐らく、私たちの軍内にも少なくない間者が潜んでいる筈です。

 現状、他と比べて情報の拡散・漏洩が早いと見て間違いないでしょう。

 だから、早々に決着をつけなければ間者から諸侯に徐州の実態を晒さない、間者を今逃がす訳にはいかない。


「でも雛里ちゃん。策うんぬんもそうだけど、この布陣でないと無風さんや呂布は抑えられないよ」

「大丈夫だよ朱里ちゃん。………私に考えがあるの」


 朱里ちゃんの目を力強く見つめる。


 朱里ちゃんなら分かってくれる。

 朱里ちゃんなら私の背中を押してくれる。

 朱里ちゃんなら………きっとこんな"策"でも味方してくれる。


 朱里ちゃんも私の目を見て一度だけ頷く。

 ありがとう。

 朱里ちゃんはわかってる。

 "普通"で考えるなら朱里ちゃんの策しかない。

 私もそれ以外方法はないと思ってる。

 今から言う策は常軌を逸した、戦争を舐めきった物。

 朱里ちゃんも、策自体は把握してないだろうけど危険を通り越した物であるという事は理解してると思う。

 それでも、いいよと……頷いてくれた。


 私は視線を正面に向ける。

 ご主人様・桃香様・愛紗さん・鈴々ちゃん・星さん・白蓮さん・そして文官武官の皆さんの目が私を見ている中、異常な策を口にした。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「雛里よ、そんな策を我々が許すと思ってるのか!?」


 策を言い終えるなり、愛紗さんが反対してきた。

 分かっています。

 この策がどれだけ危険な物なのか。 


「雛里、それはさすがの俺でも無謀だと思う」


 ご主人様も苦い顔をしてこちらを見てくる。

 確かに死んでしまうかもしれない。

 可能性は捨てきれない。


「雛里ちゃん、"雛里ちゃんの部隊だけで無風さんに当たる"なんて………もしもの事があったら」


 朱里ちゃんは涙目になりながら必死に止めようとしてくれます。

 そこには先程までの軍師の姿はなく、一人の親友を思ってくれる友達の姿。

 とても嬉しいし、自分は幸せ者だとも思う。

 でも、事今回に関しては譲れない、私達が生き残る為にも。


「大丈夫だよ朱里ちゃん。ちゃんと考えはあるし、本当に危なかったら直ぐに後退するよ」

「でも……桃香様も雛里ちゃんに何か言って上げてください」


 朱里ちゃんはそれでも不安を拭いきれず、桃香様に私を止めて貰う様に言いました。


「え?うーん………じゃあ、一つ聞いてもいい?雛里ちゃん」

「はい……」

「絶対、大丈夫なんだよね?」

「絶対とは言い切れません。ですが、ほぼ絶対大丈夫です」

「そっか」


 それだけを聞くと桃香様は花が咲いた様な笑みを見せ


「じゃあ、それで行こっか!」

「「「「桃香(様)!?」」」」


 声を出さなかった人たちも「えっ!?」と言った驚きの表情をしています。

 それにイチ早く復帰した朱里ちゃんが皆を代表して桃香様に問いかけます。


「と、桃香様?本当によろしいんですか!?」

「うん。だって雛里ちゃんが大丈夫って言うんだから、私は雛里ちゃんを信じるよ。それにね……」


 一度話を区切り、呼吸を正してから再度口を開く。


「私は無風さんに返事をしなきゃいけないの」

「返事?」


 桃香様の言葉に私は疑問を持ち、問い返しました。


「うん。連合の時にね。無風さんに考える時間が必要だって言われたの。それで私なりに一生懸命考えて………出した答えを無風さんに伝えなきゃいけないんだ。私の思いを」

「それで、何を?」


 そう私が問いかけると、とても簡素な答えを返された。


「私は、私を貫く」


 声に出すと、とても簡単な一文。

 しかし、そこには桃香様の強い思いが含まれている事は明白だった。


「それを、伝えればいいんですね?」

「うん。雛里ちゃん、お願いしてもいいかな?」

「はい、桃香様の思い『も』しっかりと届けてみせます!」


 皆が心配する気持ちも分かる。 

 でも、それでも押し通さなければいけない。






 私があの人を好いているが為に。








 あの人の期待を裏切らない為に。



up主「皆様、どうもこんにちわこんばんわ」

華琳「死ね!」

up主「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ」

北郷「うわぁ、綺麗に四ノ字固めが決まった。痛そう」

無風「…………四ノ字固め………久々に聞いた」

北郷「そういやそうかもなー」

華琳「ふぅ、清々したわ」

北郷「お、おう」

華琳「読者の皆様、この度は投稿が大幅に遅れてしまい、誠にすみませんでした」

無風「…………華琳が主婦してる」

北郷「夫の不始末を謝る主婦そのものだ。流石はなんでも完璧を求める華琳だな」

華琳「そんな事ないわよ。流石に今回は時間掛け過ぎなのは投稿日時が明白に表しているわ」

北郷「いや、許してやれよ。リアル就職がかかってるんだから、コイツ」

華琳「何甘い事言ってるの?社会に出てそんな言い訳が通じる筈ないでしょ」

無風「…………正論……だな」

北郷「いや、そうだけどさ。ここでくらいはマイペースでも……」

華琳「私の夫にそんな物要らないわ♪」

北郷&無風(鬼や………)

up主「お、俺への心配は、ない………のか」ガクッ

華琳「それでは皆様、次回もよろしくお願いしますね」

北郷&無風(もはや別人だ………)

華琳「何か言ったかしら?北郷?」

北郷「なんでもございません!?」

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